もう勘弁してください柳沢厚労相(でも辞めるのも良くないんだよなぁ、政治的には)

柳沢厚労相:子ども2人以上「健全」発言、波紋に拍車
 「女性は産む機械」と発言し釈明に追われている柳沢伯夫厚生労働相が、6日の記者会見で結婚したい、「2人以上子どもを持ちたい若者」を「健全」と表現したことが波紋を広げている。首相官邸は問題視しない構えだが、野党側は「子どもが2人以上いなければ不健全なのか」と一斉に反発。柳沢厚労相の辞任を求める動きがさらに勢いづいており、国会審議の正常化を前に新たな火種となる可能性もある。

 厚労相は「若い人たちは結婚したい、子どもを2人以上持ちたいという極めて健全な状況にいる」と指摘。国立社会保障・人口問題研究所の05年の調査で「いずれ結婚する」と回答した未婚男女の希望する子どもの数が平均値で2人を超えたことを踏まえた発言だった。

 これに対し、野党側は「女性蔑視(べっし)が頭の中に染み付いているようだ。看過できない」(民主党鳩山由紀夫幹事長)▽「かつての『産めよ増やせよ』とお国のために子どもを産んだ考えと同じようだ」(国民新党亀井久興幹事長)−−などと反発、厚労相の辞任を求め安倍晋三首相の任命責任を追及していく考えだ。

 一方、「産む機械」発言では厳しい声が上がった政府・与党だが、今回は静観している。自民党片山虎之助参院幹事長は記者会見で「少子化阻止は大きな国政上の課題。2人以上が望ましいとなるんじゃないか」と理解を示し、同席した矢野哲朗国対委員長が「(発言は)ごく自然ですよね」と差し向けると「自然だと思う」と同調した。

 首相は同日夕、首相官邸厚労相と協議後、記者団に「わが家も残念ながら子どもがいないが、いちいち言葉尻をとらえるより政策の中身をお互いに議論していくのが大切だ」と問題視しない考え。厚労相も記者団に「発言は不適切とかではなく、素直に聞いてもらえば分かる」と理解を求めた。【古本陽荘】

 ■柳沢伯夫厚生労働相の6日の記者会見での主なやり取りは次の通り。

(記者) 少子化対策は女性だけに求めるものなのか、考えはいかがか。

厚労相) 若い人たちの雇用形態が、例えば婚姻状況などに強い相関関係を持ち、雇用が安定すれば婚姻率も高まるような状況なので、まず若者に安定した雇用の場を与えていかなければいけない。また、女性あるいは一緒の所帯に住む世帯の家計が、子どもを持つことで厳しい条件になるので、それらを軽減する経済的支援も必要だろう。もう一つは、やはり家庭を営み、子どもを育てることには人生の喜びのようなものがあるという意識の面も若い人たちがとらえることが必要だろう。そういうことを政策として考えていかなければならない。他方、当人の若い人たちは結婚をしたい、それから子どもを2人以上持ちたいという極めて健全な状況にいるわけだから、本当にそういう若者の健全な、なんというか希望というものに我々がフィットした政策を出していくことが非常に大事だと思っている。

毎日新聞 2007年2月6日 21時07分 (最終更新時間 2月7日 0時26分)
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/feature/news/20070207k0000m010115000c.html

 どんどんねじ曲げられていく元々の厚労相の発言を見るとマスコミの文章力・創作力にそろそろ拍手喝采を贈りたくなってきますね♪

 野党の方々が解釈しているとおりに厚労相の話を解釈するならば、「子供を持ちたくない」という願望を不健全であるとし、「子供を持つのが当然だ」と押しつけていく考え方は、確かに*1現代日本の思想的状況にそぐわないものです。
 今風に言うならば、「子供を持つのも・持たないのも、それを決めるのは*2個人の権利だ。それを国に強制されるのは良くないことだ」といったところでしょうか。
 ですが、この記事を見る限りでは、野党の意見は「子供を持ちたい、という願望は、健全なものであってはならない」なのでしょうね。つまり「子供を持ちたくない」という願望こそ健全である、という風に曲解されても仕方のない言い方をしてます。

柳沢発言問題:「健全」発言に強く抗議 社民・福島党首ら
 社民党福島瑞穂党首は6日の党参院議員総会で、柳沢伯夫厚生労働相が同日の記者会見で「2人以上の子どもを持ちたいという健全な希望」と発言したことについて「女性不在、また頭数で(少子化対策を)言ったことに強く抗議する」と述べた。民主党輿石東参院議員会長も党参院議員総会で「2人以上産まない女性は健全じゃないのか」と批判した。

毎日新聞 2007年2月6日 13時38分
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/seitou/news/20070206k0000e010069000c.html

 福島さんの言っていることはわかります。「女性不在で」という言い方は「産む主体」である女性の希望も考えてくれ、とい意味にしか読めませんので、「若者の願望」が男女共通のものかどうかはっきりしていない柳沢厚労相の発言の批判として妥当ではないでしょうか。ただ、輿石さんの批判は……小学生と同じレベルの言葉尻だけ捉えた言い換えにしか見えません。
 厚労相も鳩山さんも亀井さん輿石さんも、もう少し日本語をうまく使った方がいいのではないでしょうか……マスコミにまた揚げ足とられますよ、これじゃあ。

「結婚・子2人は健全」 厚労相発言、与党内からも批判
2007年02月06日23時28分
 柳沢厚労相が6日、今後の少子化対策への取り組みについて「若い人たちは、結婚したい、子どもを2人以上持ちたいという極めて健全な状況にいる」と発言し、再び波紋を広げた。野党側は、子どもがいない場合や1人の場合は「不健全」とも受け止められると一斉に反発し、与党内からも批判の声が上がったが、安倍首相はあくまでもかばう姿勢を通した。

 柳沢氏は6日夜、記者団に「若い人たちの意識を説明した。文脈をよくみていただければ、誤解されることはない」と述べ、発言を撤回しなかった。結婚しない、または子どもを欲しがらない人たちが「不健全」と解釈される可能性については「子どもを産む産まない、結婚するしない、こういうものは個々人の自由意思で決まるという前提のもとで社会が成り立っている」と述べ、女性に出産を強要する考えはないことを強調した。

 だが、民主党の小沢代表は6日、山形市での記者会見で「(産む機械の)発言以来、一生懸命『不適切だった、ごめんなさい』と言っているが、彼自身の意識、考え方、体質が変わっていない」と批判した。

 共産党穀田恵二国対委員長は「1人だったら不健全、ゼロだったら不健全だと言いたいわけだ。全く反省していない」、社民党の福島党首は「子どもを持ちたくても持てなかった人や、持とうと思わない人に配慮がない」と批判。小沢、福島両氏と国民新党綿貫代表の3野党党首は6日夜の会談で、改めて辞任を求めることで一致。首相官邸で塩崎官房長官に申し入れた。

 与党内でも公明党浜四津敏子代表代行が「日本の少子化問題の本質を正しく理解していただかないと、厚生労働大臣の仕事はやっていただけないと思う」と批判した。

 しかし、安倍首相は6日夜、首相官邸柳沢厚労相の発言について「特定の価値観について述べたものではないと思う」と述べ、問題視しない考えを示した。

http://www.asahi.com/politics/update/0206/012.html

 この記事でも福島さんだけが妥当な批判をしているのではないでしょうか? なんというか、国政をあずかる政治家がこの程度のレベルなのですか……
 きっとコミュニケーション能力・問題解決能力もすさまじく高い人々しか政治家にはなれないと思いますが、できれば日本語の能力・論理的な思考力もきちんと備えた方があってほしいなぁ……と思います。

 ところで、少子化問題を、柳沢厚労相の専門分野である「経済問題」として捉え、国家において人口が増えていくことがある意味で言えば「健全」なことであると考えるならば、彼の発言は極めて「自然」なことです。「産む機械」が叩かれている最中で発言したのが悪かった、としか言いようがない気がしますが……この発言もやはり叩かれるのでしょうかね。うーむ。

厚労相辞任論くすぶる 愛知知事選で再燃も '07/2/2

 柳沢伯夫厚生労働相が女性を「産む機械」と発言した問題をめぐり、与党内では一日、辞任を求める声がくすぶった。安倍晋三首相は事態の沈静化を図っているが、与党幹部らからは四日の愛知県知事選、北九州市長選の結果次第では、辞任論が勢いを増すとの指摘が相次いだ。

 国会は、柳沢氏更迭を求める野党が審議拒否戦術を続け、二〇〇六年度補正予算案の審議が行われた衆院予算委員会などを欠席した。しかし自民、公明両党は補正予算案を二日に与党単独で衆院通過させ、五日にも成立させる構えで、攻防激化は必至の情勢だ。

 自民党山崎派山崎拓会長は一日の派閥総会で、柳沢氏の進退に関し「世論の動きを十分に見ながら対処した方がいい。バロメーターとしては愛知県知事選、北九州市長選がある」と選挙結果を見極め判断すべきだと強調した。

 自民党の閣僚経験者は「柳沢氏の続投には両選挙での二勝が必要。一勝一敗では野党が攻勢を強め、二敗なら終わりだ」と指摘。町村、古賀両派は柳沢氏擁護で一致したが、谷垣、伊吹両派の総会では「辞任を決断すれば終わることだ」「参院選を前にどこまで守りきれるのか」と辞任を促す意見も出た。

 自民党中川秀直幹事長は坂本剛二国対筆頭副委員長、矢野哲朗参院国対委員長らと国会内で協議し、党独自の世論調査結果では柳沢氏問題の両選挙への影響は少ないと分析し「毅然として国会運営に当たる」ことを確認した。

 小泉純一郎前首相は中川氏に電話し「民主党が追及しているのは、小沢一郎代表の多額の事務所費や角田義一参院副議長の朝鮮総連系団体からの献金の問題を隠したいからだ。審議拒否に決して屈してはいけない」と伝えた。

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200702020058.html

 最後に少しきな臭い記事を。
 政治家の発言が本当に少子化問題に関わっているのか、それとも実は政治における戦術であるのか、ということです。野党は実は与党と政策・思想・発言問題などについて対決しているのではなく、むしろ政権争いを視野に入れた行動を常に行っているのだとしたならば、野党がここまで安易な論理をもって、しかし一様に「たたき」に参加していることが納得いくのです。
 つまり、論理的・思想的には「不健全!」という批判は批判にあたらないことを知りながら、マスコミの報道を「自民党柳沢厚労相はダメ」という論調に持って行くことを重視しているのだとしたら。ついでに野党たちの献金問題などの報道をさせないための目くらましとして、ひたすら「たたき」を持続させようとしているのだとしたら。
 もしこれが正解ならば、日本の政治家は本当に能力が高いと思います。第一の目標が政治家たちの利益であるのだとすれば、全員が理にかなった行動をとっているのですから……
 このように、素晴らしく高い能力をもった政治家たちの誰もが、「日本を良くする」前に「*3私腹を肥やす」ことを考えているのならば、私たちはあまり住みよくない日本に生きているのかもしれません。

 あと、産む機械Tシャツ調子に乗ってシャツまでデザインしてみました。 - *minx* [macska dot org in exile]産む機械バッジ新発売!産む機械バッジ - *minx* [macska dot org in exile]ができましたね。男性用もちょっとほしかったりするんですが男性子供産めないので着ても似合わないんでしょうなぁ……
 あ、「産む機械」発言をシャレで「じゃあ男性は産めないから機械にもなれない、少子化問題において全く価値のない屑鉄だわ」とか言う友人がいた。そういう自虐の仕方も面白いとおもう。

*1:「自己決定」は絶対、という考え方。

*2:まぁ子供の「個人の権利」は無視されて、親ふたりの「個人の権利」だけが声高に主張される現状には、俺はかなりの気持ち悪さを感じますが

*3:政治家さんたちの頭の中にもこびりついた「個人主義」は、国に対するローヤリティよりも自分のことをひたすら気に掛けるようになります。それは結局保身主義であり、自分が政治家センセイとしての立場を維持しすることが第一になります。また、保身が第一、という目的を持つ人達とどんどんつるむようになり……日本の政党ってそういうものなのでしょうか? そう思いたくはありません……