歌舞伎座十一月夜の部、中幕の『鎌倉三代記』。長くなりそうだったので、この狂言のみ単独で感想を綴りたい。云う迄もなく丸本の名作である。芝翫の高綱、時蔵の義村、梅枝の時姫、高麗蔵のおくる、歌女之丞の阿波の局、梅花の讃岐の局、松江の六郎、東蔵の長門と云う配役。中で時蔵・梅枝・高麗蔵・東蔵が初役。他の人は兎も角、東蔵が長門を演じた事がなかったとは意外。齢傘寿を過ぎて初役に挑む東蔵は素晴らしい。しかしこれ程のベテランでも演じた事のない役があるものなのですな。 今の歌舞伎界の課題は、興行面では若い客層の開拓、そして伝統芸の継承と云う面では義太夫狂言が演じられる役者を増やす事であると思う。幸四郎は数年前から…