はじめに 人類の活動において、欲望ほど普遍的かつ神秘的な存在が他にあろうか。その根源にある「好色」という情念は、時代や文化の相違を越えて、人間の精神に深く根付いている。我々は、しばしばその情熱に引き寄せられ、また時にはその奔放さに畏怖を覚えるのである。今回は、この「好色」の歴史的変遷を紐解き、文学という鏡に映し出された人間の欲望の姿を探求する所存である。 本稿の目的は、単なる定義の明確化にとどまらず、「好色」の概念が如何に変遷し、またその変遷が文学作品において如何に表現されているかを考察することである。特に、異なる時代背景を有する作家たちが、同一のテーマをどのように捉え、表現しているのかを見極…