一番心掛けるのは、「松本市美術館でなければできないこと」をすることだと思います。
松本市美術館ホームページ 【ごあいさつ】
この美術館が設立されるまでに、長い経過がありました。その経過のなかで美術館建設を切望する人々のこころのなかにそれぞれの「理想の美術館像」ができていました。そのいわばこころのなかの美術館像はきっと今も生きているはずです。こうした「プレ・ヒストリー」の延長上にこの美術館があると思います。この美術館でなければできないこととは、この理想の美術館像と無縁ではないと思います。
理想像はあくまで理想像であってどんな展覧会をするか、どんな作品を収集するかなどは決まっていません。それを具体化することがこの美術館でなければできないことだと思います。すでに7年経ち、その具体化に向けて、歩みを始めております。その延長上で仕事をしたいと思います。
一方、現在この美術館で働いている学芸員、事務職員もそれぞれ自分の描く理想の美術館像があります。特に7年という実践の場を経て、この理想像はより具体化しているはずです。いわば「美術館の内なる理想像」もぜひ集約したいと思います。
現在美術館は冬の時代の真只中にあります。経済環境の悪化はもとより、美術館の入館者は減少し、また若者たちが美術館に来なくなっています。こうした状況のなかで、美術館を運営していくには、かつてのように大型外国展を連続してやるというようなことはもはや不可能です。
とはいえ、今でしかできないこともたくさんあるはずです。それをぜひ見つけ出し、館員の皆さんと協力し、やっていきたいと思います。このことも、この美術館でしかできないことに繋がると思います。
公立美術館のキャッチフレーズで一番多いのは「開かれた美術館」です。無論このことは当たり前のことですが、キャッチフレーズを掲げただけでは、何も始まりません。自分たちがやりたいことをはっきり公言し、説明責任を果たせば自分たちのやりたいことと、「開かれた美術館」とは矛盾しないと思います。
「プレ・ヒストリー」、「内なる理想像」、「ぜひやりたいこと」。この3つのキーワードを繋ぐことが私の仕事だと思っています。何卒よろしくお願いいたします。