🪻源氏は僧都の山荘に泊まる【源氏物語 63 第5帖 若紫7】 奥のほうの室にいる人たちも起きたままでいるのが 気配で知れていた。 静かにしようと気を配っているらしいが、 数珠《じゅず》が脇息《きょうそく》に触れて鳴る音などがして 女の起居《たちい》の衣摺《きぬず》れも ほのかになつかしい音に耳へ通ってくる。 貴族的なよい感じである。 源氏はすぐ隣の室でもあったから この座敷の奥に立ててある二つの屏風びょうぶの合わせ目を 少し引きあけて、 人を呼ぶために扇を鳴らした。 先方は意外に思ったらしいが、 無視しているように思わせたくないと思って、 一人の女が膝行《いざり》寄って来た。 襖子《からかみ》…