朧月夜との仲が発覚し、 追いつめられた光源氏は後見する東宮に累が及ばないよう、自ら須磨への退去を決意する。 左大臣家を始めとする親しい人々や藤壺に暇乞いをし、 東宮や女君たちには別れの文を送り、 一人残してゆく紫の上には領地や財産をすべて託した。 須磨へ発つ直前、桐壺帝の御陵に参拝したところ、 生前の父帝の幻がはっきり目の前に現れ、 源氏は悲しみを新たにする。 須磨の侘び住まいで、 源氏は都の人々と便りを交わしたり絵を描いたりしつつ、 淋しい日々を送る。 つれづれの物語に明石の君の噂を聞き、 また都から頭中将がはるばる訪ねてきて、一時の再会を喜び合った。 やがて三月上巳の日、 海辺で祓えを執り…