「冤罪《えんざい》のために、 思いも寄らぬ国へ漂泊《さまよ》って来ていますことを、 前生に犯したどんな罪によってであるかと わからなく思っておりましたが、 今晩のお話で考え合わせますと、 深い因縁によってのことだったとはじめて気がつかれます。 なぜ明瞭にわかっておいでになったあなたが 早く言ってくださらなかったのでしょう。 京を出ました時から 私はもう無常の世が悲しくて、 信仰のこと以外には何も思わずに時を送っていましたが、 いつかそれが習慣になって、 若い男らしい望みも何もなくなっておりました。 今お話のようなお嬢さんのいられるということだけは聞いていましたが、 罪人にされている私を不吉にお…