特に強く意図したわけではないものの、この全集は第1巻から順に、ほぼ日本近代文学史を辿る形でこれまで読み進めてきた。 その第8および9巻は島崎藤村集、これらも書棚に並んではいるのだけれど、収録作品がいずれもかなりの長編で、オーディオに現を抜かしがちな現状では気分的に少々取り組み難いことから、今般、これらを飛ばして第10巻・田山花袋集を繙いた。 今更言うまでもなく、田山花袋は島崎藤村と並んで我が国の自然主義文学を唱道した作家であるが、正直なところ、個人的には、この領域にはなかなか足を踏み入れる気にはならない。 これは決して食わず嫌いというわけではなく、モーパッサンなど海外作家の手になる作品を含め、…