大阪府地方分権を進めるため、平成22年度から24年度にかけて府の権限と財源を市町村に移譲する「大阪版特例市」の構想が検討されていることが7日、分かった。3年間で80事務を移譲する計画で、人口要件にかかわらず市町村側は保健所設置などを除く中核市並みの権限を持つことを想定している。8日に開かれる府と市町村との意見交換会で協議される。
 構想によると、23年度から権限移譲を開始。保健所の設置を除き、NPO法人の設立認証や身体障害者手帳の交付、児童福祉施設の設置認可などの事務が対象で、3年間で80事務を移譲するとしている。また、市町村側の事務の受け入れ体制を整備するための財政措置として「権限移譲推進特別交付金」を設置。22年度の要求額として4億円、全体事業費としては最大32億円(3年間)を見込んでいる。
 橋下徹知事は地域主権を進めるためには、国から府への権限移譲だけでなく、府から市町村への移譲も必要だとしており、政策立案段階から府と市町村が対等な立場で協議する形を志向。政府が検討している「国と地方の協議の場の法制化」の仕組みを国に先駆けて府が推し進める考えだ。橋下知事はこれまでにも市町村長と意見交換で「分権はまず大阪で実践するのが先。大阪府を解体してほしい」などと述べていた。

同記事では,大阪府における同府から府内に位置する市町村への権限移譲の取組について紹介.
2009年5月30日付の本備忘録で紹介した同府の権限移譲の取組.同備忘録にて紹介した2009年5月29日付の毎日新聞による報道では,本年の「夏までに,市町村ごとに移譲する事務の内容や時期を盛り込んだ「権限移譲実施計画」の素案をまとめ」「10月ごろの決定を目指す」*1ともされていた,同府の取組の現状.同記事を拝読すると,昨日開催された市町村間との意見交換において,協議が継続されている模様.同意見交換の状況については,現在までのところ,同府による協議結果の公表及び他紙による報道がなく,本紙のみの報道.
同府では,2009年7月13日に『特例市並みの権限移譲に向けた基本的な考え方』及び『『権限移譲実施計画(案)』たたき台』を取りまとめ公表.同内容に関しては,同府HPを参照*2.「大阪府特例市」案では,「NPO法人の設立認証」「身体障がい者手帳の交付」「保育所の設置認可」「児童福祉施設の設置認可」等の「102事務」*3がその対象とされている.
各市町村と都道府県という,個別の二つの自治体における担当者「間の「調整」を基礎として,それらの総合調整がまずは図られ」,その後,首長を始めとする理事者間での「総合調整の総合調整がなされる構図」*4により,両者間での「同意」を図られる取組も窺える,都道府県から市町村への権限移譲の取組.一方で,2008年3月8日付同年4月24日付同年8月22日付同年11月2日付同年12月13日付2009年1月12日付同年3月8日付同年4月16日付同年8月30日付の各本備忘録にて取り上げた,(下名が,細々と継続的に観察をしております)「条例による事務処理特例制度」の運営では,(制度的には兎も角)実質的には「受容圏」(zone of acceptance)*5の如く,その受け入れに際しては,市町村側の「事実上の同意」が前提となるようにも窺える.同府の同『考え方』,同『計画(案)』の今後の具体化の様相は,要経過観察.

*1:毎日新聞(2009年5月29日)府:「関西州」へ分権ビジョン 102件を事務移譲、市町村と基本合意/大阪

*2:大阪府HP(市町村への権限移譲について)『特例市並みの権限移譲に向けた基本的な考え方』(大阪府,2009年7月),『権限移譲(案)○○市 たたき台

*3:前掲注2・大阪府2009年:4頁

*4:牧原出『行政改革と調整のシステム』(東京大学出版会,2009年)248頁

行政改革と調整のシステム (行政学叢書)

行政改革と調整のシステム (行政学叢書)

*5:Herbert A. Simon.(1997).Administrative Behavior fourth edition,FreePress:10

Administrative Behavior, 4th Edition

Administrative Behavior, 4th Edition