最近、親父とおふくろの背中がずいぶん小さくなった気がする。ふたりとも70代も後半にさしかかり、病院通いも日常の一部になった。だが、私の心の中では、ふたりは今も「偉大な存在」であり続けている。 親父は寡黙な男だった。無口で頑固で、家族サービスなんて言葉とは無縁。でも、日曜の朝はいつも決まって、錆びたスパナと格闘しながら、車をいじっていた。その背中を見て、私は「男は道具を使いこなすものだ」と自然と学んだ。口下手でも、行動で家族を守り抜く姿に、男の本質を見た気がした。 おふくろはその逆で、よくしゃべる人だった。食卓の味噌汁の具を通して、私の体調を察し、些細な変化にも敏感だった。怒ると怖かったが、怒ら…