続いて南座顔見世夜の部の感想を綴りたい。入りは昼とほぼ同じ位で、盛況であった。先にも記したが、今回の顔見世は丸本と上方狂言がない。その意味では筆者的には多少物足りなさを感じさせる狂言立てではあるのだが、夜は満を持して松嶋屋が登場する事もあり、愛之助不在の穴は大きいものの、昼の部以上に楽しめた公演であった。 幕開きは『元禄忠臣蔵』から「仙石屋敷」。「仮名手本」と並ぶ真山青果作忠臣蔵物の傑作狂言である。『元禄忠臣蔵』と云えば、「小浜御殿綱豊卿」と「大石最後の一日」が断トツに有名で、この「仙石屋敷」は九年ぶりの上演の様だ。近年は殆ど松嶋屋が独占的に演じている場だ。配役はその松嶋屋の内蔵助、鴈治郎忠左…