若しも生き延びてきた事を真顔で誇る人に出逢えば、多くの人はそれを滑稽であると感じない訳にはいかないでしょう。生き延びた事それだけなら、その影には他者を犠牲にした事実や全く本人の努力に拠らない偶然の幸運が在るかも知れないからです。人が何らかの事を誇るならば、それには裏付けとしてその当人の絶大な努力がなければ不当だと、普通の人なら思う筈だからです。その通り、人前に何事かを誇るならばそれが要ります。だから誇るに値する努力を自ら認める事が出来ないならば、抑々(そもそも)他者に対してそれを誇る事をしなければ良いのです。それならば、何も不徳ではありません。よくよく考えてみれば、その自分の払った絶大な努力と…