1970年代にデビューした井上陽水にとっての1990年代とは、一体どのようなものであったのだろうか。ヒット曲にもコンスタントに恵まれ、いわくがついたことで有名になったCMは今でも語り草であるし(あれは1980年代末の話だが)、世の中とそこに続く音楽業界の好況に乗って絶好調に回っていたのではないかと。1999年リリースの「GOLDEN BEST」は2枚組でありながらもダブルミリオンを記録しているほど。本作をリリースする頃にはいわゆる重鎮にもなり、リリースペースもその後落としはするものの、その内容は軽妙かつ骨太で充実したもの。1993年リリースのここではカラフルにひたすら明るく突き抜けている井上陽…