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服と明日のおしゃれなカンケイ

2016.09.22

ファッションはストリートから

私が主催した写真展『70's 原風景 原宿』、写真集『70' HARAJUKU』の参加カメラマンでもある達川清さんの写真展『HYSTERIC GKAMOUR 1988-1989』

昨日(9月21日)はそのオープニングレセプションでした。

※写真展の詳細はこちらから(11月5日まで開催)

http://www.poetic-scape.com/

会場に入ったらヒステリックグラマーデザイナー、北村信彦さんが。

北村さんは昨年のイベント会場にも来て下さっていたので一年前のお礼をお伝えして、達川清さん(右)を交えて記念写真を撮っていただきました。

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マイク野上さん撮影の70年代の原宿セントラルアパートの写真の前で、北村さんとの1年前のツーショット。

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さて、今回の達川さんの写真ですが、(フライヤーから抜粋)

80年代後半、HYSTERIC GLAMOURのデザイナー、北村信彦と、ファッション写真の第一線で活躍していた達川清が出会い、同ブランドの1988-89年ウインターシーズン用に写真を撮り下ろした。最終的に、超大版のザラ紙に印刷され配布された。

モデルは全員素人。都内各所でゲリラ撮影。

「予算もなかったし、個性の強いヤツでやりたかった」(北村)

ライブハウスやクラブなどで声をかけて集められた若者たちの中には、のちに現代美術家となる森万里子氏やミュージシャンの屋敷豪太もいた。

原宿神宮前交差点の、今はなき、セントラルアパートの前。セントラルアパートの外装は、80年代末はガラス張りになっていたんだなーと思い出す。

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これも神宮前交差点。

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渋谷駅前。井の頭線からJRに抜ける廊下は今もあるけど、そのうち、この景色も違うものになるかも。

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筒状にして無料で配布されたザラ紙のポスター。達川さん所蔵の当時のものもギャラリーに展示されていました。

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ロック好きなオシャレさんたちに今もなお、絶大なる人気のヒステリックグラマー。ブランドのスピリットとイメージ戦略一致の面白い試みが色んな形で、エネルギッシュに行われてたあの頃だったなーと、懐かしく思い出されたりもしました。

「予算がなくたって、こういうことなら今でもできる」と、今にメッセージする意味にも、今こそ観て欲しい写真展でもあります。

10月8日(土)18時〜19時半 

達川清さんと北村信彦さんのクロストークがあります。

要予約→front-desk@poetic.scape.com

http://www.poetic-scape.com/


ファッションは大きく分けて、デザイナーが発信し、そこから広がってゆくものと、ストリートから生まれ、それが広がってゆくものとの二つの方向性があります。

ヒステリックグラマーは、モードというより、まさに後者を目指したタイプのブランドですが、そんなストリートファッションに関して、最近、とても興味深い本が出版されました。

ストリートファッションの研究者である共立女子短期大学教授の渡辺明日香さん著の、その名もズバリ!『東京ファッションクロニクル』(ストリートファッション70年史)

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東京ファッションクロニクル

東京ファッションクロニクル

ファッション雑誌には折々のそのシーズンの「街で見かけたファッション」が掲載されますが、70年間を一気に見れる興味深くありがたい一冊です。

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70年代のページ。黒い袋は、菊池武夫さん、稲葉賀恵さんご夫妻が70年に原宿にオープンされた超人気ブランド「BIGI」の袋!

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90年代のページ、黄色い袋は、ヒステリックグラマー!

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イラストを使ったモノ・モノグラフィーのページ

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ファッション年表もありがたい

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このブログのタイトルは「服と明日のおしゃれなカンケイ」ですが、

2020年代、2030年代と、ストリートからどんなファッションが生まれてゆくのか、

時代を遡って眺めながら、未来にも思いを馳せたくなってきます。

でもこのごろは、「過去にこそヒントがある」、そんな気がしてならない私です。

2016.09.16

「いくつになってもカワイイ」って、ひとつの生き方。OVER75の先輩たちから教えられたこと

小学生の頃から大好きだったイラストレーター田村セツコさん。

セツコさんが連載していた「ボンジュール マドモアゼル」によってファッションに目覚めたといっても過言ではない私です。

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桑沢デザイン研究所の学生だった頃、

通学路の公園通りにいつも貼られていた山口はるみさんの描くパルコのポスターの女性たちに羨望の目を向けている私でした。

そして当時、美人イラストレーターとして時代の寵児だったはるみさん自身も、デザインを学ぶ学生たちにとって超憧れの存在でした。

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そして、私の師匠であるヤッコさんこと高橋靖子さんと私の出会いは、私が高校生だったとき。

ヤッコさんが雑誌「服装」に連載していたエッセイによって、「スタイリストの草分けとして時代のスターだった」ヤッコさんの存在を知り、私がファンレターを出したことがきっかけの縁でした。

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そんな「私にとっての憧れ」であり、時代のレジェンドである三人と、昨日(9月15日)ランチをしました。

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ランチメニューは豊富な品揃えだったけど、全員そろって、同じ「三元豚ロースト」を注文。

ヤッコさんとはるみさん、はるみさんとセツコさんは、古くからの友人同士でしたが、ヤッコさんとセツコさんは一昨年が初対面でした。

ヤッコさんとはるみさんと私の三人がランチした原宿のカフェで偶然、セツコさんとバッタリ!そこでセツコさんがヤッコさんの顔を見て、「表参道のアリスより」(ヤッコさんが70年代に出した著書)の大ファンなんです!と仰り、それを聞いた途端、ヤッコさんが感激して泣いちゃったというドラマチックな出会いから3年。

まとめ役を私がやることになって実現したランチでした。


そのヤッコさんの著書「表参道のアリスより」を持ったセツコさん。

はるみさんが手にしているのは、やはりヤッコさんが70年代に出されたエッセイ集「あいさつのない長電話」。

この本では当時二十歳だった私がイラストを描いているのです。

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私のクリエイティビティ、いえ、人生そのものに多大なる刺激を下さった大先輩たちとの集まり、本来ならものすごく緊張しそうなところですが、3人ともが優しくて可愛くて、とーってもフレンドリーな人柄なので、若輩者の私は緊張ゼロで「カワイイ!カワイイ!」の連発でした。

「カワイイものは大好きだけど、数字は苦手」というところが全員一致で、苦手故のエピソードでも盛り上がりました(笑)


ランチを終えて、明治通りをちょこっとお散歩しました。

原宿にいる若い女の子たちよりも、ハッピーオーラと可愛さを発散させながら歩いてる姿は、後期高齢者感がまったく感じられない「三人娘」という感じ。

このスカート、可愛いわね、どうなってるの?なんて言い合ってるとこ。

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京セラビルの壁が三人の服のトーンにピッタリだったので、記念写真を撮らせていただきました。

ヤッコさんのバッグにはイギ―・ポップのサイン!

セツコさんのスカートは、原宿の街に落ちてたのを拾ってきて、タータンチェックのポケットを自分でつけたものだそう。

これぞチープシック

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みなさん「オシャレ」「カワイイ」とはいっても、その方向性と個性はさまざま。

セツコさんの言葉をお借りすれば「若いときより、70過ぎてからのほうが、案外何着ても似合っちゃうもんなのよ。自由に楽しめるようになるもんなのよ」


というわけで、田村セツコさんが、靴下に(プレゼントされた)人形をくっつけて作った(手のシワ隠しbyセツコさん)の手袋。

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「二か月前から黒猫の子猫を飼い出して、黒猫が大好きになって靴にも目を描いて黒猫にしちゃった」と言うセツコさんの靴。

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子供の頃から絵を描くことも大好きだったけど、運動も大好きで、運動神経には自信があったと仰る山口はるみさんの足元。

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「いくつになってもカワイイ」って、単に「いくつになってもカワイイ服を着る」ことや「カワイイ仕草をする」ことじゃないと教えられた昨日。

「好きなことを仕事にしてきて、今も現役でやり続けている」

そのことが若さの秘訣であることは言うまでもありませんが、

テレビや、街で見つけたものや、日常の中のちょっとしたことにヴィヴィッドな感性で反応し、感動し、そして楽しむ。

この方たちの「カワイイ」は、

70数年、毎日積み重ねてきた感性の結晶であり、まさに内側から生み出されているもの。


私がその存在を知って憧れた頃の田村セツコさんは、まだ20代だったはず。

そして、ヤッコさん、はるみさんを知ったのは、彼女たちが30代だったとき。

今でも手放しで「素敵!」といえる存在で居続けて下さってることは、とてもとてもうれしいことです。

「この年になっても」じゃなくて、年齢そのものから解放されることが一番の秘訣、と教えられた昨日でもありました。



田村セツコさんから新刊にサインしていただきました!

小学生の頃の私に自慢したい!

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ヤッコさんが去年だされた著書。

時をかけるヤッコさん

時をかけるヤッコさん


はるみさんが去年だされた作品集。

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2016.09.08

OVER50のロックな大人たち

仲良しの山田英幸さんから

「友達のカメラマンが撮る作品のモデルになってもらえませんか」と連絡をいただいたのは今年の2月のことでした。

よくわからないままではありましたが、山田さんからいただいたお話でしたので二つ返事で指定されたスタジオに向かいました。

「ロック」がテーマと聞いたので、大好きなデヴィッド・ボウイのTシャツをメインに、普段の私らしいコーディネートをしました。

カメラマンの狩野毅さんとはこのときが初対面でした。

行ったら、仲のいい友達が何人も来ていました。

みんな、山田さんに声をかけられて来ていたのでした。

それから半年経った昨日から、なんとも素敵な、OVER50の大人たちのポートレートを集めた

とっても素敵な写真展『Rock or Die』が開催されることになりました!

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レセプションパーティに参加するため夕方ギャラリーに行きました。

会場を入った途端、とっても楽しい気分になりました。

あの人も、この人も、展示された作品の中には、すっかりご無沙汰している知り合いもたくさんいました。

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やっぱりどうしたって一番気になるのは自分が写ってる写真。

ボウイがこの世から去ってまだまもない頃だったので、ロックがテーマと知っていても笑顔になれない、

そんな私のありのままの気持ちが写された写真でした。

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次々に来場するモデルになった人たち。

こんな楽しいチャンスは今しかないわ!と

作品の前に立ってもらって「作品と実物シリーズ」を撮りました。

私の師匠でもある、スタイリストの草分けヤッコさん(高橋靖子)は、OVER50どころか75歳です。

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スタイリストの島津由行さん。

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久保久美さん。

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イラストレーターの那須慶子さん。

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いつもニコニコ、いい味だしてる松枝さん。

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昔、仲良しだった美術デザイナーの正田さんとは、何十年ぶりかの再会で嬉しかった!

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正野さんは大手企業のサラリーマンで大のジョージ・ハリソンファン。

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Tシャツの柄と同じいでたちで、そしてパーティにもそのままの格好で来られた方。

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友達の角ひとみさん。最高にチャーミングなロックな表情。

でも、大きい子二人のお母さんなんです。

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モデルになったばかりでなく、写真集「Rock or Die」のディレクションもされた武川恭子さん。

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武川さんのパンチのきいたデザインのこの写真集もとっても素敵!

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私に声をかけてくださった山田さん。

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仲良しの茅野結城子さん。

ロックじゃない?いいんです、いつもシノワズリーの雰囲気の「わが道をゆく」茅野スタイルはマインドがロックなんです。

この日、茅野さんが着ていた服の刺繍の部分が配されたデザイン、さすが武川さん、わかってらっしゃる!

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私のページは、私の横でボウイがアップになってて、めっちゃ嬉しかったです!

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それにしても30代のときに、50を過ぎた自分を想像すると、

普段から着物も着こなす立派な大人の女性か、

上質なブランドものを着こなすシンプルでエレガントな女性か、

その辺りを理想として、でも、ただのおばちゃんになっちゃうかも?

なんて思ってたけど、還暦も迎えた今、ぜーんぜん、違ってた。

全然変わってないじゃん、つーか、まったく成長ないじゃん、

って感じでもあり。

狩野さんに撮られた人たちは、きっとそんな人ばかり。

違う言い方をすれば、私たちの親世代では考えられないスタイルとマインドとエネルギー

50代、60代、70代たちなのです。

モデルとなった濃い人たちが集まったパーティは、めちゃ濃くて、

ギャラリー内にはハッピーなオーラがたちこめていました。

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ケータリングサービスを入れないで、狩野さんと奥様とスタッフのみなさんで用意されたというテーブルも、とても素敵でした。

そして、会場に届けられたたくさんのお花は、どれも明るくセンスがよくて、みんなに愛されてきた狩野さんを物語っているようでした。

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50代以上のポートレートって、とかく、

深く、シブく、エレガントな方向にいきがちだけど、

「軽く見られてOK!」な私としては(笑)

「ロック」をテーマにしたコンセプトに参加させていただけて本望です!

ご機嫌な写真展は、9月16日まで!http://www.nationalphoto.co.jp/gallery/ex_160906_takeshi_kano.htm

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写真集は会場で絶賛発売中!

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2016.08.25

西川美和新作『永い言い訳』にみる男と女

公開前から評判の西川美和監督の新作映画『永い言い訳』の試写に行ってきました。

いやもう、西川監督、凄い映画を作られたもんです!

まずはその一言。

で、書かずにはいられない気持ちでホットな感想をアップします。

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映画はいきなり、本木雅弘さんが演じる主人公が髪をカットされているシーンから始まります。

カットしているのは深津絵里さん演じる妻。

そこでの夫婦の会話に(それなりに恋愛経験のある女性なら必ず)昔、付き合った男の顔が浮かんできたり、つい最近のパートナーの態度を思い出すことになるのではないでしょうか(はい、ネガティブな意味に。もちろん私もそうでした)。

売れっ子のタレント作家である主人公の衣川幸夫(きぬがささちお)は、文才と美貌を除けば、どうしようもない男といえます。

才能と人気があるから経済力もそれなりにあることでしょう。だから社会人としてどうしようもない人間ではないのだけれど、パートナーにとっては、最悪ともいえる男(と、深津絵里さん演じる妻・夏子を冒頭から自分に置き換えて思ってしまいました)。

逆にいえば、(世間からの評価に値する)才能と美貌と経済力があるからこそ、夫婦の関係性としては厄介なことになってしまうタイプの男な気がします。

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インタビューで本木さんは

「最初にお話をいただいた時、初めて身の丈に合った役柄が巡ってきたのと同時に、そんな厄介な自意識をわざわざスクリーンに晒していいのかという不安も覚えました」

と、実に正直なことを語ってらっしゃいますが、もしも、この役が本木さん以外の方に巡ってきてても、どの役者さんも、同じことを思われるのではないかという気がします。

そう、この主人公の衣笠幸夫は、(客観性のある)男性なら誰もが鏡を見ているような気持ちになるのではないか?と思えるキャラクターなのです。

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社会的には悪ではない、落ちこぼれでもない、でも、パートナーとなった女性なら誰もが「見たくなかった」「許せない」「最悪」と思ってしまう、男の情けなさ、狡さ、バカバカしいプライド、愚かなコンプレックス、笑っちゃうような自意識過剰、エゴ、甘え、弱さ、それらを2時間たっぷり、息もつかせぬ緊張感で見せてくれる本木雅弘さんの演技の凄さといったら!そして、可愛さ、素直さ、やさしさ、繊細さも。

これで本木雅弘の代表作は書き換えられるだろう、日本アカデミー主演男優賞ノミネートは間違いないだろう、勝手にそこまで思ってしまいました(笑)

そして同時に、そんな主人公の行動と感情に寄り添いながら、元夫をはじめとする、自分が関わってきた(つい関わってしまった(笑))男性や、友達の元彼や元夫までもを動員して、いろんな男の顔やエピソードが浮かんできて大変でした(笑)

本木さんだけでなく、友人役の竹原ピストルさんの、主人公と対照的な素朴で単純な存在感、衣笠(ペンネーム・津村啓)のマネージャー役の池松壮亮さんの感情を秘めた繊細な演技も素晴らしいのですが、なんといっても、子役の藤田健心君と、白鳥玉希ちゃんの、演技なのかその場のアドリブなのかの判別がつかない自然さに驚きました。

この二人を起用して、このように演出されただけでも、西川監督の手腕の凄さを感じます。(ちなみに、子役を起用されたのははじめてだそう)

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面白いな〜と思ったのは、単純な男である竹原ピストルさん演じるトラック運転手の大宮陽一といい、受験を目指して勉強中の頭のいい小学6年生の陽一の息子の真平君までも、登場する男たち全員が、「情けない面」を大いに抱えているのです。

ところが、深津絵里さん演じる夏子といい、夏子の美容院の共同経営者の琴江といい、幸夫の愛人である黒木華さん演じる智尋といい、幼稚園児の灯(あかり)ちゃんまでもが、女は(心に哀しみは抱えていても)凛として、潔く、言うこともやることも(同性として拍手を送りたくなるほど)カッコイイのです。

私たち女は、男の情けなさ、ふがいない面を見る機会が度重なると、「こんな男にいつまでも付き合ってるのは人生の無駄!」とばかり、さっさと出てゆく、あるいは、人生からお引き取り願う方向に舵を取りがちですが(笑)、西川監督の愛にあふれた、慈悲の心さえもが込められた描き方に、女性・西川美和の器の大きさに尊敬の念があふれ、また、自分のしてきたことを反省したくもなってきたのでした(笑)。

世の常識では「男は単純」ということになっているけれど、いやいや、けしてそう言い切れるものではないのですね。(この年になってわかっても遅すぎるかもではありますが(笑))

9か月にわたる撮影の中で、変化してゆく主人公の髪型(冒頭、ヘアーカットのシーンから始まるだけに、この髪型の変化の意味は大きいです。女性監督ならではの描き方だと思いました)、

映像に静かに寄り添う音楽の美しさ(音楽を担当したのが、親しい友人である加藤ミチアキさんであることが嬉しい)、

メインビジュアルを担当された上田義彦さんの独特の空気感の写真のせつなさ、

痛いほど、むき出しの感情を描いた映画でありながら、全体を流れるトーンがこれほどまでにやさしいのは、西川監督のみならず、才能ある「やさしいひとたち」が関わったから、そんな気がします。

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昨日、観たばかりのホットな気持ちで感想を書こうと思うと、きりがありません(笑)

試写室をでてすぐ書店に飛び込み、西川美和著の原作『永い言い訳』の文庫も買ってしまいました。

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永い言い訳 (文春文庫)

永い言い訳 (文春文庫)

最後に。

私は西川監督の『ゆれる』も5回くらい観てきていますが、

西川美和さんのお顔も好きです。

以前、西川監督の映画に出演された役者さんのマネージャーさんから、

「最初の打ち合わせの時、西川監督のお顔を知らなくて、目の前にいるのは共演する女優さんだとばかり思ってたら、監督と知って驚いた」と聞いたことがありますが、

(お会いしたことはありませんが)見た目も、心も、美しい方なんだと想像します。見た目の美しさは、写真を見ればわかりますが、心の美しい人でなければ、こんな映画は作れないですもん。

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女性にとっては、「男」という存在が、愛おしく思えてくる映画、

男性にとっては、「ああ、俺だけじゃないんだな…」と思える作品かも(笑)

ともかく、幾重にも重なる人間の心のひだをすくい取った、人に対するあたたかいまなざしで描かれた、深い、深い、必見の映画です!

10月14日、公開!

※予告はこちら↓

http://nagai-iiwake.com/

2016.08.22

スタイルを持ち、身軽に暮らす

仕事柄、芸能人や有名人の豪華な邸宅や、オシャレな人たちの素敵な住まいに伺う機会に恵まれてきました。

そんな中でもセンスの良さでいえば一番!と思ってきた、尊敬する大好きな年上の友達、石原左知子さんの暮らしのエッセイ集が6月に発売されました!

スタイルを持ち、身軽に暮らす いさぎよく、住む・着る・生きる

さちさんのことを書こうと思うと、ネタも思いもありすぎて、それこそ本一冊書けるくらいなので、本の中から私が知ってるさちさんらしいなーと感じた言葉を抜粋します。

結婚して40年の間に引越しを8回しましたが、若い頃に建てた一軒家以外はすべて賃貸。正直、飽きてしまうのです。同じところに暮らして、同じ空を見ていることに。そんなわけで住まいは、そのときどきの‟宿”でいいと思うようになりました。

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今、私のところに来ているものたちは、いずれ誰かのところへ行く。考え方を変えれば、私は‟その人”から借りているだけなのかもしれない。そういう意味でいくと…。自分のものは、ない。そう思ったら、すごくラクになります。ものに執着しないと身軽になれる。

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なんか違う…と思いながら、白いリビングをじーっと眺めて暮らしていたある日、もっと部屋に緑が欲しくなってきた。「森みたいにしたい!」って思った。ひらめいたらすぐに行動。さっそく友人のマキちゃん(絵描きです)に電話して、「緑の絵の具を持って、うちに来て、森を作ってくれない?」。

※これは絵が描きあがったばかりの頃に私が撮った写真です。


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50になったとき、思い残すことがあるかどうかという話の中で、うちのダンナが言ったのが、「海外に住んでみたかった」というひと言。それを聞いた私は「思い残すことがあってはダメ、後悔するから行ってきたら?」それで彼はマルタ島に。

マルタ島はシチリアの南にある小さな島国。彼はそこではじめて日本料理のお店をしながら10年間暮らし、私も結婚以来はじめてのひとり暮らしで、なんだかすごく新鮮。なんでもはじめてのことは一度きり。特別な一度だから楽しまければ。

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3・11のときはすぐに行動に移した。はじめて石巻市・小渕浜へ行ったのは4月6日。(略)その後は何回行ったのか、数えていない。(略)ボランティアをやって、自分自身の価値観が大きく動きました。ものに執着すると、それを失ったときに心が折れやすい。逆に執着を捨てると、人は自由に強くなれるとわかった。人生勉強をさせてもらった感じです。

※この写真は、小渕浜の民宿が復興したお祝いにさちさんと一緒に行ったときのものです。

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「スタイルを持ち、身軽に暮らす」、この本には、収納や部屋を飾るアイデア、ファッションについても、素敵なたくさんの具体的なヒントが詰め込まれていますが、

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私がさちさんをもっとも素敵だと思うのは、そのゆるぎない人生哲学。その哲学は一言でいえば「風通しよく」。

インテリアにも、ファッションにも、人とのコミュニケーションにも、そして生き方そのものに「風通しのよさ」がまんべんなく反映されているさちさんに、至近距離で憧れ続けているのです。


この本は、お勧めの良書ですが、正直いって、個人的にひとつだけちょっと残念な点がありました。いいアングルの写真がいっぱいあるんだけど、私が知ってるさちさんは、くっきりきっぱり!な人柄。インテリアも、赤は赤、緑は緑、黒は黒と、色を鮮明に効かせています。

写真がほんわかなところが、(あくまで私個人の好みですが)ちょっぴり残念。

そんなわけで、私が遊びに行ったときに撮ったさちさんちの写真をブログの付録としてアップします。

実はインテリアに「色を効かせる」ことこそが、日本人が一番苦手なことのような気がしています。そういう意味において、さちさんち以上にセンスがいい部屋を、これまでに見たことがないといえます。

玄関。

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トイレ。

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トイレの飾り棚。

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テーブルまわり。

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リビング。

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さちさんがもっとも素敵なのは、「来る者拒まず、去る者追わず」の人付き合い。

しょっちゅう人が集まり、そして集まる人たちが勝手に(笑)友達を連れて行っても、笑顔で招きいれてくれるさちさんです。

なので初めての人も常連のようにリラックスして過ごすのです。

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あるときは、さちさんちでたこ焼きを作った私でした。

うーんとオシャレで、すっごくセンスがいいのに、オシャレじゃなくも受け入れてくれる、緊張感ゼロでいさせてくれる、それこそがさちさんの最大の魅力だと思っている私です。そして、インテリアは真似できないまでも(笑)「風通しのいい生き方」、そこだけは大いにあやかりたいなと。

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