児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

2014年12月12日のツイート

大阪府内では淫行は処罰されにくいのに、撮ったら犯罪になる。

 大阪府内での青少年との無償性行為は「専ら性的欲望を満足させる目的で、青少年を威迫し、欺き、又は困惑させ」た場合のみ禁止されていますので、普通は適用されません。ということで、大阪府警の警察官も青少年条例は知らないと思います。
 他方、撮影行為は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)7条4項で最高懲役3年になっています。
 ということで、青少年と性行為しても処罰されないけれども、それを撮影すると重い刑になります。
 保護者と示談交渉するにも、親は淫行されたことを怒っているのに、それは事件にならないので、(淫行は除いて)製造についてのみそれなりの金額で示談することになります。

大阪府青少年健全育成条例
http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/6478/00000000/zyourei.pdf
第3章 青少年の健全な成長を阻害する行為の禁止等
第1節 青少年の健全な成長を阻害する行為の禁止
(みだらな性行為及びわいせつな行為の禁止)
第34 条 何人も、次に掲げる行為を行ってはならない。
(1)青少年に金品その他の財産上の利益、役務若しくは職務を供与し、又はこれらを供与する約束で、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと(児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成11 年法律第52 号)第2条第2項に該当するものを除く。)
(2)専ら性的欲望を満足させる目的で、青少年を威迫し、欺き、又は困惑させて、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと。
(3)性行為又はわいせつな行為を行うことの周旋を受け、青少年に対し当該周旋に係る性行為又はわいせつな行為を行うこと。
(4)青少年に売春若しくは刑罰法令に触れる行為を行わせる目的又は青少年にこれらの行為を行わせるおそれのある者に引き渡す目的で、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと。

http://www.sankei.com/west/news/141212/wst1412120049-n1.html
大阪府警住吉署刑事課の男性巡査部長(47)が出会い系サイトで知り合った高校2年の女子生徒の裸をスマートフォンで撮影したとして、府警監察室は12日、児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)容疑で捜査していると発表した。巡査部長は「思い出作りのために撮った」と容疑を認めているといい、近く書類送検し、懲戒処分する方針。

 同室によると、巡査部長は6月下旬、同府枚方市の淀川河川敷に止めた乗用車内で、当時16歳だった女子生徒の体を触った上、上半身裸の写真を撮影した疑いが持たれている。

 女子生徒は裸の写真をばらまく「リベンジポルノ」の脅迫を別の男から受けているとして、両親が府警に相談。この捜査の過程で巡査部長の行為が発覚した。巡査部長による脅迫などはなかったという。

大阪府青少年健全育成条例の淫行処罰規定

 最新版の解説書をもらってきました。
 罰則も重くなりましたが、処罰範囲が狭いので、ほとんど適用されません

大阪府青少年健全育成条例の解説h26
(みだらな性行為及びわいせつな行為の禁止)
第 34 条何人も、次に掲げる行為を行ってはならない。
(1)青少年に金品その他の財産上の利益、役務若しくは職務を供与し、又はこれらを供与する約束で、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと(児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成11 年法律第52号)第2条第2項に該当するものを除く。)
(2)専ら性的欲望を満足させる目的で、青少年を威迫し、欺き、又は困惑させて、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと。
(3)性行為又はわいせつな行為を行うことの周旋を受け、青少年に対し当該周旋に係る性行為又はわいせつな行為を行うこと。
(4)青少年に売春若しくは刑罰法令に触れる行為を行わせる目的又は青少年にこれらの行為を行わせるおそれのある者に引き渡す目的で、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと。
旧第18 条繰下[平成3年条例第42 号]・旧第23 条繰下
一部改正[平成15 年条例第18 号]・旧第25条繰下[平成17 年条例第110号]
旧第28 条繰下一部改正[平成23 年条例第10 号]

【趣旨】
性の商品化が進み、性に関する意識が大きく変化する中で、出会い系サイトなどの利用により、少女買春など性風俗に安易に関わる青少年と、その青少年の性を、欲望の対象として取り扱う大人の背徳的な行為が深刻な社会問題となっている。
本条は、このような実態に鑑み、青少年の性を弄ぶ心ない大人から青少年を保護し、行為者の社会的責任を追及するとともに、青少年に正しい性意識を持たせる一助とするため設けられたものである。
なお、運用に当たっては、プライバシーその他の人権を不当に侵害することのないよう、取り締まりの対象行為を、その動機や手段において社会的に非難を浴びるような四つの性的行為に限定している。
【解説】
青少年に対し、青少年の健全な成長を阻害するようなみだらな性行為やわいせつな行為を行うことを禁止するものであり、この規定に違反すると、第47 条の規定により、2 年以下の懲役又は100 万円以下の罰金に処せられる。この淫行規定については、青少年を性の欲望の対象として取扱う大人の背徳的な行為を処罰する規定であり、実効性をより高めるため、平成20年の改正で罰則を条例で定め得る上限まで強化を図った。
行為の相手方である青少年の同意又は承諾がある場合でも本条は成立するが、婚姻又はこれに準じる真摯な交際関係にある青少年との間で行なわれる性的行為を含む趣旨ではない。
青少年の性的行為に関する法令については、刑法、児童福祉法及び売春防止法、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律等がある。
しかし、刑法では、13 歳未満の女子に姦淫した行為には強姦罪が、13 歳未満の青少年に対してのわいせつな行為については強制わいせつ罪が、暴行又は脅迫を用いなくとも適用されるが、13歳以上の青少年に対しては、暴行又は脅迫を伴う場合にのみ適用されるなど、本条が設定されるまでは、13歳以上の青少年に対するみだらな性行為やわいせつな行為については、法律上の規制が及ばず、青少年の健全育成上の盲点となっていた。
また、売春防止法では、売春を禁止し、人を売春の相手方となるよう勧誘、あっ旋、あるいは売春を行う場所を提供したもの等には罰則が適用されるが、売春の相手方には罰則規定(禁止規定はある)はない。
児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律では、児童(18歳未満の者)に対し、対償を供与し又は供与の約束をして性交等を行なう行為等と規定し、経済的対価が前提とされていることから、対償を伴わない行為については適用されない。
児童福祉法では、児童に淫行させる行為を対象としているが、児童に淫行させる行為とは、「行為者が児童をして第3 者と淫行させる行為のみならず、行為者が児童をして行為者自身と淫行させる行為を含むと解する。」と最高裁決定がなされたことにより、行為者も処罰の対象となったが、「淫行させる行為」の内容が、個々の場合で判断されることから、必ずしも処罰の対象となるとは限らない。
このような法律の隙間を埋めるために、本条が定められたものである。なお、平成11年11月に施行された「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」の成立により、この法律と重複する部分については失効している。
ア 「何人も」とは、府民はもとより、旅行者や滞在者を含み、また成人であるか未成年であるかを問わず、現に大阪府内にいるすべての者をいう。なお、行為者が青少年の場合でも、本条の違反に該当するが、第54 条の規定により罰則は適用されない。
イ 「してはならない」とは、青少年を相手に、性行為やわいせつな行為を行うことを一切禁止しているものである。また、性行為等の相手方が青少年であることを知らないで行った場合についても、当該青少年の年齢を知らないことを理由として処罰を免れるものではない。
1 第1号
青少年に金品等を提供し又は提供する約束で、青少年を相手として性行為又はわいせつな行為を行うことを禁止するものである。
ア 「金品」とは、金銭や物品をいう。
イ 「その他財産上の利益」とは、動産・不動産・債権の譲渡、債務の免除、飲食の提供などをいう。
ウ 「役務」とは、一定の労力やサービスを提供することであり、例えば、仕事を紹介・斡旋したり、タレントに会わせることなどが該当する。
エ 「職務」とは、自らの所で当該青少年を雇用し、仕事を与えることをいう。
オ 「供与」とは、財産上の利益等を相手方に移転する一切の行為をいう。供与又は供与を約束する相手方は、必ずしも性行為等の相手方となる青少年に限定されない。
カ 「約束で」とは、行為者の申出に対する青少年の黙示の認容で足り、その約束が結果的に履行されたか否かは問わない。
キ 「性行為」とは、性交のほか性交類似行為も含まれる。
ク 「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激興奮せしめたり、その露骨な表現によって健全な常識のある一般社会人に対し、性的に廉恥嫌悪の情を起こさせる行為をいう。
典型的なものとして、性器に指で触れる行為や乳房を弄ぶ行為、キスなどの接触行為が典型的であるが、裸にして写真を撮る行為、陰部を露出させる行為など、接触行為以外のものでも該当する。
2 第2号
性的欲望を満足させるため、心身ともに未熟な青少年を、正常な判断を行わせないような状態において、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うことを禁止するものである。
ア 「専ら」とは、概ね7割ないし8割程度以上をいうが、「専ら」に該当するかは、当該者の行為の態様、動機などを総合的に勘案することになる。
イ 「満足させる目的で」とは、行為者自らだけでなく、第三者の性的欲望についても含めるものである。
ウ 「威迫し」とは、暴行、脅迫に至らない程度の言語、動作、態度等により心理的威圧を加え、相手方に不安の念を抱かせることをいう。例えば、暴力団の構成員であると言ってすごむことなどが挙げられる。
エ 「欺き」とは、嘘を言って相手方を錯誤に陥らしめ、又は真実を隠して錯誤に陥らしめる行為をいう。例えば、婚姻をするつもりはないのにもかかわらず婚姻をするつもりであると言うことなどをいう。
オ 「困惑させて」とは、立場を利用したり、言語や態度により相手方を惑い困らせることをいう。例えば、雇用や金銭融通の恩義その他義理人情の機微につけ込むことや、職場の上司、教師などの立場を利用することにより、青少年が拒否の意思表示をできなくすることなどをいう。

「リツイート」で摘発、児童ポルノ以外でも?

 二番煎じで出遅れてますが朝日の取材意図は「意外」「衝撃」というところにあるようなんですけど、弁護士は「当然」という反応。
 名誉毀損なんかは、「こんなことは無いと思う」とか反論のコメントを付けておけば希釈される可能性がありますけど、児童ポルノは救いようがない。

http://digital.asahi.com/articles/ASGCZ5QKJGCZULOB00N.html
ツイッター上に投稿された女児のわいせつな画像をリツイート(転載)した男を、神奈川県警が書類送検した事件。投稿者だけでなく、他人の投稿を転載した者も刑事処罰の対象に含めようとする姿勢に、ユーザーらには衝撃が走った。

 児童ポルノ問題に詳しい奥村徹弁護士は「児童のわいせつ画像が次々にリツイートされると、全世界に拡散して永遠にネット上に残る。こうした手に負えない状況に警鐘を鳴らす狙いがあったのだろう。妥当な判断だ」と話す。

 11月21日の送検の容疑は児童買春・児童ポルノ禁止法で違法と定める「公然陳列」。故意に不特定多数の人が見られる状態にしたときに成り立ち、5年以下の懲役、500万円以下の罰金という刑の重い罪だ。

 最初に投稿した男は別の女性風の名前の「裏アカウント」でリツイート。「多くの人の反応を見たかった」と供述しているという。それをさらに別の男らがリツイートしていた。県警によると、画像を最初に投稿した者の立件例は過去にあったが、転載した者にまで広げて書類送検したのは全国で初めてだった。
警察庁から委託を受け、ネット上を監視するインターネット・ホットラインセンターによると、昨年寄せられた児童ポルノの公然陳列に関する違法情報は3056件で、全体の約1割を占めた。今年は昨年の件数を上回るペースだという。

 日本はこれまで児童ポルノへの規制が甘いとされ、「児童ポルノ大国」として批判されてきた。今年の法改正で、個人の性的好奇心を満たす目的で児童ポルノ画像を持つ「単純所持」も禁じて罰則を設けるなど、規制強化の流れが続く。ただし、漫画やアニメは処罰の対象外だ。

 ツイッターには世界で1日平均約5億件の投稿がある。管理するツイッター社は表現の自由の観点のもと、一般的な性的なツイートは違反としていないものの、児童ポルノは厳しく禁止。見つけ次第削除し、米国の児童ポルノ取り締まり機関に通報する。そこから各国の取り締まり機関にも連絡がいく。また、児童ポルノ画像を見つけたユーザーからも報告してもらっている。「残念ながら対策が完璧とは言えないが、違反を見つけた場合の報告方法をより簡単にするなど工夫している。警察とも相談し、より良い解決法を探っている」と担当者はコメントする。

 ツイッター上などでは今回の送検について「やりすぎではないか」「今後他の罪に乱用されないのか」などと心配する声が見られた。だが、捜査幹部は「今後も同様の行為をみつければ捜査していく」と話す。