『後宮からの誘拐』(Die Entführung aus dem Serail)
モーツァルト作曲のオペラ。K.384 1782年、ウィーンで初演。
ドイツ語タイトルの別訳に『後宮からの逃走』がある。
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A MINGLED CHIME 彩華に響くチャイム 33. AN UNEXPECTED LOSS 33.予期せぬ喪失 375 It was during the same summer that I received an invitation to attend a meeting in Birmingham summoned to consider the best way of forming a municipal orchestra. It was surprising that what had proved impossible in peace time should be r…
後に神聖ローマ帝国皇帝となり、さらにオーストリア大公、ハンガリー王、ボヘミア王としても君臨したヨーゼフ2世は、ローマ皇帝フランツ1世とマリア・テレジアの長男として1741年3月13日に生を享けました。 当時大きな潮流としてヨーロッパに浸透していた啓蒙思想を信奉するヨーゼフ2世は、1765年、フランツ1世が没して皇帝を戴冠すると、絶対的な権力を持つ啓蒙専制君主を目指しましたが、その急進的な改革は共同統治者として依然大きな存在であったマリア・テレジアとの間に軋轢を生じることとなります。 そのマリア・テレジアが1780年に亡くなり、自ら思うところの政治を行えるようになった彼は、農奴解放・信教の自由・…
モーツァルトは、27ものピアノ協奏曲を書いた一方、ヴァイオリン協奏曲はわずか5曲しか残していません。 そしてそれらは、207, 211, 216, 218, 219というケッヘル番号が示している通り、第1番のみが1773年に、残りは1775年に、一気呵成といった感じで書かれました。 つまり、この天才作曲家が少年から青年へと移行する時期に集中して生み出されたわけですが、それ以降、このジャンルの顧みられることはありませんでした。 不思議と言えば不思議です。 また、一連のヴァイオリン協奏曲の作曲動機も明らかでなく、故郷ザルツブルクの宮廷楽団に籍を置いていたヴァイオリン奏者アントニオ・ブルネッティのた…
たまたま観客として訪れた劇場で、オーケストラの誤りを指摘するモーツァルト。(1789年『後宮からの誘拐』ベルリン公演) 父と太守の宿怨 モーツァルトのオペラ『後宮からの誘拐』、あらすじと対訳の10回目です。 最3幕フィナーレ、これで最終回です。 逃走の途中で、番人のオスミンに見つかり、捕まったベルモンテとコンスタンツェ、ペドリロとブロンデの2組のカップル。 場は転換して太守セリムの部屋になりますが、通常の演出では、捕まった場所にセリムがやってきます。 『オスミン、何の騒ぎだ?』と質すセリムにオスミンは、裏切りです、と得意げに報告します。 『裏切りだと?』 『はい、あなたがお雇いになった建築家が…
アングル『トルコ風呂』(1862年, ルーブル美術館) 後宮? 大奥? ハーレム? モーツァルトのオペラ『後宮よりの誘拐』、あらすじと対訳の9回目です。 ここから最終幕の全3幕です。 いよいよ、ベルモンテとペドリロが、命を懸けて、太守セリムの後宮から、それぞれの恋人コンスタンツェとブロンデを密かに連れ出し、逃走を図ります。 このオペラのドイツ語の原題『Die Entführung aus dem Serail』はなかなかに訳が難しいのです。 ここでは、一番ポピュラーな邦題『後宮からの誘拐』をとっていますが、「後宮」も「誘拐」も訳としては異論のあるところです。 まず「後宮」ですが、これも古臭い言…
ついに再会を果たした恋人たち モーツァルトのオペラ『後宮よりの誘拐』、あらすじと対訳の8回目です。 全3幕のうち、今回が第2幕のフィナーレです。 見張り番のオスミンを、眠り薬入りワインでまんまと眠らせたペドリロ。 そこに主人のベルモンテがやってきます。 ほどなく、ブロンデがコンスタンツェを連れて現れます。 ついにコンスタンツェは、夢に見た彼氏に再会できたのです。 離れ離れになり、囚われの身になってから、涙にくれていたコンスタンツェ。 でもまた今、コンスタンツェの頬には涙が流れているのです。 そんな彼女に、ベルモンテはアリアを歌います。 これまでの彼の2曲は、会えない彼女に対する憧れの歌でしたが…
台本作者ゴットリープ・シュテファニー(弟)(1741-1800) 素敵な韻を踏んだアリア モーツァルトのオペラ『後宮よりの誘拐』、あらすじと対訳の7回目です。 第2幕も後半に入ってきます。 コンスタンツェと太守セリムの激しい応酬のあと、静けさを取り戻した部屋に、ブロンデがひとり戻ってきます。 『あら、コンスタンツェ様と太守はどこに行ったのかしら? もしかしてふたりは仲良くなってしまったの? いや、そんなはずはないわね、ベルモンテ様一筋のコンスタンツェ様だから…』などとつぶやいていると、そこに恋人ペドリロが、あたりを窺いながら忍び込んできます。 そしてブロンデに、ベルモンテが助けに来たこと、今夜…
太守セリムの後宮(ハーレム) 2曲連続、20分間歌い続ける! モーツァルトのオペラ『後宮よりの誘拐』、あらすじと対訳の6回目です。 いよいよ、このオペラのクライマックス、ハイライトの場面です。 主役コンスタンツェが、大きなアリアを、それも2つ続けて歌うのです。ほとんど20分もの間、独りで歌い続けることになります。 同一歌手のアリアが連続するのは極めて異例で、モーツァルトの作品にも他に例がありません。 当時のオペラは、いわば歌番組にストーリーがついているようなもので、歌手たちには均等に歌が割り振られました。 もちろん、人気に応じて回数は違いましたが、それぞれの歌手に固定ファンがいますので、不公平…
トルコ人たちの横恋慕 モーツァルトのオペラ『後宮よりの誘拐』、あらすじと対訳の5回目です。 ここから第2幕です。 部屋に、奴隷頭のオスミンと、コンスタンツェの侍女、ブロンデがいます。 ブロンテはベルモンテの召使ベドリロの恋人ですが、オスミンがモノにしようとしています。 いや、オスミンにしてみれば、そもそもブロンデは太守セリムが自分にくれたモノだと思っているのですが、気の強いブロンデは、当然のことながらなびきません。 このオペラでは、コンスタンツェとベルモンテ、ブロンデとペドリロのふたつのカップルが、それぞれトルコ人の横恋慕される、という構造なのです。 このふたつの三角関係がフーガのように進んで…
太守とコンスタンツェ登場! モーツアルトのオペラ『後宮よりの誘拐』、あらすじと対訳の4回目です。 ベルモンテがコンスタンツェとの再会を夢見て、ポーっとなっているのを、ペドリロはあわてて隠れさせます。 太守(パシャ)セリム一行が、舟遊びから帰ってきたのです。 豪華なトルコの衣装を着た親衛隊(イェニチェリ)が太守を護りながら、歌います。 合唱の前に行進曲があって、遠くから近づいてきて、親衛隊が整列してから太守を迎える合唱になるのですが、この行進曲は長い間行方不明で、近年になって発見されたのです。 この行進曲がない頃は、親衛隊と太守は数小節の間に舞台に登場、勢ぞろいしなくてはならず、演出家泣かせでし…