五月の歌舞伎座は恒例の團菊祭。コロナでの中断こそあったが、歌舞伎座建て替え中も場所を大阪松竹に移して上演されていた程の大追善興行。加えて今月は亡き左團次の追善興行でもある。倅の男女蔵が二十年ぶりに『毛抜』の粂寺弾正を勤める。泉下の高島屋もさぞ喜んでいる事だろう。客席も、筆者が観劇した日は大入り満員の盛況。團菊祭に相応しい盛り上がりをみせていた。 幕開きは『鴛鴦襖恋睦』、通称「おしどり」。亡き大成駒六世歌右衛門が復活上演させた長唄と常磐津による二部構成の舞踊劇。筆者はリアルタイムでは無論知らないのだが、昭和二十九年に歌右衛門・十一世團十郎・二世松緑の組み合わせで復活上演された狂言。当時の歌舞伎界…