秋も深まった頃、弟子はひとり庭を掃いていた。舞い散る紅葉が風に踊るように、静かに地面へと降り積もる。 そこへ師匠が現れ、湯気の立つ茶碗をふたつ、盆に載せて持ってきた。 「ひと息入れようか」 師匠が縁側に腰かけると、弟子も向かいに座った。茶の香りがあたたかく鼻をくすぐる。 「師匠。…世界って、どうしてこんなに苦しいんでしょうね。 人と人は、なぜわかり合えないんでしょうか」 弟子の目には、ほんの少しの疲れと、やるせなさがにじんでいた。 師匠は茶を一口すすると、庭の落ち葉に視線を落とした。 「お前さん、落ち葉がどうしてここにあるか、考えたことはあるか?」 「…風に吹かれて、枝から落ちたんでしょう」 …