2012-01-26 本を作る
本を作る
「クリフォードブラウンが好き」そういうと決まって聞き返された「じゃトランペットやってるの?」を思い出す。この、”趣味は音楽鑑賞”と双璧をなすのが”趣味は読書”であるが、「本が好き」と言って「じゃ書いてるの?」と言われる事はまずないだろう。ましてや「じゃ作ってるの?」と言われる事はない。
読書にまつわる誤解を私なりにここで一つ解いておこうと思うのだが、あなたは本を買うとき、1,700円のハードカバーの新宿鮫を買うとき、それはコンテンツを買っているのではなく、紙とそこに印刷されたインクのパターン、それらが綴じられた束、そして全体を覆うカバー、そういう物理的な本を買っているのだ。うそだと思ったらその横にある本を取ってみて、値段を見てみたらいい。1,900円?コンテンツはくだらない?そう、でも紙がいい。村上春樹の「象の消滅」のあの黄色い本と似た肌触りのいい紙だ。そうして見ると、本の物理的な量と質で値段が決まっている事に気がつくだろう。そう。あなたは「紙」を買っている。つまり読書とは、本との戯れなのだ。
まず読書をそのように再定義した上で考えてみると、明和電機の社長が「自分のブログを手作りで本にしてみた」の中で、次のようなことを言っていることがますますよくわかる。
持ってみると、さすがに一年分の記憶は重い!これはパソコンの画面では体験できない充実感ですな。紙の本の長所は、やっぱり情報を重さで体験できることです。そしてそれは安心とか、満足とか、自信とかを与えてくれる。単純なことだけど、大切なこと。
本棚に並べてみれば、こういう言葉がもれる。
できた本を本棚に並べてみた。なんたる充実感!!みなさんもお試しあれ!!
私も繰り返しましょう。”みなさんもお試しあれ”と。そしてひとたび経験したら、「じゃ作ってるの?」と、趣味は読書の方に聞き返す自分を発見するでしょう。
近い将来、地元のブロガー本と出会い、戯れることのできる場所が生まれることでしょう。かつてそこは、図書館、と呼ばれていた場所として。
2012-01-10 Kickstarterのイノベーション 
災害や不況、テロやデモなど何かと大変な2011年でしたが、そういう中で成長したものって何だったんでしょうか。
絆以外で。
これまでやってきたやり方が通用しなくなったり、災害によってダメージを受けると、再建が必要です。東北がそうだったと思うし、個人的には人生を再建してますし、そういう大変な時代になると再建の方法が成長します。
ニューヨークに拠点を持つKickstarterは、何かを再建したい、新しいプロジェクトを立ち上げたいという夢を手助けしてくれる会社ですが、なんと今日発表された2011年の統計によると、そこで産声を上げたプロジェクトやプロジェクトに集まった金額が、2010年の約3倍にもなったというじゃないですか!
*データの詳細はブログとコメントを参考
それではなぜKickstarterがそれほど支持されているのか、勝手にまとめてみたいと思います。
1. 何をしたいのかが分かりやすい
それぞれのプロジェクトのオーナーはプロジェクトの説明やプレゼンを用意しているのですが、なんと2011年は80%ものプロジェクトがビデオによる説明つきだったというんです。
ちなみに写真は2011年に最も速く目標を達成したプロジェクトで、何と24時間以内に目標の$75,000はおろか$165,910に達し、今日現在で30日以上を残して$500,000を超えてしまっています。
2. 何ができるかが分かりやすい(参加や支援、購入できるオプションがいっぱいある)
例えばこのプロジェクトは、もっともぎりぎりで目標を達成したそうなのですが、$1から$5,000まで以下のようなオプションを用意しています。
$1 - Facebookであなたのことをみんなに知らせる&もし実際に会う時には、抱きしめてありがとうと言います
$10 - Facebookで知らせるのに加えて、“I heart MyM”ステッカーを送ります
$25 - オフィシャルウェブサイトでサポーターとして名前を載せ、"Mosquita y Mari, Fuck the Rest! www.mosquitaymari.com."というメッセージ入りのコーヒーホルダーに、映画のオリジナルデジタル楽譜をプレゼント
$50 - 上記に加え、Behind the Scenes(たぶんビデオ)とサントラセレクション
$100 - 上記に加え、Aurora(監督)のこれまでの作品とこの映画のサイン入り台本
$250 - 上記に加え(たぶん)、サイン入りスペシャルポスター
$1000 - 監督がゲスト参加する上映権(たぶん非商用)
$2500 - 映画セットにまる一日ご招待 監督やクルーと話したり映画に飛び入り参加もあるかも
$5000 - "Associate Producer"として映画のクレジットに登場
Kickstarterのイノベーションは、ただ訴えたりお願いするだけだった寄付に近い資金調達を、具体的に価値のあるものと交換できるようにしたことじゃないでしょうか。できるようにしたとは言っても、実際に考えているのはプロジェクトメンバーたちなのですが、消費できる形にするという考え方、そこにとんでもないブレークスルーがあったと思います。
2011-12-29 北極星の終わり 
こちらで縦書きで読むことができます
The accidental universe:Science’s crisis of faith
の中で物理学者であり作家でもあるAlanは、ある大胆な主張をここでしている。
紀元前5世紀の哲学者デモクリトスに始まり、私たちは人間の周りで起こるあらゆる現象を、科学によって自然法則に基づく当然の結果(necessary consequences of the fundamental laws of nature)と説明してきた。または、あらゆる現象は何らかの法則によって説明可能であると信じてきた。
ところが、この北極星のように明らかで揺るぎのなかった目標が、いよいよ終わりを告げよう(This long and appealing trend may be coming to an end)としているというのだ。
それではどうなるのかというと、あのアインシュタインの言葉「神はサイコロを振らない」と真っ向から対立する、単なる「宇宙のサイコロ(a random throw of the cosmic dice)」でしかないという。
そしてこの考え方は、今年もっと広い範囲で見受けられた。
例えば3.11の大震災。「なぜ東京電力はしっかり対策をとってこなかったのか?」「福島原発は人災だった」「いつも後手に回る政府」これらは全て、原因と法則さえ考えておけば、全て対処可能だと言う前提で考えられた発言だ。だからできることをやっていない、つまり怠けていたということを言っている。
もう一つは欧州を中心とした国債不安による金融危機だ。高名な経済学者達の理論によって説明されてきた景気の変動、もっと言うと政府が景気を操作できるという考え方は、今回の金融危機では原因も分からなければ対策も分からないというとんでもない事態になり、最早信じろという人さえいなくなった感がある。
そしてどちらも、神の意志を探して動けなくなった人たちを尻目に、「宇宙のサイコロ」を受け入れ、何が出てもやれることをやろうと動き出す人たちの力で動き始めた。それは企業や個人のボランティアであり、資金調達については特にアメリカのKickstarterなどのクラウドファンディングがそうだ。
ここにあるのは、できないことは無理にやらない、できることやうまく行ったことをもっとうまく行くようにするという価値の転換である。
違う言い方をすると、百の文句や非難より、一つの協力ということかもしれない。
実はこの価値の転換は、私がシリコンバレーのベンチャー(startup)企業と一緒に働いていた時に教わったものだ。ゴールを設定し、できないことを一つでもできるようにするというような日本的価値観でいた私は、チームを鼓舞することもあるが、文句や非難によってマイナスの効果をもたらすことも少なくなかった。そしてひどかったのは、それがあるべき姿だと信じて(知らずに)いたことだった。
果たしてそんなことは単なる例のコップの話、「半分しか水が入っていないコップ」か「半分も水が入っているコップ」のように、話のための話に過ぎないのか?そもそも高いゴールや理想からスタートしないのは怠けているだけじゃないのか?などなど当時はいろいろ考えたものだった。
そしてそれから数年かかって、ようやくそれを克服できたとき分かったのは、非常に不確実な状況下では、うまく行ったこと(既成事実として理由は何であれ)にリソースを集中することが、あるべき姿(理想だけで何ら事実を踏まえていない)にリソースを集中するよりもはるかに効率が良いということだった。
それでは結果として出来上がるものが何になるか分からないじゃないか、とか、あきらめずに一つのことを追いかけるから物事は達成できるんだ、といった反論もあると思います。実際そうした反論はもっともで、あくまでもこれは「非常に不確実な状況下では」という前提つきです。
しかしながら、ひょっとすると、こうして従来の考え方が広く通用しなくなってきたということは、「非常に不確実な状況下では」というのが最早特殊な状況ではなく、日常として誰もが捉えて物事を考えるようにした方がいいのかもしれないということなんです。
それは、小田嶋隆氏が「ネットでものを書くということ」の中で言っている、”「分からない」というスタンス”がますます求められるようになるということであり、そうした従来の考えや物理的な制約(紙で印刷する場合)から見ると、随分だらだらしたしたように見える文章こそ、来年以降さらにウェブ上で活躍するのではないでしょうか。
さて、もう北極星が頼れないとしたら、あなたならどう進みますか?
写真はサイコロを使ったギャンブルから偶然に潜む確率を研究したと言われるイタリア人数学者、ジェロラモ・カルダーノ。
2011-12-27 #ヨミモノ 
英語メディアに限って言うと、日本では有料会員または実際の雑誌でないと読めないような非常に読み応えのある記事が、それこそ読み切れない程ウェブ上に公開されている。
村上春樹氏のコラムによく出てくるThe New Yorkerに始まり、150年以上の歴史を持つThe Atlantic、アメリカンスポーツのディープストーリーを届けるGrantland、世界中から選りすぐりのアドベンチャーを伝えてくれるOutsideなど、調査報道(例えばProPublica)や科学報道(Scientific AmericanやNewScientist)だけでなくその他あらゆるジャンルでそうした記事を発見することができる。
ただ全ての記事がそうした気合いの入った記事(採算度外視?フリーランスの意地?)なわけではないので、実際サイトから発見するのはそう簡単ではない。
しかし心配することなかれ。Twitterの検索で#longreadsと打ち込めば、一網打尽。ただしちょっとバリエーションがあって、sのない#longread、ほぼ同義の#longform、調査報道に特化した#muckreadsなどもある。
こうしたハッシュタグは自然発生的に人々が使い始めたわけではなく、#longreadsはLongreads、#longformはLongform.org、#muckreadsはProPublicaが仕掛け、運用している。
さて、こうして読み応えのある記事を発見するインフラは出来上がったのだが、もう一つ問題が。せっかくの記事、後でゆっくり読みたいんだけど・・・、とこうして自然にLongreadsやLongform.orgと連動して登場したのが後で読むサービスであるRead It LaterやInstapaper、Readabilityなどだ。記事を発見するインフラだけでなく、こうしたiPadなど読みやすいデバイスでゆっくり読める時に読めるようなツールも整っているのだ。
そもそもどうしてこれだけ無料で読み応えのある記事があるのか、ということについては、たぶん競争のせいもあるのだろうが、根本的に2つの精神が大きく関与していると思う。一つは民主主義を機能させるにはこうした調査報道が欠かせないという精神であり、もう一つは何かを相手に論理的に伝えるという科学報道の精神だ。
それじゃ我らが日本はどうかというと、確かにマスメディアを中心に表面的にはそれほど無いように見える。ただブログなどを含めて考えると、結構な記事が溢れているじゃないか!
ただこれを汲みやすくする#longreadsのようなインフラや、後で読むサービスのようなツールが無い。
そこで、地味にではありますが、まずは#longreadsのように、「お、これっていい記事だね」というのを集める日本語のインフラを作ろうと思います。#ヨミモノというハッシュタグを使ってヨミモノというサイトで運用します。
そうそう、ちょっと昔になりますが、日本文学地図というのを作ったことがありました。この時は手動でしたが、今度は自動で、記事から地名を取り出して地名&年代で記事が読めるようにしてみようと考えています。高松で高松の記事を読む。たぶんちょっとだけ面白く読めますよ。
2011-12-22 縦書きの力 
さて、これは誰の作品でしょうか?
答えは、今日2011年12月21日のほぼ日の今日のダーリン(抜粋)でした。
何か高村光太郎の詩のように、すっと心に染みて来たのは私だけでしょうか。
英数字の表示とかおかしなところがまだありますが、「あとヨミ」を日本語にあえて特化させて、ウェブ上の日本語の記事を縦書きで読めるようにする。なんかそれだけでもすれ違ってきたメッセージみたいなものがもっとずっと効率的にみんなに行き渡るようになるかもしれない。
こちらは完全版
ちなみにこちらのURLでアクセスすると毎日みることが出来ます(iPhone/iPad推奨)
http://yomimono.jp/yomo/meta?q=http://www.1101.com/home.html
*分かる人はq以下を自由に指定して遊べます(必要に応じて要エンコード)
例 10年という短期間で英語をマスターする方法(書評人より)
記事のURL: http://shohyoj.in/102
アクセスURL: http://yomimono.jp/yomo/meta?q=http://shohyoj.in/102








