応挙寺 山門ピンチ 大木の根が影響

http://mytown.asahi.com/hyogo/news.php?k_id=29000001003090003

香美町香住区大乗寺(応挙寺)の山門が、隣にそびえる大きなクスノキの影響で傾いている。2月末に町の文化財に指定されたばかりだが、大雨や地震などで破損や倒壊の危険性も指摘されている。

 大乗寺は、円山応挙と弟子たちが描き、国の重要文化財に指定されている障壁画でも知られる。745(天平17)年の開山とされ、山門は19世紀中期に建てられたとみられる。端々まで細かく彫刻が施され、美しく雄大な構えを持つ町内随一の建築として町文化財に指定された。

 山門の傾きは、すぐ北側の境内に生えるクスノキ(町天然記念物)が原因。樹齢800年とも1200年とも言われ、高さ約30メートル、幹回り約6メートル。根が境内の地中に広がって地面を押し上げ、灯籠(とう・ろう)が傾くなどしているほか、山門の下などにも伸びている。

 2007年に、県内の文化財修復などを手がける神戸建築文化財研究所(加古川市)が調査したところ、山門の下に入り込んだ根が成長して山門ごと地面を押し上げ、山門の傾きは水平方向に最大3・8センチの差があった。柱も1メートルあたり最大で2・2センチの傾きがあり、山門につながる塀には亀裂も入ってきている。また、クスノキの幹と山門の屋根のすき間も狭まっており、山門を破損する恐れもあるという。

 同研究所を主宰する尾瀬耕司さん(40)は「柱の傾きは地震などの際に破損につながる恐れもあり、修理するべき時期にきている」と指摘する。

 同寺の山岨(やま・そば)真応副住職は「放っておくわけにもいかず、何か事が起こる前に対応を考えたい」。文化財に指定した町教委も「指定には保存を考えるという意味合いもある。大乗寺とともに対策を検討したい」としている。

大乗寺の山門など新たに3件 香美町指定文化財

http://www.nnn.co.jp/news/100304/20100304055.html

大乗寺の山門など新たに3件 香美町指定文化財
2010年03月04日 日本海新聞

 兵庫県香美町教育委員会は、大乗寺の客殿と庫裏、観音堂、山門(香住区森)、吉野神社の鋳造阿弥陀如来座像(同)、西迎寺の木造阿弥陀如来座像(同区下浜)の3件を新たに同町指定文化財に指定した。それぞれ製法や構造上の特異性を評価した。町指定文化財はこれで、66件となった。
香美町香住区森の大乗寺の山門
香美町香住区森の吉野神社の阿弥陀如来座像
香美町香住区下浜の西迎寺の木造阿弥陀如来座像

 大乗寺の山門は江戸時代の建築で、彫刻師、中井権次橘正次の彫刻が随所にちりばめられている。門としては珍しく細部まで造り込まれ、雄大な全体像と合わせ、当時の技巧を凝らした本格的な建築物となっている。

 西迎寺の木造阿弥陀如来座像は高さ85・6センチ、寄木造り。着衣の表現である衣紋が薄く、表情も穏やかで平安後期の典型的な作例と考えられる。2009年度の修復作業で使用木材の年代測定を実施した結果、平安時代後期に造られたことが分かった。

 吉野神社の鋳造阿弥陀如来座像は関西圏では珍しい鉄仏で、平安時代後期の作とみられる。高さは89・3センチで木製の台座と光背は江戸時代のもの。後世に取り換えられたとみられる銅製の頭部以外は鉄で鋳造されている。

 大乗寺と吉野神社のある同区森の岡崎吉晴区長(65)によると同神社の阿弥陀如来座像は昔、地区の入り口にあって疫病から村を守ったと伝えられているという。岡崎区長は「森から指定文化財が選ばれてうれしい。これからも地域で大事にしていきたい」と話していた。

吉本弘 思念

大乗寺のデジタル再生画について、一日だけの展覧会があるそうです。

吉本弘 思念 
  
2004−2009 亀居山大乗寺客殿障壁画及び襖絵のデジタル再製画第一期事業
  
仏間、孔雀の間、山水の間、郭子儀の間、デジタル再生画 制作 監修記録
  
2010年1月16日(土) 10:00-18:00 (一日のみの展覧会) オープニングレセプション: 1/16(土) 17:00-18:00
  
アキラ イケダ ギャラリー / 田浦
神奈川県横須賀市田浦港無番地 237-0071 Tel/Fax 046-861-1121


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無量寺

別の話題ですが、無量寺でもデジタル再製画が作られるそうです。どうなることでしょう。
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=235111&lindID=4

大日本印刷和歌山県・錦江山無量寺の「障壁画デジタル再製画」事業を実施

無量寺串本応挙芦雪館開館50周年記念事業
円山応挙長沢芦雪障壁画デジタル再製画」事業概要


 錦江山無量寺和歌山県串本にある臨済宗東福寺派の別格寺院です。別名“芦雪寺”ともよばれ、江戸中期を代表する画家円山応挙の二哲の一人、長沢芦雪の「虎図」をはじめ、応挙・芦雪の作品を多数所蔵する寺院として知られています。

 天明6年(1786)当時の住職、八世・文保愚海和尚が入寺後十数年の辛苦の末、宝永4年(1707)の大津波で流失した寺を現在地に再建しました。その際愚海和尚と修行時代より親交のあった円山応挙の縁で応挙と高弟芦雪の手による方丈障壁画が揮毫されました。応挙と芦雪の作品は、その後の自然災害、時には戦火の中を歴代の住職、地域の人々の努力によって220余年の永きに渡り、脈々と守られてきました。昭和36年当時の住職、十八世・湊素堂老師(建長寺建仁寺両派前管長)の発願、地域の全面的な協力を得て当時では非常に稀有な寺院境内の美術館「串本応挙芦雪館」を開館、平成2年には国・県・町の補助を得て収蔵庫を建設、国指定重要文化財として現在も手厚く保護されています。

 今般、無量寺では串本応挙芦雪館開館50周年(平成23年11月)記念事業の一環として、応挙・芦雪障壁画のデジタル再製画を方丈に収め、応挙・芦雪の意図した宗教的空間を蘇らせる事業を開始いたしました。先人の弛まぬ努力で守られ継承されてきた障壁画が、現在最高水準のデジタル再製画技術で再製され、荘厳な方丈の絵画空間として現代に蘇ります。

 事業費用は当事業にご賛同いただいた紀州にゆかりのある事業家、有限会社井内盛英堂 代表取締役井内英夫氏の寄進によるものです。監修は『奇想の系譜』で因襲の殻を打ち破った自由で斬新な発想の絵師、芦雪や若冲を前衛として評価を行った美術史家で、MIHO ミュージアム館長の辻惟雄先生(略歴・別紙)にお願いいたしました。障壁画制作は東京国立博物館・応挙館、銀閣寺、大徳寺・聚光院、“応挙寺”で著名な兵庫県香住の大乗寺など、国宝級のデジタル再製画制作の実績を数多く有し、最高レベルの技術を持つ大日本印刷株式会社に依頼いたしました。

 大日本印刷株式会社は約10年前から日本絵画の基礎研究、表現手法研究、画家の思想や絵画空間演出などの研究、環境条件の科学的調査、更に調査に基づく素材開発・評価を経て、最高レベルの再現性・耐久性を維持できるデジタル再製画技術を開発。さらには従来不可能とされてきた金箔上への印刷再現(特許取得技術)だけでなく、障壁画・屏風・掛軸さらに天井画・杉戸絵などの木材に直接再現を可能にする技術も開発されました。前出以外の著名寺院も数多く手掛けられており信頼と実績は随一です。

 本事業により無量寺再建当時の応挙・芦雪の意図した絵画空間を体感していただけるほか、様々な照明や角度での鑑賞、方丈での演奏会・茶会等、デジタル再製画ならではの新たな鑑賞方法も体験していただけます。また、本事業におけるもう一つの重要な意義は、デジタル再製画によって絵画空間を蘇らせただけでなく、原本の撮影データとデジタル再製画用データを精緻なデジタルデータとして劣化させることなく未来へ手渡すことです。
 「保存」と「公開」という相反する命題に翻弄され続ける文化財にとって、その両方を一歩も二歩も前進させるきっかけとなる事業と言えるでしょう。

※添付の関連資料【別紙1】を参照
 ・参考:無量寺について
 ・参考:長沢芦雪について
 ・参考:監修者略歴

※添付の関連資料【別紙2】を参照
 ・錦江山無量寺方丈障壁画デジタル再製画 技術説明概要

※添付の関連資料【別紙3】を参照
 ・無量寺方丈障壁画デジタル再製画制作の作業工程

大乗寺の障壁画に関するブログ

大乗寺の複製障壁画について批判している文章が出ました。
これは、「アーツ・カレンダー」の読者であるWadaさんによる文章だそうです。
大乗寺-応挙の空間」
http://www.arts-calendar.co.jp/WADA/09/okyo.html
  
また、田中武さんという方のブログでも批判する記事が書かれていました。
http://geocities.yahoo.co.jp/gl/iririn2004/view/20090603/1243965149
こちらはデジタル再製画と原画を比較している興味深い画像があります。
http://www.geocities.jp/iririn2004/hikaku.html
  
田中さんは以下のサイトでもご紹介されています。
http://allabout.co.jp/interest/japanesepaint/closeup/CU20080402A/index.htm

新聞記事

大乗寺が紹介されている新聞記事が出ました。

印刷大手2強、「美」残す仕事 文化財保護に商機
朝日新聞8月5日
http://www.asahi.com/business/topics/economy/TKY200908050355.html

印刷大手2強が、文化財を保護するビジネスを拡大させている。先進的な印刷技術を使って、傷みやすい日本画をデジタル画像で再製したり、文化遺産の全容をデジタル映像に残したりするものだ。画像処理技術の進化に加え、文化財を災害から守ろうという機運が高まっていることが背景にある。

 兵庫県香美町大乗寺は3月、江戸時代の画家、円山応挙が描いた国指定重要文化財の「郭子儀(かくしぎ)図」など、客殿にある障壁画165面のうち64面をデジタル再製画に差し替えた。震災などに備え、原本を収蔵庫で保管するためだ。

 再製画を手がけたのは、印刷業界2強のひとつ、大日本印刷(DNP)。色の濃淡を工夫して、現物とそっくりに見せる美術作品集の印刷ノウハウを応用したのだ。

 たとえば和紙に描かれた絵なら、専門家に協力してもらい、和紙の白さや絵の色が最もよく保たれている部分を特定。そのうえで作品全体をスキャナーで読み取り、日に焼けたところが保存状態の良い部分と同じ色合いになるようコンピューター処理し、再製画を仕上げていく。

 再製画を印刷する素材の多様化も進んでいる。日本画は金箔(きんぱく)のほか、天井画や杉戸絵など木に描かれた作品も多く、そうした作品を保存したいという求めが多いからだ。

 DNPは、金箔に再製画を印刷できる特殊なインクや表面加工技術を実用化。くさりにくく紫外線があたっても色あせない板を素材メーカーと開発し、天井などに印刷しても長持ちするよう工夫した。再製画は通常の環境では、90年は退色しないという。

 DNPは99年に再製画ビジネスに参入。07年末までの受注は計12件にとどまっていたが、最近は寺院などからの注文が増え、08年に8件、今年も4件を請け負った。

 2年前に茶室の水墨画など計50面を再製画に差し替えた東京国立博物館の松嶋雅人特別展室長は、「少し離れれば専門家でも再製画と分からないほど精密」という。

 文化財をデジタル映像として保存する事業も、国内外に広がる。リード役は印刷業界首位を競う凸版印刷だ。

 同社の手法は、建造物などの全容を特殊なカメラで様々な角度から撮影。壁に描かれた絵などもスキャナーで読み取る。こうして集めた1万〜4万枚のデジタル画像をつないで映像化し、スクリーンを見ている人が実際に建物内にいるような臨場感を味わえるようにした。

 凸版印刷はこれまで江戸城金閣寺など、国内10の建造物・仏像のデジタル映像を制作。中国・故宮博物院から依頼を受け、世界遺産である紫禁城の内部を映像で残す共同事業も手がけている。08年度の問い合わせ件数は前年度の2倍の50件に達したという。

 映像はいろんな場所で公開でき、文化財の存在を広く知ってもらえる利点も大きい。凸版印刷は直営の印刷博物館(東京都文京区)など全国計5カ所で、映像を原則無料(入館料は必要)で公開中。今後も寺院や博物館などと連携し、映像の種類や上映場所を増やしていく方針だ。

■火災・地震…防災意識高まる

 文化財保護ビジネスが広がり始めた要因のひとつに、文化財の焼失が相次いでいることがあげられる。

 文化庁によると、国指定重要文化財(建造物)の火災は01〜06年度はゼロだったが、07年度は1件、08年度は旧住友家俣野別邸(横浜市)の全焼など3件も発生した。文化庁は今年4月、全国約1万1千件の重要文化財保有する寺院や博物館などに、防災体制の点検を求めている。

 また、政府の中央防災会議の試算では、近畿・中部圏で想定される内陸直下型地震が起きれば、関西を中心に580件の重要文化財が倒壊したり、延焼したりする危険があるという。

 こうした難を逃れるため、再製画をつくって原本を厳重に保存したり、建造物の公開期間を短縮してデジタル映像で紹介したりするケースが増えている。ただ、高度な印刷技術や綿密な調査が必要なため、大日本印刷のデジタル再製画は一面で数百万円かかるケースもある。凸版印刷のデジタル映像も数千万円程度と高額だ。文化財保護ビジネスの普及には、印刷業界のコストダウンが課題になる。(寺西和男)

新聞記事

大乗寺のことが書かれている新聞記事です。
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090627/biz0906271309012-n1.htm

(前略)
国内でも、江戸時代中期の画家である円山応挙のふすま絵で有名な大乗寺兵庫県香美町)が所蔵する文化財の画像データのライセンスを販売・貸出を行う「大乗寺イメージアーカイブ」を展開している。
  
 さらに円山応挙とその門弟12人の筆による壁画のデジタルアーカイブ化にも取り組んでいる。
  
 印刷技術とデジタル画像処理技術によって開発した金箔(きんぱく)上への特殊印刷と、独自に開発した超耐光性インキを組み合わせて複製を製作。壁画は収蔵庫に保管する一方で、実物と遜色のない複製品を一般公開した。
(後略)