ディックの普通小説。SF/ファンタジー的な現象はまったく起きない主流文学小説で、事実上の処女作というべき作品らしい。正直、あんまり好みじゃないかなと思いながら読み進めていた。なにより肩ひじ張った文章にうんざりしていたけど、だいたい40ページくらいで(わりとだけど)やめてくれて助かった。二章終盤から三章にかけて風景描写が地に足のついた感じになっている。うんざりしたけど、これまでのディックの小説で感じたことがない文章の巧さというのものを感じることができた。解説に書かれている通り、凝った訳文はディックの若書きの自信にうまく対応しているのだろう。凝った部分はかなり凝っているけど、砕けた表現はちゃんと砕…