少し前のテレビ番組で、芸能人が小学校や中学校までの通学路を制服を着て歩きながら、当時を回想する、という企画があった。自分には馴染みのない通学路にもかかわらず、私はなぜかその企画が好きだった。当時、いじめられっ子だったOさんが、帰り道にいじめられながらも、帰宅すると笑顔を見せて、親に心配をかけないようにしていた、といったエピソードには、涙が出た。通学路から学校までの道のりは、同じ学校に通っていたみんなが、ほとんど同じ道を歩いたけれど、思い出は、それぞれに違う。 通学路と言えば、私には、悲しいことに母校が一つも存在しない。いや、厳密に言えば、実際に通った母校が物理的に存在しない、ということである。…