続いて歌舞伎座第三部を観劇。大和屋が十年ぶりに富姫を演じるとあってか、超満員の入り。古希をとうに過ぎている大和屋だが、その人気と美貌に陰りは見られない。誰かが書いていたが、大和屋と同時代に生きていると云う喜びは、何ものにも代えがたいものだ。映画やドラマと違い、生の舞台は一期一会。時代が前でも後でも巡り合えないものなのだ。この幸福感が末永く続く様、祈るしかない思いだ。 幕開きは『舞鶴雪月花』。十七世勘三郎の求めに応じて作られた変化舞踊で、三役を一人の役者が踊り分けるのは、初演された昭和三十九年以来との事。十八世も歌舞伎座で三役を踊った経験はない様だ。今回は勘九郎が桜の精・松虫・雪達磨の三役を踊り…