「久しぶりだな。元気にしているか? 今度、一緒にメシでも食えないかと思ってさ」 「兄さん? 本当に久しぶりだね」 帰国中の弟に電話をした。彼は今、ブンデスリーガで活躍している。日本代表にも選出されている。ちょっとした有名人だった。 「弟がサッカー選手なんです」 店にちょくちょく来るお客さんにちょっと気になった女性がいて、ついそんなことを言ってしまった。言った後に少し後悔した。 「知っています。大ファンです。会わせてもらったりできますか?」 やっぱり言わなきゃ良かった。でも、そうでも言わなきゃ相手にしてもらえそうになかった。五年前から細々とスポーツ用品店を営んでいる。日本代表の弟に比べれば、ゴミ…