「万人に与える書、何びとにも与えぬ書」と、その副題に付いている。 この副題が、すでに読む者をその気にさせるのは、本文を読み進めるうちにより実感として体験することになる。この副題は、すでにニーチェが読者を選定、限定していることを意味し、その本文を読み進めるうちに「自分は選ばれた読者である」かのような錯覚を起こさせてくれるに、十分な威力を発揮している。 この副題は、「ツァラトゥストラ」という書物の、まるで全てを、この書物の在る意味を、体現していると思う。 読む人を、その気にさせる書物── アンドレ・ジッドの「地の糧」か「新しき糧」が、そのような本だった気もする。「カモメのジョナサン」、サリンジャー…