ドラマや映画で、時々みるシーンを思い出した。困難に襲われた主人公が「なぜ生きなければならないの?」と問うた時、「人は幸せになるために生きるのよ」と相手が答える―。幸せになるために一生懸命生きる人を、誰も非難しないのではないか。特に戦争という国家規模の災難下、個人の力が無に感じられる時、自分とその半径20メートル以内(家族と+αの人もいるだろう)の人の幸せを第一優先して何が悪い。 アウシュビッツの収容所の所長夫妻は、収容所の隣に家を構え、広い庭には小さなプール、温室、菜園、自然豊かな郊外で戦争中とは思えないほど豊かな暮らしをしている。所長である夫は収容所で効率的に”荷物”を処理する方法を、業者に…