明治の初め、本格的に国を開いて間もないころの日本に、どやどや上がりこんで来た紅毛碧眼の異人ども。我が国固有の風景を好き放題に品評した彼らだが、こと建築に限っていうと、嘆声を放ったやつはほぼ居ない。 「なんだこの、薄っぺらな紙と板の小細工は」 大抵が悪口に終始した。 「マッチ一本投げ込むだけで、たちまち灰になるだろう」 そんなことを大声でがなり立てるのである。 人目を憚らず――というよりも、黄色人種を最初から人間と認めていない風だった。 ――相手にするな。 と、後世に棲むわれわれならば言うだろう。 どうせあんなのは一旗組だ、祖国に立つ瀬がないゆえに、遠く離れた異郷の地にて原住民をだまくら(・・・…