「“さん”と呼びましょう」への違和感 今年の春から、大学で映画を教え始めた。これまでも単発のゲスト講師として大学で授業をしたことはあったものの、通年でひとクラスを受け持つのは初めてのことで、暖かくなり始める前から既に緊張していた。 おそらくいまの若い世代にとって、映画は決して身近な映像ではない。映画の通常料金はいまや2,000円にも達し、かたやYouTubeやTikTokはたいてい無料かつボタンひとつで再生できる。最初の授業でアンケートを取ってみたところ、日常的に映画を観る人はクラスの大多数を占めていたが、映画館で観る人となるとほんの数人のみであった。 そうした状況を鑑みて、授業の基本的な目標…