◆所見 いじめの性質やいじめを生む構造を提示するだけでなく、そうした閉鎖集団が社会の基礎部分に蔓延する状況を、中間集団全体主義社会として提示している。 学校や職場で生じる醜い状況をほぼ正確に分析しており、解決策も説得力のあるものである。 このような社会で育った人間が市民社会的な理念……自由、公平、公正、人権等を嫌悪・憎悪するようになったとしても不思議ではない。 *** 本書は、人間の普遍的現象としてのいじめを論じる。考察対象となるのは主に学校である。 1 「自分たちなり」の小社会 いじめは学校独特の秩序のなかで行われており、子供たちは非常に付和雷同的である。そこでは市民社会の秩序が後退し、学校…