草のにおいが濃いこの季節、 私は木陰でひっそりと身を丸めていた。 昼下がりの広い公園には、イベントが開催されているようで 数台のキッチンカーで賑わい、万国旗がたなびいている。 風と虫の気配、それから、ぽつんと離れて座る父と子の気配。 「あの旗、どこの国かわかる?」 白地に赤と青の模様の旗を指さしながら、父親が話しかける。 「え? 簡単だよ、韓国でしょ」 子どもはわずかに鼻を鳴らした。 少し得意げに、それでいてどこかつっけんどんに。 「すごいな~」 「こんなの常識だよ。ママと日本全国制覇したし、 次は世界を目指してるからね。 いろんな経験をするんだ!」 それっきり、父親は言葉を探すように、 ふっ…