バーチャル歌手の歴史

バーチャル歌手の歴史

 

最近のバーチャルブームに伴い、多くの人々が「バーチャル歌手」や「バーチャルアイドル」、「バーチャルバンド」などの歴史を書いてきた。しかし私に言わせれば、彼らには2つの共通の欠点がある。

1.彼らの視点は日本国内か、西洋(主にアメリカ)からの視点に偏り、両方を統合したものがない。

2.多くがただの列挙に留まり、「バーチャル」という現象に対する考察に乏しい。

私の論考はこの2つの欠点の克服を目指すものである。

 

1.「バーチャル」とは何か?

バーチャル歌手の歴史を語るに当たり、まずは「バーチャル」という言葉の解釈から始めたい。

 

「バーチャル」とは「似て非なるもの」、ひいては「本物のように見えるが異なる」ことを示す語である。ここでの「本物」は「常態」と言い換えてもいいかもしれない。

ならば、バーチャル歌手のどこが常態ではないのだろうか?私の思うに、彼らと身体との関係がそうである。

従来の歌手の属性は全て一つの身体に由来するものだが、バーチャル歌手はそうではない。初音ミクを例に取れば、彼女の声は声優の藤田咲の声を元に合成したものだが、外見はそうではない。コンサートでの動作は別のダンサーの動きをキャプチャしたものであり、藤田本人の動きではない。ギリシャ神話の怪物キメラが獅子の頭や羊の体や蛇の尾といった別々の動物に由来する部分を持つように、初音ミクも別人に由来する部分を併せ持つ。

 

私が考えるバーチャル歌手の定義は以下のようなものである

:新技術を用い、身体から分離された属性(声、見た目、性格、動作、経歴など)やゼロから合成された属性を用いて、新たに一つのキャラクターを作り上げ、音楽産業の歌手の慣例と同等に取り扱われたもの。

 

2.アニメ歌手の誕生とバーチャル歌手の原型

20世紀初頭、録音という新たな技術は身体から声を分離することを実現した。即ち、録音以前であれば声を聞けばすぐそばにその歌手の身体があることを意味したが、録音以降では必ずしもそうではなくなった。

しかし当時は「バーチャル歌手」の可能性に思い至る者はおらず、代わりにレコードにはわざわざその歌声の主の写真を貼り付け−−つまりとある一つの身体の2つの属性(声と外見)を提示し−−、元となる身体と属性をできる限り一致させることで、元の身体を想起させようとした。

 

しかしアニメは異なっていた。アニメキャラクターの視覚的要素は当時の新技術であるアニメ技術により合成されたものであり、元となる身体はもともと存在していない。彼らの声は人間によって当てられ、もともと関係がない聴覚と視覚要素を組み合わせることで、観客に架空のキャラクターからそれらの属性が来ていると錯覚させた。アニメキャラクターの声と視覚的要素の出処は常に異なるため、アニメは1で挙げた「バーチャル歌手」の特徴と一致する。

 

世界初のトーキーアニメ映画『蒸気船ウィリー』は一種の音楽映画であり、その中でミッキーマウスは周りの物を使って音楽を奏でる。つまりミッキーマウスは世界初のバーチャル・ミュージシャンなのかもしれない。(惜しいことに彼はこの映画では歌を歌っていなかったがために、世界初のバーチャル歌手にはなれなかった)

 

録音技術は同時にレコード産業を育んだが、この産業がバーチャル歌手の可能性に気づくのは20世紀も後半に入った頃であった。

1958年、アメリカの歌手Ross Bagdasarianが加工した自分の声で作ったレコード『The Chipmunk Song』が大ヒットとなったが、このレコードの歌手の名義は架空の栗鼠のキャラクターAlvin and Chipmunksだった。1960年にはこの栗鼠のキャラクターを主人公としたテレビアニメシリーズThe Alvin Showが始まった。

私が知る限り、この栗鼠たちが最初にレコード産業で成功したバーチャル歌手である。

 

では彼らはなぜバーチャル歌手の元祖となれたのだろうか?

『The Chipmunk Song』では加工された声が用いられ、Bagdasarianでさえ歌うことはできなかった。つまりこの歌の歌声と身体は予め分離していた。

また聴覚の印象上、この声は奇異な感じを与え、「人」が歌っているようには聞こえなかった。だから彼は人ではなく、リスのキャラクターを採用せざるを得なかった。

この「人らしくない奇異な声に、人らしくないキャラクターを当てはめる」という考えは後の初音ミクを予見しているようでもある......

 

Alvin and Chipmunks後のアメリカではその後、アニメ作中の歌手という形でのバーチャル歌手の系譜が続いていく。

その中にはThe Archies(1968年)のような、かつてThe Monkeesのプロデューサーを務めたDon Kirshnerが企画し、一流スタジオミュージシャンが参加した本格的な作品もあった。

Alvin and Chipmunksとは異なり、The Archiesは加工していない普通の声をしており、設定上も普通の人間である。これは、アメリカ人の視聴者が「歌うアニメキャラ」に慣れ、もはやノベルティ的な設定を必要としなくなったからである。

なお、現在日本ではアイドルアニメが流行しているが、その走りとも言えるかもしれない。

 

一方で海の向こうの日本ではどうだろうか?

日本アニメでのキャラクターの挿入歌の歌唱はアメリカと同様、60年代から確認される。しかしレコードの商業的な成功は意外と遅く、1982年の『超時空要塞マクロス』の登場キャラクター、リン・ミンメイからである。

その後、音楽を題材としたアニメでのCD売上を狙ったメディアミックス戦略は定式化するが、一方で音楽を題材しないアニメでさえも「キャラソン」と呼ばれるキャラクター名義での楽曲を出すようになった。

1989年の『らんま½』がその嚆矢である。これは日本でも「アニメのキャラクターが歌う」という形式に視聴者が慣れ、もはや作中で歌うことさえも必要としなくなっていた事の現れである。

 

一方西洋でも、キャラクターのアニメシリーズ内容からの離脱が別の形で起こって来た。イギリスのロック歌手Damon Albarnが漫画家Jamie Hewlettとともに創造したバーチャル・バンドGorillaz(1998-)がその例である。

このバンドではバンドメンバーがアニメキャラの形で表現されるが、しかし過去のThe Archiesなどとは異なり、このバンドにはその物語を直接語るアニメ番組は存在しない。

代わりにファンはMV、雑誌やテレビでのキャラクター名義のインタビュー、ホームページ、「自伝本」などで断片的に語られる情報から物語を自分で構築するのである。

 

Gorillaz創造のきっかけについて、HewlettはMTVでの歌手たちに「実質的なものが何もなく(there's nothing of substance there.)」「余りに人工的である(it just felt so manufactured.)」と不満を感じたことだったと、インタビューで述べている。これを私流に翻訳すると次のようになる。

本来なら、視聴者がメディアからの断片的情報を総合して想像されるべきなのは現実の歌手その人である。しかし、現状では現実とはかけ離れた像へと誘導している。

ならば架空の人物についてメディアからの断片的な情報を発信して、その人物について同様に想像させることも可能であるのではないだろうか?

 

これが彼らがフィクションではなく「バーチャル」である理由であり、マルチメディアコンテンツの巡礼により想像構築される存在なのだ。

 

3.コンピューターとバーチャル歌手

1990年代はコンピュータ技術が発達した時代だったが、同時に今と比べれば未熟である時代でもあった。

よってこの時代にはコンピュータ技術が新たなバーチャルの形を可能とする一方で、技術的限界により挫折することも多かった。

 

例えば1994年の恋愛ゲーム『ときめきメモリアル』での、キャラクターとの擬似的交流はヒロイン藤崎詩織への熱狂的人気を生み出し、藤崎名義でのCDやラジオ出演も出されることとなった。バーチャルキャラクターとの交流が多くの人間に体験されたことは、コンピュータの普及が可能にしたことである。テレビなどの伝統メディアは一方向の情報伝達しかできないので、視聴者は情報を受け取るしかなかった。しかしパソコン(ゲーム機も含む)のインタラクティブ性は、ユーザーはキャラクターとの交流への参加を可能にし、個別の交流体験を実現した。

 

一方で1996年にホリプロが売り出した3DCGのバーチャルアイドル伊達杏子は、当時の技術ではコストが掛かりすぎることもあって短期間の活動に終わった。

2で言及したGorillazの立役者Albranも3DCGを使ったライブをテレビで行ったこともあるが、一方で「納得いくクオリティにない」として以降ツアーでは3DCGのキャラクターは使用していない。

このように当時は質とコストの面の課題が大きかった。

 

2007年の初音ミクの成功は家庭用コンピュータが高性能化して、音声合成をもこなせるようになったことも挙げられる。

藤崎詩織が不可能だったライブやテレビ出演も3DCGを利用して幾度と行っている。(ただしライブの利益は高くなく、宣伝目的も大きいとされる)

第二に彼女にもインタラクティブ性がある。彼女の本体は作曲ソフトであり、ユーザーは自ら彼女のキャラクター創造に関われる。私の思うに、初期のファンの間ではこうした「自分たちのアイドルを自分たちで作る」という考えが強く、例えばファンたちは自身でキャラクターを象徴するアイテム(「持ち物」)を決めていた。

第三に彼女のイメージは個別化できる。ネット上では彼女を題材にしたイラストレーションや彼女の声を使った歌など多種多様な作品が溢れているので、ファンはバイキング形式のレストランのように、自分の好みに応じて作品を選び出し、彼女を想像することができる。

こうした「断片化した情報から、ファンが自分の想像で歌手のイメージを作る」という形式は、一見するとGorillazに似ている。しかしGorillazが公式情報を主とし、発信される情報量が比較的限られているため、想像されるイメージも比較的単一である。一方、初音ミクはファン創作を主として、発信される情報量は莫大で、しかも相互に矛盾するものもあるため、ファンの中のイメージは比較的多様である。

 

初音ミクには「人格がないので、人間的な交流が不可能」という欠点がある。そしてファンの人格への要求は消滅したのではない。3DCGキャラクターをアバターとして用いたVチューバーの流行は直接はモーションキャプチャの廉価化がもたらしたものだが、「中の人」と呼ばれる演者らの当意即妙の受け答えの面白さや人格の魅力が人気を呼んでいる。

 

4.これからのバーチャル歌手

これからのバーチャル歌手には、1.AIによる人格の合成、2.ロボットという身体の2つの進化が考えられる。

3.のVチューバーの流行が示した通り、視聴者のリアルタイムで応答できる人格への要求は根強く存在する。もし人格が合成できれば、バーチャルアイドルの最後の1ピースが埋まることとなる。

そして今までメディア上に点在し、ファンの脳内で合成されるしかなかったバーチャル歌手の存在は、ロボットという身体を手に入れ再統合された時、従来の歌手と同等となる。

 

5.まとめ

新技術が身体から遊離した属性情報を作り出し、それら断片的情報を統合提示することで、人々に人物を想像させあたかも何らかの人物が存在するかのような錯覚を生み出す。これがバーチャルである。

 

技術的成約や、人々の新様式への慣れが、時代ごとに様々なバーチャルの在り方を作り上げた。

一つ新たな技術が生まれるたびに新たなバーチャルの様式が生まれ、それに模倣者が続くごとに観衆は少しずつ新様式に慣れていく。様式への慣れが進行するにつれて、元の様式から自由な作品も生み出されていく。

この繰り返しがバーチャル文化を豊かにしてきた。

 

6.反省

「なぜ歌手なのか?」という点に触れそこねた。

「バーチャル歌手は欠点がなく、プロデューサーがコントロールしやすい」という俗説を検討しそこねた。

初音ミクの考察が足りない。

 

参考资料:

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/キャラクターソング

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/バーチャルアイドル

https://en.m.wikipedia.org/wiki/Virtual_band

 

 

 

アラブ諸国における三国志受容:『大地の鷹』と『Dynasty worriers』

仰々しいタイトルがつているが、要は「海外の反応ブログ」的なことがやりたかっただけ。
昔書いた大学のレポートの再利用です。参考にした動画は権利者削除されていたため、リンクは無しですが、参考のためにアラビア語版主題歌の動画を挙げておきます。

『大地の鷹』主題歌
(関係ないけど、複数のコメントがこの曲を「ダーイシュ(イスラーム国)の歌のようだ」と評しているのが面白いです)

『征服者たち』主題歌

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アラブ諸国における三国志受容:『大地の鷹』と『Dynasty worriers』

中国や日本における三国志の派生作品は、ほとんどの視聴者が三国志の物語に親しんでいることが前提であり、キャラクターのアレンジもその前提でなされている。例えばほとんどの人間にとって「三国志は中国の史実を元にした物語である」ことは常識だが、「ゲームや漫画の衣装や設定は史実とわざとかけ離れたものにすることもある」ことも常識として知っている。しかし一旦作品が輸出されると、その前提のない地域、例えばアラブ諸国にも輸出されることになる。

本論に入る前に、まず「アニメ」という用語について、断って置かなければならない。アメリカで80年代中頃から、CartoonやAnimationと区別して、日本産アニメを指す言葉として「Anime」が広まった。現在日本語や中国語を除けば、アラビア語を含むほとんどの言語で英語発祥のこの種の使い分けがされている。アラビア語ではそれぞれcartoon=كرتون(音訳)、Animation=رسوم المتحركة(意訳:動く絵)、Anime=أتمي(音訳)となっている。本稿では分かりやすいように、cartoonをアニメ、animationはアニメーション、AnimeはAnimeと訳している。

  • 吹き替えによる「文化の翻訳」

アラブ諸国におけるアニメ事情について、2011年にアニメオタクのY君(カイロ在住、工学部、18歳)にインタビューした。彼によれば、アニメは子供が見るものとされており、教育効果を狙いアーンミーヤ(口語)*1ではなくフスハー(文語) で吹き替えられるのが普通という。またテレビで放送されるアニメの翻訳は原作とかけ離れているのが普通であり、編集もなされているという。例として彼は、ポケモンにおける「進化」の描写が反進化論的な反発を招いたため、アニメ『デジモン』が、進化論を避けるため、作中の「進化」の演出を「横から兄弟を呼ぶ」という演出に変えられていることを挙げた。
彼はネット上でアニメを見始めることにより、改変されていたことに気がついたという。
つまりアラブ諸国では、日本における背景からアニメ作品が切り離され、アラブ諸国における背景におかれることにより、吹き替えによる「文化の翻訳」が日常的に行われていることが分かる。

横山光輝 三国志』(1991年〜1992年、以下日本版と呼称)は横山光輝の漫画『三国志』を原作としたアニメであるが、シリアのアニメーションおよび子供向け番組のアラビア語吹き替え専門会社「مركز الزهرة」(Venus art for production)によって吹き替えが制作され、ヨルダンの子供向け番組専門衛星チャンネルSpacetoon(2000~)によって「大地の鷹」として放送がなされた(時期は不明)。またالفاتحون「征服者たち 」*2というバージョンも存在するが、筆者の能力の限界のため詳細は不明である。
衛星放送がアラブに登場したのは90年代後半であり、spacetoonも2000年に放送を開始している。チャンネル増加による番組受容の増加が日本アニメ輸出増加のきっかけとなったと推定される。

キャラクターデザインや大筋は、当然ながら日本版と同一であるが、音声面で大きな違いが存在する。
設定の違い:『大地の鷹』ではほとんどのキャラクターが親しみやすいようにアラビア語名とされている。[ar.wikipedia.org/wiki/صقور_الأرض:title=wikipedia]によれば、劉備はアブドゥッラフマーン、関羽はハムザ、張飛はヒクマトと改名されている。但し悪役である曹操はツーツーと中国語読みのツァオ・ツァオに近いアラブ人らしくない名前となっている。wikipediaはこの工夫を「アラブ人やイスラーム教徒の親しみはこのアブドゥッラフマーンやヒクマトやハムザといった名前の結果である。これらは我々のアラブ国家では有名な名前であり、これによりこのアニメはシリーズの多くの視聴者の心に近づいた。」と評している。

設定の違いは冒頭のナレーションにも現れている。日本版では、「時は西暦184年、中国の中平元年の春のことであった。」であるが、『大地の鷹』版のナレーションは「حدث هذه الحكاية في الربيع السن الأولى, من حكم أحد الأباطرته وسطこの話は、アジアの中央のとある皇帝の統治の初めの年の春におこった。 الآسيا 」内容面はほぼ一致しているものの、日本版では固有名詞を盛り込み史実性を強調する一方で、『大地の鷹』ではなじみのない固有名詞を排して、特定の場所と時間で起こった史実であるということをぼやかしている。

また多くの視聴者が登場人物を自分と同じイスラーム教徒であると勘違いしておいた。後ほどで述べるYoutube動画のコメントが「私と同じように、彼らがイスラーム教徒だと思っていましたか?」「ハハ、あの時ヒクマトがオマルで、アブドゥッラフマーンがアブー・バクル、ハムザがアリーだと思っていた (訳注:すべて四代カリフの名前)」「私は彼らがイスラーム教徒だと思っていました。なぜなら一人は髭をはやし、一人はアブドゥッラフマーンという名前だからです。」「イスラーム教徒だと思っていましたが、日本のサムライのように見えました。」のようにこれを裏付ける。
また中国の話であることを強調するコメントの「これは本当の話だよ。中国のモンゴルからの解放を話している。」「モンゴル人からの解放なんて無い。このアニメは中国の3つの王国についての本当にあった物語なんだ。」は、逆にこの話が中国の話としては知られていないことを裏付ける。

主題歌の違い:日本版の第一期主題歌『時の河』は軽快なロックであり、「果てしなく広がる宇宙の片隅に」と始まり、サビの「流れ流れていつか消え行くとしても 永遠に止まらない時の流れは続いている」は宇宙や歴史の雄大さとそれに比した個人の矮小さを表している。第二期主題歌『Don’t look back』も同じ作者による軽快なロック曲であり、サビの部分は「ふりむくな、ためらうな、 君だけの 信じる夢を 過ぎてゆく時代(とき)を越え 駆け抜ける光になれ DON'T LOOK BACK」と自分自身の夢を追いかけることを述べている。どちらの主題歌の主題は異なるが、大義を声高には述べていない。

一方『大地の鷹』主題歌は日本版と同様の映像を使用しているが、男性と子供の合唱による重々しいものである。歌詞は「母国の尊厳は、いつでも我々よりも、我々の心を巡るいかなる考えよりも尊い」「母国の尊厳は私の大地だ」とはじまり、「我々は団結した 忠節と戦いの上に 我々は自己犠牲の旗を明日掲げるだろう」「我々の魂は母国の犠牲 安い値段だ」と歌っている。この主題歌では「母国の尊厳」(شرف الوطن)が自己犠牲に値するほどもっとも尊いことを強調し、愛国心を呼び覚ます内容となっている。
このメッセージは、今は成人となったかつての子どもたちにも肯定的に受け入れられている。2009年にアップロードされたYoutubeの動画には11万再生数と1,722のコメントがついている。コメントでは「アラブ連合の国歌にふさわしい」や「一番いい一節。。我々の魂は母国の代償 安い代償(ذى البنفسج‎2 か月前)」「(前略)その意味が今まで分からなかったが、これが私を今の私にしたものであり、今私は何が善と悪でどうやって自分の土地のために代償を払うことができるか考えている。。。この種の曲をつくり、正しく考える目覚めた完全な世代をつくってくれてありがとう。(amr242742 2ヶ月前)」。また中国という枠を離れ、現実のアラブ情勢さえも結び付けられている。 「ああシリアよ、パレスチナよ。抑圧され、占領と略奪の下にある多くのイスラーム国家よ。この歌は全てのムスリムの胸を詰まらせる!例えこれが私達の子供の頃の歌としても私達は覚えている。この歌の意味は子供向けチャンネルのただの主題歌を超えている。(Noufa Ibrahim1 年前)」
『征服者たち』の主題歌は無伴奏の男性の独唱によるもので、女性の声や楽器を心をかき乱すとして禁じるイスラームの教えにのっとている。歌詞は「夜は我々はひざまずいて泣く諸界の主である神のために 昼は我らの心は示された征服に向かう 征服者たち 征服者たち」「神のため 尊い祖国のため 善良な罪なき民のため 我らの魂と血は いかなる時でも犠牲を払う」とあり、愛国心だけでなく信仰心も戦いの理由としてあげ、宗教的なアニメとなっている。アラブ諸国ではアニメのインターネット上の視聴やダウンロードが盛んであるが、このアニメは「イスラームアニメ」として他のアラブ製アニメや日本産アニメとともにあげられている。例えばウェブサイト『حمل لاطفالك أكبر مكتبة كرتون اسلامي』(あなたの子供のための最大のイスラーム・アニメ・ライブラリ) www.lakii.com/vb/a-31/a-222541では、「アニメの子供への影響は明らかです。このイスラームアニメのセットには、子供に良い性質を奨励するもの、子供に信仰や大義を説明するもの、子供に幼いころから神の道での精進(ジハード)を根付かせるものがあります。」
「大地の鷹」は劉備の「漢の復興」を愛国心と読み替え、それを強調する内容となっており、『征服者たち』は戦いをイスラーム的ジハードとしている。

もう一つアラブ世界で消費された日本産三国志コンテンツとして、コーエイの『三國無双』シリーズの英語版『dynasty warriors』が挙げられる。英語版ではキャラクターの名前は改竄されずliu weiなど中国名で翻訳された。私はシリアに旅行した折英語版『戦国BASARA』を見かけたことがあるので、アニメとは違いゲームでは英語版が消費されているらしい。
上記動画のコメントでは「アニメとゲームのどちらもがshu wu weiの3つの王国について語っている。」「Animeはdynasty warriorsというゲームについて語っている。(
MaD KiLLeR 3か月前)などが見られ、ゲーム版の知名度の高さを物語る。

アラビア語ウィキペディアで多くの三国志人物の出典となっているhttp://dynastywarriors.yoo7.com/(三王国の秘密)のフォーラムでは三国ごとにわかれた掲示板で「夏侯惇は暴虐なリーダーか?」「諸葛亮は賢いのに北への作戦が失敗した理由はなにか」「呉の建国に一番貢献したのは誰か?」などのマニアックな議論がかわされている。しかしこのサイトの名前からも分かるように、ゲームへの関心から三国志への関心が喚起されたサイトであり、下位のゲーム掲示板には更に下位の「三国志のゲーム」「Action& Adventure」「Action& Adventure」などが並び、ユーザーの関心がゲームにあることを伺わせる。
ユーザーネームVidicはフォーラム「صقور الأرض:"قصة الثلاث إمبرطورية العظيمة"」(大地の鷹:「3大帝国の物語」)
diwania.alazraq.com/showthread.php?t=245694
にてゲーム版三国志の画像を元に三国志を紹介している。「大地の鷹または征服者たちといったアニメを皆さんは見たと思う」と始まるこの紹介文では、dynasty worriorsをプレイし劉備関羽張飛の三人を見た時「見たことがある」と感じたのが三国志に興味を持った切っ掛けだという。彼は「この奇妙な衣装はアニメと違う」と感じたが、(おそらくインターネットで)「名前を調べた」結果同一人物であると知ったという。そして真の名前と実在の人物であることを知り、読者にそれを紹介している。以下簡単な歴史の紹介と、国ごとにゲームの画像と人物紹介を加えている。但し人物名や国名はすべてローマ字表記となっており、英語から情報を得たことを伺わせる。また彼は日中合作のアニメ「最強武将伝 三国演義」を
それに対する反応は「子供の頃見ていた。面白いことに実話だったと初めて知った」「子供の頃アニメを見ていた」「アニメは見ていなかったがゲームをしていた」「髭が長いのがハムザで短いのがヒクマトだと思い出した。」などサッカー好きのフォーラムでありながらゲームやアニメの知名度の高さを伺わせる。
『大地の鷹』は原作からかけ離れた内容だが、そのアニメを見たことのある人間がネット上で情報に触れることにより、三国志そのものへの関心につながることがわかった。

  • まとめ

『صقور الأرض』(大地の鷹)というタイトルで輸出された横山版三国志アニメは大幅にローカル化された結果、視聴者に親しまれた。しかし「三国志」という物語をベースにしていることは無視された。また中国という枠を離れ、愛国というメッセージが強調された。
一方ゲーム「三國無双」の英語版Dynasty Worriersのプレイを切っ掛けに、「大地の鷹」がそれと同一の物語を元にして居ることに気づき、三国志の物語の存在に気づくこととなった。
子供向けのアニメは大幅に「文化の吹き替え」がなされたが、ゲームは原作に比較的忠実だったためである。アニメとゲームの違いは、アラブ諸国ではアニメに「子どもの教育に資する内容に変える」という「吹き替えの文化」があったが、ゲームには「吹き替えの文化」そのものがなかったからである。
アニメそして人物名が言語に近いゲームを経由して英語のインターネットから得た情報により、ネット上のアラブ世界に三国志が紹介された。つまり三国志はアラブ世界からかけ離れた物語であるが、ローカル化やゲームやアニメなどの親しみやすいメディアによる原作の改編がアラブ人を三国志に近づける手助けをしている。
日本人が作成したアニメとゲームが期せずしてアラブ諸国に中国発の物語である三国志を紹介することが分かったとともに、吹き替えにより歴史的中国の物語がイスラーム教の架空の物語に読み替え、キャラクター像も変化することが可能であることもわかった。

  • おまけ

主題歌の動画についていたコメントをlang8上で以前翻訳したもの。元動画はすでに削除済み。
أغنية صقور الأرض سبيستون✿Dynasty warriors (Arabic…: http://youtu.be/_ixqw8oupN0

1992年生まれ。子供の頃の思い出。

誰か私みたいに、彼らが全員ムスリムだと思っていた?

これは中国で紀元前に3つの王国が戦いあった物語(three kingdams)で、ゲーム(dynasty worriers)にもなっている

今まで見た中で一番いいアニメ、ワンピースやコナンやナルトよりもいい.....

教えて欲しいんだが、アニメの中のアブドゥッラフマーンやハムザの本当の名前は何?

ハハ、あの時の私はヒクマトがオマルで、アブドゥッラフマーンがアブー・バクルで、ハムザがアリーだと思っていた。(注:すべて四大カリフの名前)

これを見ていた時は10歳だった。私達は愛情や寛容や献身をまなんだ。1988年生まれの私にとっては、子供の頃の美しい思い出だ。

真似するために、あなたは何本の剣を買った?

今のアニメと昔のアニメじゃ、比較すら不可能。

子供の頃に戻れたら:(

スポンジボブ世代には理解不能なアニメ。

ヒクマト、はははXD。名前も覚えている。アブドゥッラフマーンの穏やかさ、ハムザの短気さ、一番は彼らの愛国心だ。

この歌はアニメの曲に相応しくない。アラブ連合国の国歌に相応しい。

ハハ、あなた達は彼らをムスリムだと思っていたんだ。でも軍隊でこの曲が流れたら、我々の軍隊の見方は変わるだろう。

ヒクマト(顔に傷がある)とブルハーン(長い卑下で、戦争の作戦を建てる)

私は以前彼らと一緒に歌い、一緒に泣いた。

私は彼らをムスリムだと思っていた。なぜなら一人は長いヒゲで、一人はアブドゥッラフマーンといったからだ。

そうだよ、アラビア語版では彼らの名前はハムザとアブドゥッラフマーンっていうんだ。

『大地の鷹』は永遠に私の愛するアニメ、私の心のなかの愛は揺るがない。

私は子供の頃は大きくなりたかったけど、今は逆に子供の頃に戻ってアニメを追いかけたい。

彼らをムスリムだと思っていたけど、サムライつまり日本人みたいだった。

これは現実の物語だ。中国のモンゴル帝国からの解放を話している。

中国のモンゴルからの解放じゃない。このアニメは本当の実際に起きた物語で、中国の3つの王国についてだ。

私はdynasty worriersをプレイします、9歳からの大ファンです。リアルではdynasty worriersをプレイしている人が見つかりませんが、ネット上では見つかりました。

日本人に対して最大の敬意を、彼らがいなくては我々の子供時代はどうなっていただろう。....space toon衛星放送に対して感謝を、翻訳を作ってくれた。

古いアニメだが子供に対してだけでなく大人にも、ユダヤ主義の意味や、自尊の価値、希望の魂や力、協力などの教育的意味がある。でも新しいアニメは全体的に道徳に欠ける。

昔を思い出す。。。あの時のバグダードはまだ平和だった。

*1:アラビア語には、コーランを元にしたフスハー(正則語/古語/文語/共通語)と、各地方のアーンミーヤ(卑語/現代語/口語/方言)の2種類が存在する。アーンミーヤ母語であり日常会話に使われ、フスハーはアラブ共通の言語として改まった場面で用いる。古語であり母語ではないフスハーはアラブ人にとっても習得が難しいものである。

*2:アラビア語ではفتحという言葉をイスラーム教徒による征服に主に用いる。

動物に名前をつけて育ててから、殺して食べて「命の大切さを学ぶ授業について」

なんか話題になってたみたいなので、「動物に名前をつけて育ててから、殺して食べて『命の大切さ』を学ぶ授業」について語ってみたいと思います。

・「命の大切さ」とは何か
「命の大切さ」は主に人間を対象にしているので、ここでは人間の命の大切さに限定します。「命の大切さ」を説く目的は自殺や殺人の防止にあるからです。

価値の証明法は色々ありますが、その中に有用性(例えば「この車は時速300キロで走れる」)と稀少性(「このモデルの車は限定生産だ」)があります。
有用性で命の価値を測ると、利用価値がない場合は命に価値はない(生きていても仕方がない)ということになります。
「どんな命もどんな場合でも平等に尊い」という言説は、稀少性を基礎としています。

稀少性は以下のように細分化できます。
1.固有性
大抵の人間は固有名を持ち、他の人間と区別されます。それは「私」が固有名を知るある個人と他の人間は引き換えに出来ないことを意味します。なぜなら固有名をもつ個人は、「私」の心の中で固有の思い出と思い入れをもつからです。

例えば、「私」は友人Aと一緒に遊んだ記憶を持ち、それは友人Bや友人cとの思い出とは異なるものです。またAに対する気持ちも、他の人間に対するものとは異なるものです。「私」にとって、Aは他の人間と交換できる存在ではない、固有の価値をもつ存在です。

そして全ての人間は、「私」にとってのAのように、誰かと代えが効かない存在であるために、固有の価値を持ちます。

しかしこの論理には、欠陥があります。
まずこの論理では、「Aへの『私』の思い入れ」を価値の源泉とし、「Aが「私」にとって固有の価値がある」のAや「私」に万人があてはまることを前提にしていることです。他人へ思い入れを余り持たない「私」や、誰にも思われないAにとって、この論理は無意味です。
二つ目に、「私」は社会生活を送る上で、他人を個別にではなくカテゴライズして取り扱わなければなりません。そこには固有性はありません。例えば、「私」にとってコンビニの店員は誰でも一緒です。友人Aですら、友人という点においては、その他の友人たちと同じです。

2.一回性
一度死んだ人間は生き返りません。

3.困難さ
生を維持するためには、望む望まないに関わらず多くの生が必要です。例えば、「私」の大勢の祖先や今まで食べた食物です。そのような多くの生に支えられた生は、多くの生だけの価値があります。
但しこれは「命の大切さ」を前提としているため、一種の同語反復です。

結局稀少性で「命の大切さ」を測ろうとすると、「私」にとっての愛する誰かの固有性を担保にして、それを類推で広げるしかありません。
しかしこの論理を裏返すと、誰かにとって「私」が愛する人は非固有性でどうでも良い存在であることを理由に、万人が非固有な存在であるとなってしまいます。

・飼って殺して食べる授業について
この授業でも、「命の大切さ」を知るために上記の論理を前提にしていると考えられます。

1.名前を与えて育てる
まず、殺して食べるための動物に固有名を与えさせ、自ら育てることで思い入れを作らせます。このようにして、その動物(例えばブタのPちゃん)は「私」にとって固有の価値をもつ存在になります。
そして命あるわれわれは、「私」にとっての可愛いPちゃんのように、価値あるものであることを知ります。

2.殺して食べる

殺して食べる段になると、混乱が生じます。「私」にとって、スーパーに並ぶ食肉はどれも同じな固有性を持たないもので、それを可愛いPちゃんと等価に結ぶことができないからです。

ここで「私」は、スーパーの食肉とカテゴライズし固有性を無視していた物が、Pちゃんと同じだけの価値があったことを知ります。

実際に殺すことで、生の一回性を体感します。ここで、われわれの価値ある生ははかなく失われうることを知ります。

食べることによって、実は自分たちの生がスーパーの食肉を始めとする他の生によって支えられていることを体感します。「私」を支える膨大な他の生は、その一つ一つがPちゃんと同じだけの価値をもつものであり、それに支えられるわれわれは膨大な価値をもつはずです。

・本当に「命の大切さ」が学べるのか

上記に示したような、思考の過程は一種のモデルであり、本当に生徒がこの通りに学んでくれるとは限りません。

物議を呼ぶ箇所は、殺して食べるところです。ここでは、Pちゃんとスーパーの食肉が同一であると示し、「私」にとってのPちゃんの価値を根拠に、スーパーの食肉(を始めとする食べ物)の尊さ、さらにそれに支えられる我々の価値を示しています。
当然、Pちゃんへの思い入れが強い程この価値を実感できるはずです。

しかしこの論理を裏返すと恐ろしいことになります。かわいいPちゃんの価値は実はスーパーの食肉程度の価値しかないこと、つまり固有性の価値は容易く実用の価値にとって代わられうることを暴露しているからです。そして養豚場の大勢のPちゃんが、スーパーに並ぶ肉が、Pちゃんにはもともとそれだけの価値しかなかったことを示しています。「私」の思い入れは、最初から無価値だったのです。

ここで、「私」の思い入れを論拠とした「命の大切さ」の論理は反転します。もし「私」にとって大切だったPちゃんが食肉程度の価値しかないというのなら、Pちゃんと同じくらいに大切に思っている人間もその程度の価値しか実はなかったのです。

この裏の論理に気付いた生徒は、「人間の生の無価値さ」をPちゃんを通じて体感したはずです。Pちゃんのへの思い入れが強い程この反動も大きいはずです。

この裏の論理につながりうる危うさが、この授業が残虐だと非難される理由だと思います。

中国のボカロPのH.K.君のインタビューを翻訳してみた

多分中国のボカロPのトップクリエイターといえばH.K.君ではないだろうか。
彼の代表作「千年食譜頌」は投稿から半年で、ニコ動で1万7000回再生、bilibili動画(中国のニコ動)では36万再生を超えており、現在中国語ボカロ洛天依のオリジナル曲では最も多い再生数を誇っている。
そんなH.K.君が中国の無料オンラインアニメ雑誌「圈角匡叉」の独占取材を受けているようなので翻訳してみた。
口語過ぎて難しい。訳に自信がないところが多すぎる。

H.K.君の投稿:
投稿(ニコニコ)
http://www.nicovideo.jp/user/19459730/video
投稿一覧(bilibil)
http://www.bilibili.tv/mylist1690#1690

記事のソースはこちら:http://blog.sina.com.cn/s/blog_78f2467301014otc.html

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hk君紹介:hk君は中国のオリジナルのアニメ、同人音楽の製作者である。作詞、作曲、編曲、演奏、録音、ミキシング、効果、さらに歌やコーラスと、音楽制作のほとんどの段階を担当している。09年から在豆瓣音楽人などのネットの舞台での活動を開始する。

12月18日、ACFUN弾幕動画サイトに第一作「Intro - Beyond Atmosphere」を投稿し、万を超えるクリック数を獲得する。(訳注:この曲http://www.acfun.tv/v/ac63430)
その後日本のニコニコ動画に投稿した「澄み空」(訳注:この曲http://www.nicovideo.jp/watch/sm13121458)は、日本のラジオ番組「VOCALOID 聴き専ラジオ」で海外地区の代表作品に放送中にLIVE放送が行われた。
11年9月に自身のファースト・アルバム「融合の可能性」(訳注:宣伝動画http://www.bilibili.tv/video/av182740/)を発表する。
12年3月に、国産アニメ「戦闘装甲鋼羽」のために宣伝PVのイメージ曲「External Combustion」(訳注:多分この曲http://www.bilibili.tv/video/av282597/)を創作し、BGMなどを担当した。
近頃発表した「千年食譜頌」(訳注:この曲http://www.nicovideo.jp/watch/sm18334517)も広く好評を得た。

音楽を携えて共に行こう

圈角匡叉:Hk君、こんにちは!我々の取材を受けていただき、非常に感謝しています!あなたがミュージシャンであると同時に優れたギタリストであることは知られていますが、hk君はいつからギターを習い始め、またアニメ音楽に接触したのですか?
Hk君:みなさんこんにちは。紳士のhk君です!僕は小学六年生の時にギターを勉強しました。当時は中学生でフォーク・ギターを弾くのがかっこいいと感じていたので、女の子にモテると思いました。でもコードを抑えるのが痛すぎたので一ヶ月で放棄しました。中学2年になってやっと真面目にエレキギターを勉強し始めました。当時も自分の趣味がわりと濃かったんで、自分の好きなのものにいつの間にかハマってしまいました。
アニメ音楽についてなら、3,4歳でもう聞いていました。深圳や広州のこの世代だったら、翡翠台(訳注:香港のテレビ局)がずっとアニメを放送していましたから。でも「ドラゴンボール」や「幽遊白書」はずっとリアルタイムで歌いました。5,6年生でもうエヴァをリアルタイムでみていました!

圈角匡叉:ならどのようにミクに接触しましたか!
Hk君:これはとても長い物語ですね!つまり一人のガキがいて、エレキギターで遊び始めて、自分で練習して、自分がすごいと思って、美少年を集めてバンドを作りました。06年にはオーディションなんかも始め、失敗の数も多かったですし、やめたくなったり、自分に対して自信がなくなることも有りました。大学に入ってから、大学の先生のレベルもそれほど高くなく、やる気もないことを発見しました。だから一緒にバンドをしている友だちと会社を開いて、あの時の僕のよう若者や厨二にギターを教えまして、創造をしました。少しずつ音楽制作方面を探り出しました。楽器が出来る人はみんな自分で歌などを作ってみますが、全体に出来上がるのは一本の棒初歩的なものです。(訳注:1/24「一本の棒」の意味がわかったので追記)僕の性格はわりと意地っ張りなので、ずっとやり続けられたのかもしれません。初音に接触したのは08年でしょう。その間にも三次元の歌手のために次々と曲を創作しました。超女(訳注:中国の人気オーディション番組「超級女声」のこと)にも(笑)。毎日僕は流行歌をアレンジしたり、新しいことをちょっとやったりして、ある程度まで来たら、つまらないと思った。脱オタの時期だったかもしれません。その後、大学の同級生兼親友が来て、人声の歌姫を僕に紹介して、直接人声で演奏できると言いました。それを見た時、僕がやりたかったことはここにあったんだと感じました。

圈角匡叉:では、Acfunやbililbli動画(訳注:両方ともニコ動に類似する中国のオタク系弾幕動画サイト)やニコニコ動画で何か面白いことがありましたか?
Hk君:08年に初めての歌をAcfunに発表したことを覚えています。単にラララだけの歌「Intro」です。Acfunでは基本的に歌を発表して、絵師を探しました。それ自体はAcfunとはあまり関係はありません。Acfunやbilibliに通じてる人なら知っていますが、bilibli後期の75%の音声ファイル製作者(訳注:「音频制作人」の訳語がわからない)は以前Acfunで過ごしていました。僕は基本的に10年からbilibiliを始めました!割と楽しいです。
ニコニコなら、日本人のtap(ツッコミ)は国内のよりも確実に面白いです。千年食譜頌を例にします!ニコニコには洛天依の殿堂があります。10万(再生)を超えると殿堂のリストに入れるんですが、彼らのtapは殿堂を食堂に変えたんです!また3Dビデオの澄み空があります。当時の僕は親友にこれに関する事情を知らされた時びっくりしました。11区(訳注:日本のこと。ルルーシュ作中の用語から。)の洛天依の新曲をするラジオ局が、この日海外地区の代表作品としてこの作品を選んだんです。この時の番組は伊藤社長がゲストだったので、彼も聞きました!この録音を僕は今も保存してます。

圈角匡叉:洛天依は?どう見ますか?
Hk君:洛天依に注目していたので、洛天依は中国のがあると聞いて、当然とても感激しました。僕はもともと年頭で、この情報を知りました。友達があのへんで働いていたので、界隈のちょっとした情報が早くてみんなハイになって、「期待しない奴がいるのか?」になったあと、日本のあの辺の代理人が、先にデモ版で国内のテストをしました。2,3月に公式がdemoを放出し始めました。「千年食譜頌」はあの時書いたものですが、やっぱり自分の音楽なので、自分の子供のようでした!なので気を使いました!
洛天依そのものには何の属性もなく、もしあるなら間違えた人に罪があります。だけれども洛天依は無罪です。多くの我が国の事情や利益要素によって、言い訳できないような事になる可能性があります。「千年食譜頌」にせよ他のにせよ、僕もできるだけ、僕が正確だと思う洛天依や、または僕が感じる洛天依のイメージを、皆さんに届けるだけです。

圈角匡叉:何がきっかけで「千年食譜頌」を創作しましたか?
Hk君:この曲は実は去年豆瓣(訳注:中国のSNS)にいた時、突如全部食べ物についての歌を作ったらいいんじゃないかと思いつきました。この時豆瓣や微博(訳注:中国のマイクロブログ)で僕の親友たちにレシピを集めてもらいました。その時の要求は「その一、山海の珍味や高価なものはいらない。身近なものや、地元人がいつも食べている美食が欲しい。」でした。8月に単語を集め終わったのですが、その後に色々あって放置しました。そして洛天依のことですが、中国のものなので、中国的要素がどうしても要りますよね!和風曲ばかり作ったり、微妙な曲を書いたりしたら、評価に困ります。書く人が居ないというなら、僕が書いてみましょう!みんなが聞いて理解できて、みんなが聞くとうきうきして、歌いやすくて楽しい曲を!ちょうど「舌尖上的中国」(訳注:「舌先の中国」というグルメ番組)ブームの尻馬に乗れました。
(訳注:「千年食譜頌」は洛天依のデモ曲の一つであり、一番人気を獲得している曲でもある。洛天依に大食い属性が付いたきっかけでもある。)

圈角匡叉:hk君、今彼女はいますか?どんなタイプの女の子が好きですか?
Hk君:今は確かに彼女はいませんが、昔まばらな交際がありました。でも微妙で、プラトニックよりもプラトニックなラブでした。毎日ナンパの話をしている人は逆に、一番ナンパできない人なんですよ。楽しいだけです!

圈角匡叉:3Dアニメ製作者の平安夜的悪夢とはどうやってしりあいましたか?
Hk君:あ(驚き)、僕は彼にこの取材を言わないのに、彼に見つけさせてしまう!(苦笑)僕と彼はすでに多くの人にカップリングされて居ますが、実は僕自身もわりと彼とカップルになりたいなと思っています。僕はゲイじゃないし、性指向も正常ですが、でもあいつは本当にいじめたくなります!彼が罰が悪そうに、慌てている様子を見ると、特に面白いです!かれは普段は腹黒攻めで、なんでも知っているのですが、自分でやらずに他人にやらせて、それから「ああ、そうだったんだ。」「ああ、もう予想済みだ」と言うので、こういう性格は特にからかいたくなります。
Acfunで二番目の歌をアップした時、絵師やその他雑用を募集したのですが、その中に破小天という催促専門が居て、その人に紹介してもらいました。あとで交流した時、考え方が似ていると感じました。初めてのコラボは「澄み空」のビデオです。僕はいま彼とのチャット記録が1000ページを超えていまして、生活上のことや、仕事上のことや、プライベートのことや、その他なんでも彼と話せます。カップリングについて言いたいなら、実は僕は彼にまだ会ったことがありません!僕と彼とはただの腐れ縁ですよ!
予告しますと、「千年食譜頌」は歌姫のカバー版があります。僕と彼もその場でエキストラをやるかもしれません。彼が演じる店のウェイターのキャラのあの声はほんとに凄いです!来週ぐらいに発表します!(おそらく本稿発表以前)

圈角匡叉:Hk軍団のことについて教えていただけますか?
Hk君:Hk軍団なら、僕はライブ専門の、acg(訳注:アニメ、漫画、ゲームなどのオタ系コンテンツ)のバンドをわりと作りたいんです。今のメンバーは互いに知り合いです。ギタリストは4〜5、ベーシストは2〜3,キーボードは1〜2,ドラマーは1〜2です。このバンドは2次元の僕がリーダーで、顔出しするバンドと大体思ってもらえばいいです。実はこれは、みんなが”老油条”(PS:老油条とはある方面に非常に詳しい人を指す。)である、組織の方が似ています。

圈角匡叉:どうして2周年記念アルバムのCMを発表しようと思ったのですか?続いて別のアルバムを発表しますか?
Hk君:まず2周年は本当に2周年なわけでもなく、記念するようなことでもないです。ただ僕の友達がプロっぽくした方がいいといったので、くっつけました!宣伝文句も自分で書いたので、自画自賛な気がします。僕らは1000枚作ったのですが、予約で300枚ちょっと売れました。しかしこれは記念なので増版の準備はありませんでした!
僕の計画では、来年4,5月に1枚発表します!中の曲は、今1,2曲しか言えません。例えば「千年食譜頌」や鋼羽の「音現区」などで、隠しファイルにはおまけがあるかもしれません!

圈角匡叉:3月に国産アニメ「戦闘装甲鋼翼」の宣伝PVのイメージ曲をどうして作ることになったのですか?
Hk君:実は最初「鋼羽」制作チームは微博でミュージシャンを募集していたのですが、僕に@した(訳注:リツイートみたいな機能)人がいたんです。その時初めてあの宣伝画を見ましたが、画風や伝わる情報から、面白そうだと感じました!そのあと行って、少し喋って作りました。実は原作を見た時「わっ!すごく楽しい。ここのこのセリフは本当に凄い。」と思いました。

圈角匡叉:では、あなたのように音楽を追求する新人に対し、どんなアドバイスがありますか?
Hk君:実はとても努力して作曲したり、吹き替えをする新人を見かけることがあります。しかし弾幕のコメントのせいで、心情に影響します。気持ちの展開の全部が全部、作者自身も不愉快にして、最後には止めさせてしまうわけではありません。でも興味を持ってこの分野に踏み込む人は、自分に「足を踏み入れたのは何のためだろう」と聞いて欲しいです。自分が楽しいから?自分を表現するため?はたまた機会を借りて人気取りをするため?僕は人気取りを排斥しませんし、君に実力があるのなら人気取りでも問題ありません。しかしもし愛情や趣味だったら、心の準備が必要です。行き過ぎた弾幕や評価を見た時、君が自分の努力のせいで嫌な目に会うんだと思うなら、それは無意味です。それは君が自分の好きなものや自分の嬉しいものを作るためだからです。環境が劣悪とは言わなくとも、新作を発表する限り、今のネット環境では、君が作ったものがどんなに良くても、めちゃくちゃな評論があるはずです。だからやっぱり心の持ちようとやり続けることです!そして落ち着くこと、落ち着く事、更に落ち着くことです。

最後に、我々の取材を受けてくれたhk君に感謝!

中国の音楽会社が本格的にボカロ商売に乗り出そうととしている件その2

さっきこの件に関するニュース記事を訳したが、実際に入場した「永遠的笛声」氏のマイクロブログの方がQ&A形式でまとめられ読みやすいので、訳してみた。

ソースはこちら:http://tieba.baidu.com/p/2105990228
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2時間にもならない前に、上海市黄浦区茂名南路花園飯店で挙行されたニュース発表会が正式に終了した。このニュース発表会で、VOCALOID CHINA上海禾念信息科技有限公司(ピープラッツ)と上海音楽出版社、上海文芸音像電子出版社の戦略的協力的関係が成立し、VOCALOID CHINAの今後の発展のおおまかな方向を皆に示した。

このニュース発表会に参加したメディアの来賓は、新浪網、文滙報、上海商報、解放日報、新聞日報、東方網、人民網、上海一周、東方早報、騰訊網、和諧社、上海荽動伝播股份有限公司などの多くのメディアと紙媒体の刊行物だった。

発表会では、相次いで上海荽動卡通股份有限公司の展任総監の樹棟氏、上海牡丹映視有限公司の王榴珈氏、上海音楽出版社、上海文芸音像電子出版社の費維輝が挨拶した。各発言者は、VOCALOID CHINAはボイス・バンクとアニメ風キャラクターの結合を利用して、広範な歓迎と関心を受けたことを紹介した。洛天依は最初にして唯一の中国語発音のVOCALOIDシリーズのソフトであり、現行の3つのアルバム「Sing singsing」「夢的七次方」「Dance dancedance」は良好な反応を得た。各会社はこの度の新形式の協力に期待を表明し、禾念公司の持つ新技術は現在のデジタル・メディア領域の需要の鍵であり、またアニメ風キャラクターの影響を借りて、更に広く伝わる中国語流行音楽をもたらすことを期待すると述べた。
費維輝は、版権問題に対して、創造的な製品を共同発行するにあたり、国外の知的所有権の経験を参照として、クリエイターや作者の関連する合法的権益の保障に努めると表明した。

挨拶の後、禾念信息科技有限公司(ピープラッツ)社長の任力氏から発言があった。各メディアの来賓やファンが来てこの重要な協力協議の契約の証人になることに対して、彼は大きな喜びを表明した。そして皆に向かって簡単にVOCALIDの紹介を行った。その間、我々にGoogleVOCALOIDの検索情報が5500万件をすでに超えたことを紹介し、Google ChromeブラウザとVOCALOIDの協力広告や日本のファミリーマートVOCALOIDの協力広告などをを放送した。その後、簡単にVOCALOIDの開発史を紹介し、我々にVOCALOID開発の中心人物であり、VOCALOIDの父と称される剣池(原文ママ)秀紀のこの協力についてのコメントを放送した。剣池秀紀はビデオの中で、VOCALOID CHINAの発展に非常な好感を表し、いつか日中の協力があることを期待すると述べ、我々に祝福を送った。


この後、任力氏は我々に直感的なイメージを与えるため、SeeUと洛天依両方のPVを放送した。VOCALOIDの今後の発展と関連活動に話が及ぶと、任力氏は「2,013年に新しい企画があるかもしれない。5〜10枚の新しいCDの発売を計画しており、関連書籍の出版も含む」と示した。

VOCALOID CHINA関連作品の創作について、任力はUGC(User Generated Content ユーザー制作コンテンツ/ユーザー自主創作)方式を順守し、作者の権益を守ると表明した。

正式であっという間の契約儀式のあと、メディアから今回の協力相手であるVOCALOID CHINA上海禾念信息科技有限公司は質問を受けた。

Q:2013年にはどんな計画がありますか?
A:第2、第3の中国語キャラクターを発表します。企業の協力により、共に手を携えてVOCALOIDの市場を作り出し、積極的に洛天依のイメージや影響を広め、国内でVOCALOIDに関する書籍を発売します。

Q:レコード業界の不景気の現状をどう見ますか?VOCALOID CHINAは音楽市場に影響を及ぼすことが出来ますか?
A:VOCALOID CHINAはデジタル化の製品であり、その発展はインターネット・プラットフォームに依存します。現代のデジタル化発展の時代にあって、未来の成長余地は非常に大きいです。インターネット・プラットフォームはVOCALOID CHINAの未来の生命力の在り処です。
そしてデジタル時代の製品はネット・ユーザーのコミュニティの中に深く入り込み、インターネット・プラットフォームの新技術に依存するので、もしインターネット・プラットフォーム上の大量の製作者やクリエイターおよびファンの力を借りることが出来れば、必ずやVOCALOIDの影響範囲をさらに拡大し、VOCALOID文化の伝播を広げることができるでしょう。

Q:VOCALOIDの日本市場での成功をどう見ますか?中国市場に対してはどうですか?
A:VOCALOIDは巨大な市場を作りました。これは音楽の市場だけではなく、音楽、アニメ、エンターテイメントを結合させた総合型の市場です。
「どうして初音ミクやGUMIなどのその他の音源を中国に導入しないのか」と尋ねる人が居ます。これは我々が2つの立場と理念を持っているからです。一つは、我々は中国自身のキャラクターを創作し、中国自身の声を持ちたいと願うからです。我々が導入するのは海外のよりよい音楽と音楽キャラクターです。我々は皆様が共同でVOCALOID市場を広げるのを手助けしたいと願っています。これは中国という市場だけではなく、V+に属するすべての市場であり、我々とみなさんに属する市場のことです。

Q:どのように優秀な作品を発見/選考しますか?
A:我々は動画サイトや関連活動を通して優秀な作品を掘り起こします。優秀な作品は通常、自己表現の欲求を持ち、作者は完成後周囲の友達やファンに聞かせたり、動画サイトに投稿したりするので、メディアはこうした作品を発見出来ます。
我々も人気の市場調査や推薦活動をして、皆様の関心が比較的高い作品に対し、我々は収集、普及、紹介を行います。これは作品そのものに対してだけではなく、VOCALOID市場全体を含みます。

Q:どうすれば関連する音源製品を購入できますか?VOCALIOD CHINA製品の優勢はどこにありますか?キャラクター文化について、男性キャラクターを発売しますか?
A:購入方法は、淘宝(訳注:ネット通販サイト)を探してください。淘宝に公式の店舗があります。
あなたの述べるキー・ポイントの男性キャラの問題について、私たちに確かにこのような計画はあります。ですがこれは皆様の声の需要に基づいて決定することであり、我々は音楽を作り音楽を楽しむ事のできる道具を提供しているだけです。市場の需要と発展に従い、(男性キャラの発売)これも可能性があります。

中国の音楽会社が本格的にボカロ商売に乗り出そうととしている件

中国の無料オンラインアニメ雑誌「圈角匡叉」で、中国語ボーカロイド洛天依を本格的に売り出すために中国の音楽会社2社が提携し、発表会を開いたことを知らせる記事が乗っていたので翻訳してみる。中国におけるボカロビジネスの展望の方向性や、第2のボカロを今年中に投入しようとしていることや、ライブを計画していることが分かる。画像だらけなので注意。
次は同雑誌の中国人ボカロPインタビューを翻訳したいけど、ネットスラングが多すぎてできるか分からない。

入場した「永遠的笛声」氏によれば、入場者は天依のバスカード、CD2枚、フォルダ、冊子の入った袋がもらえたらしい。(ソースはここ:http://tieba.baidu.com/p/2106296636?pid=28364741041&cid=0#28364741041)実はグッズが余ってるんじゃないかと邪推してみたり。
元記事はこちら:http://www.qjkc.net/archives/2406

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ボーカロイド・チャイナと上海音楽出版社と上海文芸音像電子出版社が提携し、ボーカロイド・ミュージシャンのCDを発売」
作者:風暴
発表:2013-01-17 20:13

今日、上海花園飯店で、Vocaloid Chinaは発表会を開いた。発表会は主に、上海音楽出版社と上海文芸音像電子出版社が、中国国内でのボーカロイド・シリーズの製品や関連する電子音楽コンテンツの提携契約に正式にサインしたことであった。

(図左:上海音楽出版社、上海文芸音像電子出版社社長 費維耀/右:ボーカロイド・チャイナ総経理理 任力)
実は、上海音楽出版社はすでにボーカロイド・チャイナとの提携事業を持っている。以前にもすでに「夢的七次方」「Dance Dance Dance」「Sing Sing Sing」の3枚のCDを発行しているが、戦略的協力は達成されていなかった。この度の協力に含まれる内容は主に、ボーカロイドの作曲者の優秀な曲の発売出版の実施や、その後のカラオケや携帯端末などの製品への発展である。優秀な曲の選択による判定について、風暴(訳注:この記事の作者)は任社長に疑問を提出したところ、曲の善し悪しは市場の選択を見る必要があると述べ、動画サイトの各作品の人気を見るつもりだと答えた。この動画サイトとは主にAcFunやBilibili動画(訳注:両方とも中国の人気オタク系弾幕動画サイト)であろうことは、想像に難くない。
バーチャル・アイドルを中心とするボーカロイドについて、上海音楽出版社の費社長は、ボーカロイド・チャイナの音楽の発売は、伝統的なCDではなくインターネット・プラットフォームにより多く依存するだろうと表明した。ボーカロイド・チャイナの任社長は、2013年に第2、さらに第三のキャラクターのボイスバンクを発売するつもりであることを明らかにした。ボーカロイド・チャイナのキャラクターにも男性キャラがいるので、現場では男性キャラの発売を問う声があがったが、任社長は主に市場の需要を見る必要があると述べた。(だから男性キャラが好きな皆さん、大きな声をあげよう)また今年はボーカロイド関連の書籍を発売するかもしれないと言った。


(訳注:下から「UGCユーザー自主創作コンテンツ」、「電子音楽動画版権管理」、「版権利用展開」「出版発売」、「カラオケ」「娯楽文化」「広告キャラクター」「ゲーム利用」「携帯端末」などと書かれている。)
発表会で任社長の述べたアイデアは、私は総体的には悪くないと思った。彼は、ボーカロイド・チャイナと上海音楽出版社と上海文芸音像電子出版社がUGC(ユーザー自主創作コンテンツ)の版権管理および利用開発のための作業チームを作る必要があると言う。あなたの作品が優秀でありさえすれば、あなたはもうネット通販や即売会の同人作品ではなく、全国に正規版を発売することができると述べ、発売に成功した作品が作者にもたらす利益も更に大きくなると信じていると言った。


発表会では、韓国のボカロキャラクターSeeUのビデオが放映された。韓国のボーカロイドの展開
は、二次元と三次元を結合させ、同じステージでインタラクティブ・ライブを開くモデルを取っている。このビデオを見て、このモデルは韓国には適していると思った。韓国のボーカロイドの音楽などについて、任社長は今後も導入していくことを表明した。
(下記はSeeUとGlamのライブの動画、1/22にYoutubeの同内容のものに差し替え)



発表会の最後に、任社長は「ボーカロイド・チャイナの人気上昇の程度は完全に予想を超えており、皆さんの支持に非常に感謝している。気が早いが皆さん良いお年を。(訳注:中国では旧暦の正月を祝う)」と言った。最後に仕事のせいでこの場に来られなかった剣持秀氏が、このためにわざわざ録画した祝福のビデオを放送した。
http://v.youku.com/v_show/id_XNTAzMzQ4ODcy.html

中国語新聞「南方日報」のボカロ記事を翻訳してみた

前に翻訳したのが受けたみたいなので、冬休みで暇だから調子に乗ってもう一本翻訳してみる。
中国共産党広東省委員会の日刊紙である「南方日報」の記事で、中国語ボーカロイド洛天依が与えた影響や、中国のボカロPや歌い手のインタビューが載っている。
中国のボカロシーンやボカロの受容が分かる良記事。

記事の中に出てくる人や曲はこちら。調べてもわからなかった人や曲があるので、全てではない。また間違いがあるかもしれない。
H.K.君:
洛天依】千年食譜頌【オリジナル】
http://www.nicovideo.jp/watch/sm18334517
投稿(ニコニコ)
http://www.nicovideo.jp/user/19459730/video
投稿一覧(bilibil)
http://www.bilibili.tv/mylist1690#1690

裕剣流:
洛天依】雑貨店魔法幻想曲(PV付き)【裕剣流】
http://www.nicovideo.jp/watch/sm18976621
投稿リスト(bilibli動画、ニコニコよりも数が多い)
http://space.bilibili.tv/146339
投稿(ニコニコ)
http://www.nicovideo.jp/user/21589978/video

忐忑(MIKU's Remix)最终版(「忐忑」は上に心という漢字に「下」に「心」という漢字)
https://www.youtube.com/watch?v=kmejdcnDeys
龔琳娜 - 忐忑KTV版字幕 (大陸爆紅神曲)(上記の元ネタ)
https://www.youtube.com/watch?v=nFrcKYA1EL4

冥月:
冥月のマイリスト
http://www.nicovideo.jp/mylist/17305467
月·西江 (冥月カバー)
http://www.youtube.com/watch?v=pBQY-4bq2hs
暁秋月明(冥月カバー)
http://fc.5sing.com/4435294.html###

solpie:
solpieのマイリスト
http://www.nicovideo.jp/mylist/19281999
【ボーマス20参加】「月・西江」のPVを作ってみた
http://www.nicovideo.jp/watch/sm10875175
初音ミク】「暁秋月明」月見でもしませんか【中国風オリジナル】
http://www.nicovideo.jp/watch/sm12145746

元記事:http://www.nfdaily.cn/pic2/content/2012-10/31/content_57285414.htm
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洛天依がアマチュア音楽の夢を歌いあげる

発表: 2012-10-31 23:59
ソース: 南方日報 - 南網
作者:南方日報見習い記者 張婧  記者 謝苗楓


楽家の裕剣流がバーチャルの歌姫洛天依を用いて曲を創作している。肖雄 羅思亮 撮影

もしあなたが音楽の夢を持っていたら、どうすれば実現できるだろうか?楽器を習う? ストリート・ミュージシャンをする?それとも「中国好声音」(中国のオーディション番組)に参加する?バーチャルの歌姫はあなたにもう一つの可能性をもたらした。一台のパソコン、一本のソフト、それだけあれば音楽が楽しめる。

音声合成エンジンをもとに開発されたソフトに、可愛いアニメ風のイメージを加え、さらにある程度の背景設定を与え、音符と歌詞を入力さえすれば、彼女を話させたり、歌わせたりすることができる。これが、バーチャルの歌姫だ。

古代風に髪を結い、青と白の服を身につけ、頭にヘッドセットを被り、100曲を超えるオリジナル曲を持ち、ネットやテレビにも彼女が歌う姿が現れたことがある。彼女こそバーチャルの歌姫の洛天依である。今年の7月、中国風要素にあふれる洛天依が売り出されると、すぐに草の根の音楽愛好家達の支持を受けた。統計によれば、3ヶ月で、ネット上の洛天依と関係する作品は2000件以上に達し、この数字は増え続けている。

洛天依は絶え間なく新作を出し、草の根の音楽家に希望をもたらした。音楽に情熱を抱く人々の群れは、バーチャルと現実の交差する音楽の道の上に、自分の音楽の夢を描き続けている。

深夜2時、HKは半月も苦労しつづた作品を取り出して、録音室で調音を繰り返し、バーチャルの歌姫にもっと完璧に歌わせようとしている。静かな夜はHKのインスピレーションを充実させる。だいたい二晩の奮闘を経れば、この新作が視聴者の前に姿を表すだろう。

バーチャルの歌姫洛天依の後ろには、HKのような人々がいる。音楽創作者、ソフトの調音師、イラストレーター、映像処理とと特殊効果、カバーの歌い手など。もしこの熱愛者たちが居なければ、バーチャルの歌姫は0と1の塊にすぎないだろう。

彼の努力がまさに、洛天依に生命を与え、中国音楽に全く新しい文化モデルを提供する。つまり下から上の、自由と可能性に満ちたオープンな草の根の創作だ。

音楽創作者が曲を作り出す。ソフト調音師が洛天依に歌わせる。音楽愛好家がカバーした後またアップロードする……。参加者の役割も絶えず入れ替わり融合する。創作者は調音師でもあり、調音師も創作者になりうる。もし情熱があれば、誰でもカバーを歌い、MVを作ることができる。

曲が魂を錬成する

音楽創作者のそれぞれの歌が、バーチャルの歌姫の魂を錬成している。創作者の歌声に生きる彼女は、思い出を持ち、喜怒哀楽もある。

現実では、HKはプロのミュージシャンであり、深セン圳にある某社の音楽ディレクターを務める。ネット上では、彼は洛天依のオフィシャル試聴曲「千年食譜頌」の作者であり、国産アニメ「鋼羽」の音楽監督でもある。

現在、「千年食譜頌」の国内でのクリック数は50万回を越えた。もし洛天依がなければ、この曲は全く異なる運命にあったかもしれない。もしHKがこの曲をどこかのレコード会社に渡していれば、市場価格に応じて彼は数千元(注:1人民元=約14円)を稼げただろう。この曲は歌手の誰かに渡されるかもしれないし、彼の名前が上に書かれて、仕舞い込まれていたかもしれない。仮定の結果に比べると、HKは現在の状況のほうが好きである。つまり彼の音楽が知られて喜ばれることだ。

洛天依の出現は、HKに生き生きとした活気を感じさせた。彼はバーチャルの歌姫の曲の創作に身を投じ、一連の作品を発表し、国内外の多くのネット民の好評を受けた。

HKと同じように、裕剣流ももプロのミュージシャンである。2010年11月3日が、裕剣流のプロのミュージシャンとしての人生の始まりだった。その前は彼は幾つもの自由業を試してみたが、ずっと気に入らなかった。そしてこの日、バーチャルの歌姫と出会い、彼に音楽の夢を再び拾わせたのだった。

裕剣流のようなクリエイターにとって、バーチャルの歌姫の出現は、全く新しい機会だった。

「以前は歌を一曲書いたあと、適当な歌い手を探す必要があり大変でしたし、歌手から来る要素が創作の自由度を制限していました。」裕剣流は語る。「現在私は歌い手に対する全ての配慮を放り出すことができます。私の想像に従って、完全に私個人のスタイルに属する曲が作れます。例えば『雑貨店魔法幻想曲』のような速度がとても早い曲を、洛天依は何のプレッシャーもなく歌い終わることができます。」

洛天依が世に出てからの3ヶ月と少しの期間で、裕剣流はすでに7曲の作品を発表した。彼の作品の歌に背景を設定し物語を語るスタイルは特徴的で、皆の歓迎を受けている。

独学の裕剣流とは違い、小羊は正規の教育を受け、大学で音楽制作を学んでいる。「私の夢はDJになることです。私の作曲や編曲を通して、作品が他人の賞賛を得られるといいと思います。私を公演に招いて、満場をhighにさせてください!」

2010年11月、大学三年生の小羊は一晩徹夜して、バーチャルの歌姫(注:多分初音ミク)を用いて神曲『〓〓』(注:「忐忑」は「上に心」という漢字に「下」に「心」という漢字)をリミックスした。この鮮明なダンス・スタイルの作品は、国内某有名アニメ系サイト(注:多分bilibili動画)のクリック数が6.8万回に達し、某著名バラエティ番組に採用されるほどだった。自分の作品が主流文化の視野に入ることが出来たことで、小羊は嬉しい。「とても変だと思う人達も居ますが、いいと感じる多くの人もいます。これが音楽の魅力です!」

調音が命を注入する
すべての調音師は完璧主義者である。何百何千の反復から、調音師は注意深く練り上げ、完璧なフレーズを追求する。

一曲の編曲が完成すると、ソフトに向かってメロディーや歌詞を入力し、歌姫の滑舌や呼吸や速さなどをゆっくり調整し、歌声がなるべく「人間の感情」を含むようにする。これが調音師のしごとだ。異なる調音師は曲に対して異なる理解を持ち、技術もむらがあるので、調整した作品もそれぞれの特長がある。

多くの人の見る所、ソフトの調音は実は繰り返しのつまらない過程である。ただし調音師にとっては、この過程は指導の過程であり、知らず知らずのうちに、洛天依に自分の感情を注入し、彼女がゆっくり育つのを見つめている。


MiyaPAは撮影を学ぶ大学生である。洛天依の出現後、彼のすべての作品は殆どこの「女の子」に関するものになった。「私が何百何千回もひとつの音を調整する時は、ルームメイトが嫌になりそうになります。」MiyaPAの調教で、洛天依は歌うだけでなく、『江南style』も踊れるようになった。

MiyaPAと同じように、三可の青春にも、一つの音楽の夢がある。

三可は有限な空き時間を全て洛天依にささげている。ネット上で彼は成熟した技術の調音師となり、96万人の人気をあつめた。現実中の彼は広州の某高校の一人の一年生にすぎないのだが。

16歳の若さでも、三可がバーチャルな歌姫と接触していた時間はもう7年になる。「子供の頃ゲームが好きでした。ある日お父さんが突然私に『歌うソフトウェアを研究してみないか』と言いました。」父親の提案を受け入れた三可が、最終的に手に入れたのはバーチャルの歌姫の初代ソフト(注:多分LeonかLora)だった。

「あの頃は夢中で、毎日宿題が終わると、私は研究を開始しました。」初代ソフトはあまり人間化していなかったため、当時9歳だった三可にとって、操作するのはかなり苦労した。「私はそれを私に話しかけさせるのが好きでした。しかし当時手に入れたソフトは英語の発音しかサポートしていなかったので、私達の会話は全て英語でした。」同級生たちは三可が「遊んでいる」と思っているが、彼はそう思っていない。「私も自分の音楽を作って洛天依に歌わせたいです。現在は調音を改善し、発声の滑舌や強弱や速度を研究すれば、将来洛天依に私の歌を歌わせられる日が来るでしょう。」
カバーが現実を持ち込む
作品の新たなアレンジを通して、虚構の歌姫を現実に持ち込み、ネット上の優秀なカバー歌手は支持を受け、アマチュア音楽に希望をもたらした。

友達にとって、深藍は「マイク王」(歌が上手い人)だ。25歳の彼女は子供の頃から歌うのが好きで、ピアノを習ったことがある。かつての夢は中央音楽学院に合格し、歌手になることだった。現在大学院を卒業した彼女は広州の国営企業で働いている。

去年、深藍は何気なく『Tell your world』を聞き、深く感動した。彼女の初めてのカバー曲の録音は、友だちにミックスを手伝ってもらった。

「聞いてくれる人が本当にいるとは思わなかったのですが、友達はみな私が上手く歌えていると言いました。」深藍はここからカバーの道を歩み始めた。洛天依の出現後、深藍は彼女の歌のカバーに専念し始めた。彼女は自分が満足するまで洛天依の歌を次々と歌うことができる。

「電子音になれない人がいるので、私の歌声を通して、多くの人にバーチャルの歌姫を知ってもらいたいです」

今年9月、一人のネット民が深藍に冥月のカバーした「月西江」を推薦した。深藍はここから冥月の声を知り、冥月の忠実なファンとなった。

『月西江』はネットユーザーのSOLPIEの制作だが、バーチャルの歌姫の歌声に余り満足しないリスナーたちもいた。「曲の雰囲気は美しいのですが、現在の技術の条件では、電子音はどうやっても人間の声のような流れるような声やつぶやくような声で歌えません。冥月のカバーこそがこの詩の最も完璧な解釈です。」深藍は評価する。

しかし冥月はそうは思わない。「本当の所は比べられません。ファンによっては、バーチャルの歌姫が永遠に最高です。個人の好みによります。」

「90後」(90年代生まれ)の冥月はとある音楽学院の学生である。彼女は将来は歌によって生活したいと夢見ている。この夢は今の彼女にとって実現はそれほど難しくないよに見える。彼女の同級生が無名な時、彼女はカバーによってオタク界でちょっとした知名度があり、少なからぬ商業提携の誘いを受けた。

冥月のカバーした名曲の中には、「月西江」の他にも、「暁秋月明」などの、バーチャルの歌姫がオリジナルを歌っていたものがある。これらの中国風の色彩を持ったカバー曲のダウンロード数は万単位であり、オリジナルを超えたものまである。

「もしダウンロードから印税を計算すれば、冥月は『白富美』(「色白で金持ちで美しい」という男にとっての理想の女性を表現した流行語)になっている。」一人のネット民は笑いながら言った。

国内のカバー界では、すでに少なからぬ「カバーのスター」が出現している。「ネット上の優秀なカバー歌手はみな各種のビジネスの誘いを受けています。「中国好声音」(人気オーディション番組)も誘いに迎えに来ました。洛天依は将来も多くのカバー歌手を現実に連れ出し、観衆の前に立たせるかもしれません。」同じくカバーの有名人であるネット民の阿夾は言う。

スポットライトの下に立たなくても、プロの音楽知識がなくとも、一銭も儲けがなくてもいい。一個の情熱と熱血によって、洛天依のファンたちはバーチャルと現実の間を歩きまわる。ともに歩み、アマチュア音楽の夢を発展させている。

とあるベテランのミュージシャンの指摘によれば、バーチャルの歌姫の出現は確かにアマチュアのミュージシャンに新たな希望をもたらした。しかしこれは我慢強い育成を必要とする、長期発展的なモデルであり、国内の音楽教育や経済水準や版権保護などは、先進国と一定の距離がある。純粋な趣味で、利益を求めない創作はこの種の環境では永らえるのが難しく、バーチャルの歌姫はまだ多くの挑戦に直面している。

「未来がどうであれ、頑張り続ける人がいれば、より多くのクリエイターを迎え入れ、そうすれば希望はかならずあるでしょう。」HKはいう。