野田知佑さんの『日本の川を旅する』という文庫本が、私の本棚にはずっとある。初めて読んだのはもう何年前だったか、記憶もおぼろだ。でも気がつけば、何十回となくページをめくっていた。日常の隙間で、旅に出たいと思うたびにこの本を開き、川の音や風の匂いを想像した。長く読み続けるうちに、本は次第にくたびれていった。背表紙は折れ、ページの端は丸まり、やがて綴じ目がほどけてきた。何度かテープで補修し、だましだまし読んでいたが、ついに限界がきた。ページをめくるたびに、紙が悲鳴を上げているようだった。思い切って、新しい一冊を探すことにした。古書店も考えたが、手っ取り早くメルカリで購入。届いたその本は、まるで新しい…