木走日記

場末の時事評論

米下院外交委員会歴史公聴会〜ロビー活動としては明らかに日本の敗北

●米国の日本専門家の間でも、明らかに靖国批判が広がっている〜朝日新聞社

 昨日(17日)の朝日新聞社説から・・・

靖国批判 米国からの問いかけ

 米下院の外交委員会が、日本の歴史問題で公聴会を開いた。テーマは小泉首相靖国参拝をきっかけに悪化した日本と中国、韓国との関係だ。

 ブッシュ政権は、歴史問題については「日本の国内問題」としてノーコメントを貫いてきた。一委員会とはいえ、米国の立法府で取り上げられるのは異例のことである。

 与党共和党のハイド外交委員長は、靖国神社戦争博物館遊就館」を取り上げた。「日本がアジア・太平洋の人々を西洋帝国主義のくびきから解放するために戦争を始めた、と若者に教えている。私が会った日本の占領を体験した人は、だれも日本軍を解放軍とみていない」

 民主党の幹部ラントス議員は、東条英機元首相らA級戦犯が合祀(ごうし)されている靖国神社の首相参拝を批判した。「戦犯に敬意を払うことはモラルの崩壊だ。日本のような偉大な国家にふさわしくない。この慣行はやめるべきだ」

 ハイド氏は太平洋戦争の従軍経験があり、ラントス氏はナチス・ドイツホロコーストの生き残りである。そうした体験もあってのことだろう。

 この主張が米国を代表する見方というわけではない。公聴会で「米国は介入すべきではない」と発言したグリーン前国家安全保障会議上級アジア部長のように、問題を日米関係に波及させないよう求める声もある。

 だが、ハイド氏らを一部の限られた存在と片づけるのは間違いだ。このような公聴会が開かれたこと自体、靖国をめぐる米国の空気の変化を物語っているのかもしれない。

 米国の日本専門家の間でも、明らかに靖国批判が広がっている。

 日中関係の冷え込みは米国のアジア戦略に好ましくない、という分析的な判断からだけではない。「自存自衛の戦争であり、侵略ではない」「東京裁判は認めない」といった主張が首相の靖国参拝で勢いづいたことに対し、あの戦争の当事者である米国に困惑と反発が生まれているのだ。問われているのは、やはり日本の歴史認識である。

 小泉首相靖国参拝を批判するのは中国と韓国だけだと言い続けてきたが、それは政府の公式発言に限っての話だ。首相の参拝を批判するシンガポールのゴー・チョクトン上級相(前首相)は「この件に関して日本は外交的に孤立している」と明言している。

 「内政干渉」と退けるのは筋違いだろう。彼らが問題にしているのは、彼らも戦い、あるいは巻き込まれた戦争についての歴史認識だからだ。

 日本は、戦前の軍国主義を否定し、米占領下で民主主義に生まれ変わった。そんな日米同盟の原点をなおざりにするのは看過できない。米議会の論議はそう問いかけているのではないか。

 「自由と民主主義」の連帯を次の政権も掲げるのなら、米国からの問いかけをきちんと受け止めるべきである。
http://www.asahi.com/paper/editorial20060917.html

 朝日社説は「この主張が米国を代表する見方というわけではない」としながらも、「米国の日本専門家の間でも、明らかに靖国批判が広がっている」と結論付け、「このような公聴会が開かれたこと自体、靖国をめぐる米国の空気の変化を物語っているのかもしれない」と示唆しています。

 米下院のたかだか11人で構成される一小委員会の法的な拘束力を有さない決議案の可決を持ってして「米国からの問いかけ」というこれがアメリカ政府の公式見解みたいな威圧的な問いかけの社説タイトルにしてしまうのは、いかがなものなのでしょうか。

 ・・・

 ふう。

 やれやれです。

 私は小泉首相靖国参拝凍結派ではありますが、この種の朝日社説の意図的我田引水論法には批判的です。



●しかし大半の議員からは、「同盟国である日本の過去を問題視するのは望ましくない」とする意見が多く出され、意外な展開となりました〜韓国MBSニュース

 たとえば韓国のMBSニュースの方がはるかに客観的に委員会の雰囲気を伝えております。

米下院国際関係委 日本の歴史公聴会で意外な展開

2006-09-15 15:12:09 Updated.

アメリカ下院国際関係委員会は、15日、日本の歴史問題を扱う公聴会を初めて開き、日本による過去の歴史わい曲や靖国神社参拝について議論しました。

この中で、民主党のラントス議員は、「永久戦犯を参拝する行為は、倫理的破産行為であり、ただちにやめなければならない」として、日本の首相の靖国神社参拝を厳しく批判しました。またハイド国際関係委員長は、「日本が国連安保理常任理事国入りを果たそうとするならば、歴史に対する真の反省がなければならない」と強調しました。

このように日本が過去に犯した行為について厳しく抗議した議員もいました。しかし大半の議員からは、「同盟国である日本の過去を問題視するのは望ましくない」とする意見が多く出され、意外な展開となりました。

http://world.kbs.co.kr/japanese/news/news_detail.htm?No=24605

 この韓国MBSの記事の結び「しかし大半の議員からは、「同盟国である日本の過去を問題視するのは望ましくない」とする意見が多く出され、意外な展開となりました。」は、以下のアメリカ下院国際関係委員会の公式サイトのテキストやビデオで容易に確認できます。

Committee on International Relations
U.S. House of Representatives
http://wwwc.house.gov/international_relations/fullhear.htm

 委員会で取り上げられた各氏のコメントやレポートはこんな感じ。

http://wwwc.house.gov/international_relations/109/hyde091406.pdf
http://wwwc.house.gov/international_relations/109/leach091406.pdf
http://wwwc.house.gov/international_relations/109/gre091406.pdf
http://wwwc.house.gov/international_relations/109/kot091406.pdf
http://wwwc.house.gov/international_relations/109/cam091406.pdf
http://wwwc.house.gov/international_relations/109/tat091406.pdf

 今回米下院の国際関係委員会で審議し可決された決議案は、日本による第2次世界大戦中の従軍慰安婦動員に関する決議案(下院第759号決議案)であります。

 同決議案は民主党のレイン・エバンズ議員が中心となって4月に提出したものでありまして、日本政府に以下の4点を求めているものです。

(1) Formally acknowledge and accept full responsibility of its sexual enslavement of those known as "comfort women.".
(2) Educate current and future generations about historical truth, including past crimes against humanity.
(3) Publicly, strongly, repeatedly refute that the comfort women tragedy did not happen.
(4) Follow Amnesty International and United Nations’ recommendations with respect to the comfort women tragedy.

(1)従軍慰安婦動員の事実と責任を認める
(2)従軍慰安婦問題が人権に反する問題であることを現在および次世代の日本国民に教育する
(3)慰安婦を否認するいかなる主張に対しても公に強く反論する
(4)国連やアムネスティ・インターナショナル慰安婦関連勧告を履行する

●左右両極に位置する人達の思惑が奇妙にも一致した今回の議決

 民主党のレイン・エバンズ議員といえば2001年、2005年と過去に2回同様な決議案を提出してきた民主党リベラル人権派に属する議員でありまして、ワシントン韓人連合会、ワシントン挺身隊問題対策委員会等の韓国系、中国系ロビー団体との関係が強い議員です。

 一方、国際関係委員会委員長のヘンリー・ハイド氏は、共和党右派に属する最保守派であり、筋金入りの国粋主義者であります。

 以前の当ブログのエントリーから・・・

■[メディア]アメリ国粋主義者の小数意見まで報道する朝日記事の問題点〜百家争鳴・玉石混合の米国内の靖国論は冷静に分析していこう

ヘンリー・ハイド米下院外交委院長、彼は典型的な保守愛国主義者であり、「第2次世界大戦当時、フィリピン海戦などに参戦した経験のあるベテラン議員」であり、かねがね敗戦国日本の首相が戦犯「トージョー」を参拝するのは我慢ならないと公言してきた人物です。

http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20060516

 つまり、アメリカの「正義」に絶対的な忠誠を示している偏狭な保守愛国主義者であるヘンリー・ハイド委員長の「敗戦国日本の首相が戦犯「トージョー」を参拝するのは我慢ならない」という想いと、バリバリの民主党リベラル人権派であり日本軍の従軍慰安婦問題を「人権に反する問題であることを現在および次世代の日本国民に教育する」ため国際問題化しようと長年画策してきたレイン・エバンズ議員の想いの、どちらかといえば米議会でも左右両極に位置する人達の思惑が奇妙にも一致したのが今回の議決の真相でありましょう。

 実際の公聴会では、朝日社説も触れている「米国は介入すべきではない」と発言したグリーン前国家安全保障会議上級アジア部長の常識的な意見に代表されるように、韓国MBSニュースが伝えたとおり「しかし大半の議員からは、「同盟国である日本の過去を問題視するのは望ましくない」とする意見が多く出され」ていたわけです。



●日本は次の大統領選までに日中韓の歴史問題をある程度解決すべき〜マイケル・グリーン氏の興味深い分析

 この公聴会で力強く日本を擁護しているグリーン前国家安全保障会議上級アジア部長ですが、今年5月にニューヨークの日本クラブでとても興味深い内容の講演しております。

 以前の当ブログエントリーから・・・

 13日の読売新聞から・・・

小泉・ブッシュ後の日米同盟、日中韓歴史認識がカギ

 【ニューヨーク=大塚隆一】米ブッシュ政権国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長を昨年末まで務めたマイケル・グリーン氏は12日、ニューヨークの日本クラブで講演し、小泉首相ブッシュ大統領が退任後の日米同盟について、楽観的な展望を示しながらも、中国、韓国との歴史認識問題が影を落とす恐れがあると警告した。

 日本語で講演したグリーン氏によると、日中韓の歴史問題については米国内でも意見が割れている。具体的には、<1>靖国参拝も支持する強硬な反中右派<2>日本に中国、韓国との関係改善を望みつつも、米国の介入は事態を複雑にするとして控えるブッシュ政権<3>基本的に親日だが、日本の役割が重要だからこそ米国が介入すべきだとする民主党右派<4>日本に批判的で、日米安保を強化すると米国もアジアで孤立すると主張する民主党左派やニューヨーク・タイムズ紙の論説委員会――などに分裂しているという。

 同氏は「日本は2008年の大統領選までにこの問題をある程度解決すべきだ。民主党政権ができたら、人にもよるが、正直に言って(日米関係への影響が)心配だ」と述べた。

 日米同盟の将来を総体として楽観している理由としては、日本で名前が挙がっている次期首相候補は反米でないこと、米国でも主流派の間では日米同盟の重要性について「超党派のコンセンサス」ができていることなどを挙げた。

(2006年5月13日11時20分 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20060513i204.htm

 この元米ブッシュ政権国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長であったマイケル・グリーン氏の意見ですが、きわめて妥当な分析であると評価できましょう。

 先の毎日記事の「米政界全体では「親中国派7割、親日本派3割」との見方もある」は数字の根拠に多少疑問がありましたが、少なくともマイケル・グリーン氏のこの米国世論の分析は的確であると考えます。

<1>靖国参拝も支持する強硬な反中右派

<2>日本に中国、韓国との関係改善を望みつつも、米国の介入は事態を複雑にするとして控えるブッシュ政権

<3>基本的に親日だが、日本の役割が重要だからこそ米国が介入すべきだとする民主党右派

<4>日本に批判的で、日米安保を強化すると米国もアジアで孤立すると主張する民主党左派やニューヨーク・タイムズ紙の論説委員

 この保守派米国人の分析は信頼してよろしいでしょう。

 氏はブッシュ政権下で日米同盟強化を推進してきたキーマンであり、ブッシュ政権の東アジア外交の政策立案に深く関わってきた人物です。

 (中略)

 このような軍事同盟重視の発想は、実は私の考えとは少し考えに隔たりがあるのですが、それはともかく、氏の指摘する心配事、「<3>基本的に親日だが、日本の役割が重要だからこそ米国が介入すべきだとする民主党右派」勢力や「<4>日本に批判的で、日米安保を強化すると米国もアジアで孤立すると主張する民主党左派やニューヨーク・タイムズ紙の論説委員会」勢力が米国政権として登場したときに、日本の「中国、韓国との歴史認識問題が影を落とす恐れがある」可能性は否定できないでしょう。



●米国保守派からのいつまでも靖国に執着していてよいのかという警告

 国際外交は「しなやかに、したたかに」が基本であると思っています。

 「しなやかに」国際世論が同調してくれるような、一貫性を持った信義と行動原理や主張を展開しつつ、あらゆる可能性を睨みながら「したたかに」多様な選択肢を担保しておくべきです。

 マイケル・グリーン氏の意見、「民主党政権ができたら、人にもよるが、正直に言って(日米関係への影響が)心配だ」という指摘に、ポスト小泉政権は真摯に対峙し外交施策を立案するときに参考にすべきでしょう。

 氏の警告、「日本は2008年の大統領選までにこの問題をある程度解決すべき」は傾聴に値するのではないでしょうか。

 私は、この米国保守派からの、日本政府はいつまでも靖国に執着していてよいのかという警告は、極めて重大なメッセージだと考えます。

 ブッシュ政権の次の政権が「基本的に親日だが、日本の役割が重要だからこそ米国が介入すべきだとする民主党右派」や「日本に批判的な民主党左派やニューヨーク・タイムズ紙の論説委員会」勢力である可能性は、無視してはいけないと思うのです。

 (後略)

■[政治]米国保守派からの警告〜「海洋国家」米国の対日政策は決して一枚岩ではない
 より抜粋
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20060515

 ・・・



●米下院外交委員会歴史公聴会〜ロビー活動としては明らかに日本の敗北

 今回の決議案可決で私たち日本人が留意しておかなければならない点は、まず米国の対日政策は決して一枚岩ではないということです。

 靖国参拝はけしからんという意見から中国より同盟国日本を重視すべきという意見まで多様なわけです。

 ただ朝日社説の論調には決して与するわけではありませんが、過去二回の民主党のレイン・エバンズ議員の同様な決議案が可決されなかったのにもかかわらず今回は可決された事実は、日本政府は重く受け止めるべきであると考えます。

 なぜなら今回の議決案可決は、ロビー活動としては明らかに日本の敗北だからです。

 あるいは、公聴会での常識的な日本擁護の意見を述べていたマイケル・グリーン氏ですら日本は「いつまでも靖国に執着していてよいのか」という想いを持っていること、これらの点も冷静に考慮するべきだと考えています。

 民主党リベラル人権派議員とワシントン韓人連合会やワシントン挺身隊問題対策委員会等は、今回も同席して記者会見するほどの親密な関係であるわけですが、ワシントン韓人連合会やワシントン挺身隊問題対策委員会は、米議会では韓国系、中国系ロビー団体として有名なわけです。

 ・・・

 別に米下院国際関係委員会だけではないですが、アメリカ議会が有力ロビイストや有力圧力団体による活動に大きく影響を受けてきたのは衆知の事実であります。

 過去二回の日本の責任を問う内容の米国下院決議案が上程すらできずに葬られたのは日本側ロビーの暗躍のせいだったとする、今年6月の韓国・中央日報記事から・・・

米下院慰安婦決議案、日本のロビーでまた廃棄の危機

韓国の従軍慰安婦に関して日本の責任を問う内容の米国下院決議案が日本のロビーによって上程すらできずに再び廃棄される危機に処している。

日本側は28日、小泉純一郎首相の米国訪問を控え、レーン・エバンス(民主)、クリストファー・スミス(共和)議員が両党下院議員38人の署名を集めて共同提出した従軍慰安婦決議案の審議および処理を沮止するため、行政部官吏と議員たちを相手にロビーをしているとエバンス議員とワシントン韓人連合会、ワシントン挺身隊問題対策委員会などが26日、主張した。

エバンス議員と韓人連合会はこの日、記者会見を開いて「従軍慰安婦問題を強力に責める決議案が4月に下院国際関係委に提出された後、日本外務省は大物ロビイストを動員して決議案処理を妨害している」とし「日本は小泉首相の訪米後、決議案を扱ってくれることを米国側に要請した」と述べた。

2001、2005年に続いて3回提出されたこの決議案は、日本政府に対して従軍慰安婦動員が反人権的犯罪行為であることを認めて、日本人にこの内容をまともに教育するように促す内容を記している。

今回の決議案の場合、下院国際関係委員会所属議員11人をはじめ、38人の議員が署名することによって国際関係委審議を省略し、本会議に上程されることができる要件を揃えたが、日本のロビーで上程自体が不透明な状態だ。

これによって韓人連合会などは決議案通過のために「連帯(Coalition)759」という非常対策機構(www.support759.org)を構成し、決議案処理の当為性を知らせる手紙を送る運動、署名運動などをすることにしている。

ワシントン=イ・サンイル特派員

2006.06.28 06:51:22
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=77239&servcode=200§code=200

 アメリカでは多くの企業および利益団体、そして各国政府は、自身の利益に沿った主張を広めるためにロビイストを雇っています。

 そしてそのロビー活動は、対象者(上院議員や下院議員)に直接接触して交渉するインサイド・ロビー活動(inside lobbying)と、ロビー活動の対象者に直接接触せず、世論を変化させることで政策を変更させようとするアウトサイド・ロビー活動 (outside lobbying) または草の根ロビー活動 (grassroots lobbying) と言われる手法に大別できます。

 日本は元議員などを利用してもっぱらインサイド・ロビー活動をしてまいりました。

 それに対して韓国・中国は、どちらかと言うとアウトサイド・ロビー活動、今回の例で言えば、ワシントン韓人連合会(韓国系)やワシントン挺身隊問題対策委員会(中国系)などは、ワシントンを始め全米各地で従軍慰安婦の写真展や署名活動を展開して参りました。

 敗訴はしましたがアメリカ法廷で元従軍慰安婦裁判を起こしたりしたのも、彼らのねばり強い草の根ロビー活動 (grassroots lobbying)の一端でありましょう。

 今回の委員会においては、日本が共和党の元院内総務である大物政客ボブ・マイケル氏などを頼って、旧態依然としたインサイド・ロビー活動(inside lobbying)だけに頼ってきたのに対して、韓国・中国はインサイド・ロビーのみならず広範なアウトサイド・ロビー活動 (outside lobbying)にも目を向けてきたことが功を奏したのかも知れません。

 そのような分析を裏付ける、昨日(17日)の韓国・中央日報記事から・・・

<取材日記>日本の‘ドルロビー’に勝つ方法

「この決議案は不正確な事実に基づいた、非建設的な内容で、安倍晋三をはじめとする日本の指導部は大きな衝撃を受けた」。

米下院国際関係委員会(委員長ヘンリー・ハイド)が13日、日本の従軍慰安婦動員を非難して反省・賠償を促す決議案(759号)を全会一致で通過させた直後、駐米日本大使館は委員会にこのように抗議した。 決議案は慰安婦問題に深い関心を抱いてきたレイン・エバンズ下院議員が01年から提出してきたものだ。 しかし日本側の働き掛けで何度も廃棄されてきた。 千辛万苦の末に決議案が通過したのは、エバンズ議員の執念と太平洋戦争参戦勇士であるハイド委員長の決断に後押しされたからだ。

しかし日本は決議案通過の意味を理解して反省するどころか、むしろ次期首相まで前面に押し出しながら抗議している。 まもなく発足する日本の新内閣も前任者らと同じく、過去の歴史の否認・歪曲へ向かうのは間違いないようだ。

さらに日本は米共和党の元院内総務である大物政客ボブ・マイケルを毎月6万ドル(5800万ウォン)支払ってロビイストとして雇用している。ボブ・マイケルの強大な影響力は6月にエバンズ議員が決議案を上程した際に表れた。 当時ボブ・マイケルは下院指導者らに対し「小泉純一郎日本首相が近くワシントンを訪問するだけに、時期的に不適切だ」と主張し、決議案上程の無期延期に成功した。 日本は今後もボブ・マイケルを前面に出しながら、決議案の本会議最終通過を極力阻止する公算が大きい。

韓国大使館の関係者は「日本は豊富な資金と長い間のロビー活動経験を武器に活用しているが、われわれの対米ロビー活動は非常に低い水準であり、この争いは難しい」とし、「決議案最終通過の可能性は半分程度にすぎない」と憂慮を表した。

ワシントン政界のある消息筋は「韓国系米国市民の支援が切実だ」と要請した。 11月の中間選挙を控えて、米下院議員らに「従軍慰安婦決議案通過に率先する議員を支持する考え」という手紙を送ればよい、ということだ。 資金力を前面に出した日本の「ドルロビー」が、米国の‘民草’になった200万人の韓国人の「草の根ロビー」に敗れることを期待してみる。

ワシントン=姜賛昊(カン・チャンホ)特派員

2006.09.17 18:08:00
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=79967&servcode=200§code=200

 「資金力を前面に出した日本の「ドルロビー」が、米国の‘民草’になった200万人の韓国人の「草の根ロビー」に敗れることを期待してみる」とは、なんとも強烈な記事の結び方なのですが、アメリカ在住韓国系住民を動員して日本のロビー活動に対抗しようというオピニオン記事なのであります。

 悩ましいのは、中国系・韓国系アメリカ人ほどには日系アメリカ人は概して保守的で政治活動が好きではありませんし、頭数でも圧倒されている点ですが、こと過去の戦争イメージに関する日本政府のアメリカにおけるロビー活動は、今回の敗北を重く受け止めて見直しをすべきなのではないでしょうか。

 これまでの無策を反省し、結果を得始めた中国・韓国の「草の根ロビー」に対抗策を講じるべきです。

 有益な対抗策のひとつは国際舞台での日本の話題を、60年以上も前の負のイメージである従軍慰安婦問題や靖国問題から、現在の平和主義国家日本の良いイメージにシフトするよう努めることだと思います。

 マイケル・グリーン氏が警告するように、日本は、中国や韓国の戦略を無策に放置し「いつまでも靖国に執着していてよい」はずはありません。

 ・・・

 アメリカも国連も最後には戦勝国の論理が顔を出してくることを、日本政府は忘れてはいけないでしょう。



(木走まさみず)