「証券会社を扱った作品」の第三弾は、清水一行『小説兜町(しま)』(角川文庫、1983年)です。日本資本主義のメッカと称される株の町・兜町。そこで「最後の相場師」と言われつつも、「株屋から証券会社への近代化」の過程で、証券会社を追われていく山鹿悌司(日興証券営業部長の斎藤博司がモデル)の波瀾万丈の生涯と、株の持つ「妖しい魅力」が描かれています。城山三郎や山崎豊子とともに、「経済小説というジャンル」を作り上げた清水一行のデビュー作。経済小説を代表する古典的作品のひとつと言えるでしょう。 [おもしろさ] 時代の流れに抗しきれず、もがき苦しむ姿が 高度成長期の過程で、大きな変貌を遂げた証券界。それは、…