児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

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児童に2条3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これをひそかに撮影するなどして児童ポルノを製造したという事実について、当該行為が同法7条4項の児童ポルノ製造罪にも該当するときに、同条5項を適用することの可否(最判令和6年5月21日)

 強制わいせつ罪・強制性交に伴う撮影行為の罪名が争点になりました。
 児童ポルノ製造罪の法文はこういう構成になっていて、4項は「前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ」という法文で、5項は「前二項に規定するもののほか、ひそかに」という法文なので、姿態を取らせていれば盗撮でも4項が適用されるはずで、ほとんどそう処理されている。

第七条(児童ポルノ所持、提供等)
3前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
5前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

 しかし、5項で起訴・判決されているものも少なからずあって、強制性交罪・強制わいせつ罪の長期実刑の事案も多く
神戸 地裁 尼崎 H28.9.7
東京 地裁 H28.10.19
新潟 地裁 H28.11.4
奈良 地裁 葛城 H29.3.16
東京 高裁 H29.3.16
津 地裁 伊勢 H29.7.10
熊本 地裁 H29.10.20
青森 地裁 八戸 H30.1.25
水戸 地裁 土浦 H30.8.3
福島 地裁 会津若松 H30.12.21
大津 地裁 H31.1.24
水戸 地裁 H31.3.20
名古屋 地裁 R01.8.21
東京 地裁 R02.3.2
福岡 地裁 R02.3.3
津 地裁 R2.6.17
福岡 地裁 R03.5.19
熊本 地裁 八代 R03.6.4
福岡 地裁 R03.6.9
宇都宮 地裁 R03.6.16
横浜 地裁 R03.6.22
千葉 地裁 R03.11.4
京都 地裁 R03.11.26
静岡 地裁 浜松 R03.12.17
奈良 地裁 R04.7.14
東京 地裁 R04.8.30
奈良 地裁 R04.10.20
神戸 姫路 R05.3.23
札幌 地裁 R1.11.14
広島 地裁 R2.3.9
札幌 地裁 R5.2.16
名古屋 地裁 R5.12.7
東京 地裁 立川 R05.1.20
大阪 地裁 堺 R06.5.1

大阪高等裁判所令和4年(う)第758号同5年1月24日判決・判例タイムズ1512号136頁」(原審奈良地裁R04.7.14)が原判決を厳しく非難した。
 それに対して、そんなに目くじら立てなくてもいいじゃんという高裁判例が大阪・大阪・東京・東京と4つくらい相次いで、判例変更になりました。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=92995
事件名
 強制わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、強制性交等未遂、強制性交等被告事件
裁判年月日
 令和6年5月21日
法廷名
最高裁判所第三小法廷
原審裁判所名
大阪高等裁判所
原審裁判年月日
 令和5年7月27日
判示事項
 児童に児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律2条3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これをひそかに撮影するなどして児童ポルノを製造したという事実について、当該行為が同法7条4項の児童ポルノ製造罪にも該当するときに、同条5項を適用することの可否

令和5年(あ)第1032号強制わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為
等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、強制性交等未遂、強制性交等被告事件
令和6年5月21日第三小法廷判決
主 文
本件上告を棄却する。
当審における未決勾留日数中170日を本刑に算入する。
理 由
1弁護人奥村徹の上告趣意のうち、大阪高等裁判所令和4年(う)第758号同5年1月24日判決・判例タイムズ1512号136頁を引用して判例違反をいう点について
原判決は、就寝中の被害児童(当時10歳)に対する強制わいせつ、強制性交等未遂及び強制性交等の各犯行の機会に同児童に児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)2条3項各号のいずれかに掲げる姿態(以下、単に「姿態」という。)をとらせ、これをひそかに撮影するなどして児童ポルノを製造したという各児童ポルノ製造(以下「本件各児童ポルノ製造」という。)の事実について同法7条5項を適用した第1審判決を是認した。
この判断は、児童に対する強制わいせつ、準強制わいせつ及び強制性交等の各犯行の機会に同児童に姿態をとらせ、これを撮影するなどして児童ポルノを製造した場合には、児童が就寝中等の事情により撮影の事実を認識していなくても、児童ポルノ法7条4項の児童ポルノ製造罪が成立し、同条5項は適用されないとした所論引用の判例と相反する判断をしたものというべきである。
しかしながら、児童ポルノ法7条5項が、ひそかに児童の姿態を撮影するなどして児童ポルノを製造するという行為態様の違法性の高さに鑑み、同条3項及び4項の各児童ポルノ製造に加えて、処罰対象となる児童ポルノ製造の範囲を拡大するために制定されたという立法の趣旨及び経緯、並びに、同条4項、5項の各児童ポルノ製造罪の保護法益及び法定刑に照らせば、児童に姿態をとらせ、これをひそかに撮影するなどして児童ポルノを製造したという事実について、当該行為が同条4項の児童ポルノ製造罪にも該当するとしても、なお同条5項の児童ポルノ製造罪が成立し、同罪で公訴が提起された場合、裁判所は、同項を適用することができると解するのが相当である。そのように解さなければ、事案によっては、同罪で公訴を提起した検察官が同条4項の児童ポルノ製造罪の不成立の証明を、被告人がその成立の反証を志向するなど、当事者双方に不自然な訴訟活動を行わせることになりかねず、さらには、ひそかに児童の姿態を撮影するなどして児童ポルノを製造したことは証拠上明らかであるのに、裁判所が同条5項を適用することができないといった不合理な事態になりかねない。同項にいう「前2項に規定するもののほか」との文言は、以上の解釈を妨げるものではない。
よって、本件各児童ポルノ製造の事実について児童ポルノ法7条5項を適用した第1審判決を是認した原判断は正当である。
したがって、刑訴法410条2項により所論引用の判例を変更し、原判決を維持するのを相当と認めるから、所論の判例違反は、結局、原判決破棄の理由にならない。
2その余の上告趣意について
弁護人奥村徹の上告趣意のうち、その余の判例違反をいう点は、事案を異にする判例を引用するものであって本件に適切でないか、引用の判例が所論のような趣旨を示したものではないから前提を欠くものであり、その余は、単なる法令違反、量刑不当の主張であって、刑訴法405条の上告理由に当たらない。
3よって、刑訴法408条、刑法21条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官今崎幸彦裁判官宇賀克也裁判官林道晴裁判官渡惠理子)

 奥村はかつて「「前2項に規定するもののほか」と規定されたのは立法のミスであってこの文言に特段の意味はないとした上で,法7条5項の罪と他の児童ポルノ製造の罪との関係は前者が後者の特別法の関係だ」と主張したことがあって、大阪高裁で屁理屈扱いされたのだが、最判令和6年5月21日で採用されることになった。

阪高平成28年10月26日宣告 
強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
3 第10,第12及び第13の各2の事実における法令適用の誤りの主張について
 論旨は,第10,第12及び第13の各2の製造行為は,いずれも盗撮によるものであるから,法7条4項の製造罪ではなく,同条5項の製造罪が成立するのに,同条4項を適用した原判決には,法令適用の誤りがある,というものである。
 しかしながら,法7条5項は「前2項に規定するもののほか」と規定されているから,同条4項の罪が成立する場合には同条5項の罪は成立しないことが,法文上明らかである。所論は,法7条5項に「前2項に規定するもののほか」と規定されたのは立法のミスであってこの文言に特段の意味はないとした上で,法7条5項の罪と他の児童ポルノ製造の罪との関係は前者が後者の特別法の関係だと主張する。しかし,法7条5項の罪が追加された法改正の趣旨を考慮しても所論のように「前2項に規定するもののほか」に意味がないと解する必要はなく,法7条5項の罪が特別法の関係にあるとの所論は,独自の見解であって,採用できない。いずれも法7条4項の罪が成立しているとした原判決の法令適用に誤りはない。

 大阪高裁r5.1.24(判タ1512号)は理論的には正しいんだか、現場の評判が悪くて、即座に反対の東京高裁R5.6.16(判タ1514号108頁)が掲載された。 

阪高裁令5.1.24判決_判タ_1512号_136頁
児童ポルノの姿態をとらせ製造罪とひそかに製造罪の関係
対象事件|令和5年1月24日判決大阪高等裁判所第5 刑事部令和4 年(う)第758 号強制性交等,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,強制わいせつ,準強制わいせつ被告事件
裁判結果|破棄自判,確定
原  審|奈良地方裁判所令和3年(わ)第422号,令和3年(わ)第454号,令和4年(わ)第37号,令和4年(わ)第79号令和4年7月14日判決
参照条文|児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7 条4 項,5 項
判例掲載データベース|判例秘書INTERNETTKC ローライブラリーWestlaw JapanD1-Law.com判例タイムズアーカイブ
[判決要旨]
児童が就寝中等の事情により撮影の事実を認識していなくても,行為者が姿態をとらせて撮影することで児童ポルノを製造した場合には,姿態をとらせ製造罪が成立し,ひそかに製造罪は適用されない。
[解説]
本件は,被告人が,就寝中等の複数の男子児童に対し,その陰茎を露出させるなどしてわいせつ行為や口腔性交をし,それぞれの機会に動画撮影をして児童ポルノを製造するなどした事案である。原審では事実関係に争いはなく,原判決は,公訴事実のとおり,被告人が,就寝中の各被害児童の下着をずらして直接陰茎を触るなどのわいせつ行為をしたり,又は,児童の陰茎を自己の口腔内に入れて口腔性交をしたりし,それぞれの機会に,ひそかに,児童の陰茎を露出する姿態,その陰茎を手指で触る姿態,又は,児童の陰茎を口腔内に入れる姿態をとらせ,動画撮影して保存し,児童ポルノを製造したなどと事実を認定し,そのうち児童ポルノ製造罪については,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下,法律名の改正前後を問わず「児童ポルノ法」という。)7条5項等を適用するなどして,起訴状どおり,ひそかに製造罪を適用するなどした(ただし,被害児童が就寝中等ではなかった各事実については,公訴事実のとおり,姿態をとらせ製造罪を認定した。)。これに対し,被告人が控訴し,控訴審の弁護人が多岐にわたる主張をしたが,その中で,原判決がひそかに製造罪の成立を認めた事実については姿態をとらせ製造罪が成立するとし,法令適用の誤りがあるなどと主張した所論につき,本判決は,正しいものと判断した。児童ポルノ法は,これまで数度の改正がなされており,その中で,姿態をとらせ製造罪は,平成16 年法律第106 号により新設された。「姿態をとらせ」の意義については,行為者の言動等により,当該児童が当該姿態をとるに至ったことを言い,強制によることを要しないとされており(島戸純「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律」現代刑事法66 号64 頁),行為者の言動等によって児童が姿態をとるに至ったのであれば,児童において,熟睡等により,自らが姿態をとるに至ったことや撮影されていることを認識していなくても,「姿態をとらせ」に該当するものと考えられる。こうした理解に立ち,本件と同様の事案について,姿態をとらせ製造罪が成立すると判断していた裁判例もあった。そうした中,ひそかに製造罪は,平成26 年法律第79 号により,いわゆる盗撮による児童ポルノの製造行為であっても,通常の生活の中で誰もが被害児童になり得ることや,発覚しにくい方法で行っている点で巧妙であるなど,行為態様の点で違法性が高く,児童の尊厳を害する行為であるとともに,児童を性的対象とする風潮が助長され,抽象的一般的な児童の人格権を害する行為であるなどとして,新設された(坪井麻友美「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」法曹時報66 巻11 号55 頁)。この改正経緯において,従前からあった構成要件の成立範囲を変えるものではなく,新たに処罰範囲を拡大する趣旨で改正されたものとされており(第186回国会衆議院法務委員会第21 号平成26 年6 月4 日。高木和博「真に児童の権利の保護に必要な規制を目指して―児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部改正―」立法と調査357号40頁参照),その趣旨を明確にするため,法文上も「前2 項に規定するもののほか」と規定されたのであるから,提供目的製造罪(児童ポルノ法7 条3 項)と姿態をとらせ製造罪(同条4 項)のいずれにも該当しない場合のみ,ひそかに製造罪が成立するものと考えられる(坪井・前掲57 頁)。実務上,本件と同様の事案は少なくないが,第1 審段階においては,当判決と同様の理解に立つ裁判例も,本件の原審と同様の理解をする裁判例も,混在しているとみられる。控訴審段階においては,姿態をとらせ製造罪を認定した原判決に対し,控訴した弁護人によるひそかに製造罪が成立する旨の主張を排斥する理由において,本判決と同様の説示をした裁判例がある(大阪高判平28.10.26 公刊物未登載。ただし2 項破棄)。本判決は,原判決を破棄したことでその趣旨を明確にしており,今後の実務の参考になるものと考えられる。(関係人仮名)

[判決]
主    文
原判決を破棄する。被告人を懲役13 年に処する。原審における未決勾留日数中160日をその刑に算入する。
理由
本件控訴の趣意は,弁護人奥村徹作成の控訴趣意書に記載のとおりであるから,これを引用するが,論旨は,理由齟齬,法令適用の誤り及び量刑不当である。そこで,記録を調査し,当審における事実の取調べの結果も併せて検討する
・・・・
しかし,同法7 条5 項の規定する児童ポルノのひそかに製造行為とは,隠しカメラの設置など描写の対象となる児童に知られることがないような態様による盗撮の手段で児童ポルノを製造する行為を指すと解されるが,同項が「前2 項に規定するもののほか」と規定していることや同条項の改正経緯に照らせば,児童が就寝中等の事情により撮影の事実を認識していなくても,行為者が姿態をとらせた場合には,姿態をとらせ製造罪(同条4 項)が成立し,ひそかに製造罪(同条5 項)は適用されないと解される。したがって,検察官は,本来,上記各事実をいずれも姿態をとらせ製造罪として起訴すべきところを,誤ってひそかに製造罪が成立すると解し,同一機会の各事実と合わせると姿態をとらせたこととなる事実を記載しながら,「ひそかに」との文言を付して公訴事実を構成し,罰条には児童買春・児童ポルノ処罰法7 条5 項を上げた起訴状を提出し,原判決もその誤りを看過して,同様の事実認定をした上で,上記のとおりの適条をしたことが明らかである。このような原判決の判断は,判文自体から明らかな理由齟齬とまではいえないにせよ,法令の適用に誤りがある旨の所論の指摘は正しい。さらに,検察官のみならず,被告人や原審弁護人も,上記各事実に関してひそかに製造罪としての責任を問われているとの誤信の下で原審公判に
臨んでいたものとうかがえるから,第1 審裁判所としては,関係証拠に照らして認定できる事実に正しい適条をするだけではなく,検察官に釈明を求め,その回答如何によっては訴因変更請求を促すなどして,被告人及び原審弁護人の防御に遺漏がないよう手続を尽くすべきであったのに,原審はこうした手続を何ら行っていない。姿態をとらせ製造罪とひそかに製造罪とでは,法定刑は同じとはいえ,児童ポルノ製造罪における「姿態をとらせ」あるいは「ひそかに」という要件は,処罰根拠をなす重要部分に当たるから,この点について被告人や原審弁護人が誤解をしたままでは十分な防御の機会が与えられたと評価できず,原審の釈明義務違反は,判決に影響を及ぼすとみるべきである。以上から,原判決には,所論指摘の法令適用の誤り,さらには,訴訟手続の法令違反があり,これが判決に影響を及ぼすことは明らかであるから,論旨は理由がある。
原審における検察官の求刑:懲役19 年)(裁判長裁判官坪井祐子,裁判官今井輝幸,裁判官奥山雅哉)

住居侵入+強制わいせつ罪(176条後段)は牽連犯、住居侵入+姿態をとらせて製造罪は牽連犯、住居侵入+強制わいせつ罪(176条後段)+姿態をとらせて製造罪はかすがい現象で科刑上一罪(東京高裁r5.10.12)

 控訴理由は被告人に有利な構成になっています。

東京高裁令和5年10月12日 
判    決
 上記の者に対する、住居侵入、強制わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下、「児童ポルノ法」という。)違反、準強制わいせつ、強制わいせつ未遂、住居侵入・強制わいせつ(変更後の訴因 住居侵入・強制わいせつ・児童ポルノ法違反)被告事件について、令和年月日地方裁判所支部が言い渡した判決に対し、被告人から控訴の申立てがあったので、当裁判所は検察官大澤新一出席の上審理し、次のとおり判決する。
理    由
 本件控訴の趣意は、弁護人奥村徹作成の控訴趣意書及び控訴趣意補充書2通に記載されたとおりであり、(1)理由齟齬及び理由不備、(2)訴訟手続の法令違反、(3)法令適用の誤り、(4)量刑不当の主張である。

第3 訴訟手続の法令違反の論旨について
 1 論旨
   第3事件における当初の訴因は住居侵入とBに対する強制わいせつであったところ、原審検察官は、そこにBの姿態を撮影した児童ポルノ製造を付加することを内容とする訴因変更を請求し、原審裁判所はこれを許可した。
   しかし、住居侵入罪と児童ポルノ製造罪は牽連犯の関係にはないから、この訴因変更許可は違法である。
 2 当裁判所の判断
   原審記録によれば、所論が指摘するとおり、第3事件について、原審検察官が、当初の訴因である住居侵入とBに対する強制わいせつの事実に関し、そこにBの姿態を撮影した児童ポルノ製造の事実を付加することを内容とする訴因変更を請求し、これに対し、原審弁護人は、異議なしとの意見を述べ、原審裁判所は、前記検察官の訴因変更請求について、同請求を許可する旨の決定をしたことが認められる。これは、原審検察官と原審裁判所がいずれも、住居侵入罪及び児童ポルノ製造罪が牽連犯関係にあり、住居侵入罪を介して、当初起訴されていた強制わいせつ罪を含めた全体が科刑上一罪となる、いわゆる「かすがい現象」を生じると判断し、その罪数処理を前提とした取扱いをしたものと解される。
   そして、後記の法令の適用の誤りの論旨で説示するとおり、第3、第4事件において、いずれも、住居侵入罪と児童ポルノ製造罪を牽連犯とした原判決の判断、そして、同一の住居侵入罪を介して各々の強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪を含む全体を科刑上一罪とした原判決の判断に誤りはない。したがって、原審裁判所が、前記の判断のもと、前記訴因変更請求を許可する決定をしたことにつき、何ら違法はないというべきである。
   以上によれば、訴訟手続の法令違反の論旨は理由がない。
第4 法令適用の誤りの論旨について
 1 論旨
  (1) 住居侵入罪と強制わいせつ罪の関係について
    住居侵入罪と強制わいせつ罪との間に牽連関係は認められないから、原判決が、第1ないし第4、第6事件において、各々の住居侵入罪と強制わいせつ罪につき牽連犯が成立するとしたことは、法令の適用を誤っている。
  (2) 住居侵入罪と児童ポルノ製造罪の関係について
    住居侵入罪と児童ポルノ製造罪の間も牽連関係は認められないから、原判決が、第3、第4事件において、各々の住居侵入罪と児童ポルノ製造罪につき牽連犯が成立するとしたことは、法令の適用を誤っている。
  (3) いわゆるかすがい現象について
    かすがい現象によって処断刑が軽くなる罪数処理は違法であり、原判決が、第2事件において、科刑上一罪としたことは法令の適用を誤っている。
    また、仮に住居侵入罪と強制わいせつ罪、住居侵入罪と児童ポルノ製造罪との間で牽連犯が成立するとしても、同様の理由から、原判決が、第3、第4事件において、科刑上一罪の処理をしたことは、法令の適用を誤っている。
 2 当裁判所の判断
  (1) 住居侵入罪と強制わいせつ罪の関係について
    所論の指摘は多岐にわたるが、その主な論拠は、①両罪に客観的牽連性が認められない、②牽連犯の規定そのものに合理性が乏しく廃止論が根強い上、かすがい現象で処罰範囲が限定されることになる解釈は、性犯罪の厳罰化が要請される現在の価値観では維持できないはずである、③住居侵入罪と強制わいせつ罪を牽連犯とする最高裁判例はなく、住居侵入罪と強制性交等罪を牽連犯としている判例も現在では合理性を欠いている、④特に第3事件では、「正当な理由がないのに」侵入したという認定に留まり、住居侵入罪と強制わいせつ罪の間の牽連性が示されていない、⑤両罪の被害者が異なる、などというものである。
    そこで検討するに、いわゆる科刑上一罪(刑法54条1項)の実質的根拠は、社会通念上一体の事実と評価できる数個の犯罪につき、それに対する刑罰の適用を1回に留めることが刑罰適用上の合目的要請等の観点から相当であるという点にあり、複数個の行為の間に牽連関係があるといえるためには、罪質上、通例その一方が他方の手段又は結果となるという関係があることに加えて、具体的な場面においてもかかる関係が認められることが必要になるというべきである。
    これを本件についてみると、住居に侵入して居住者に対し強制わいせつに及ぶ犯罪類型があるから、性質上、住居侵入が強制わいせつの手段として通常用いられる関係があるということができる。そして、被告人は、第1ないし第4、第6事件において、各々の住居侵入に続けて侵入先で強制わいせつ又は準強制わいせつに及んでおり(ただし、第2(2)事件については未遂)、各事件において、実際にも住居侵入を手段として強制わいせつ等の結果を生じた(又は生じさせようとした)ことが明らかである。そうすると、本件各事件の事実関係の下では、これらの事件について住居侵入罪と強制わいせつ罪(又は同未遂罪)又は準強制わいせつ罪の間に牽連性があるとした原判決の判断に誤りはない。
    弁護人は、前記①の論拠として、強制わいせつ罪は強制性交等罪と比べて屋内で行われる割合が圧倒的に少ないから、侵入罪との牽連関係が低い旨主張するが、屋外で実行する形態の強制わいせつ罪が相応の比率に上るとしても、侵入先の屋内でこれを行う犯罪類型が存在することが否定されるわけではなく、所論は採用し難い。前記②について、牽連犯の成立範囲を限定的に解すべきかどうかはともかく、両罪に牽連性があるとの判断が誤りとはいえないことは前記のとおりであるし、かすがい現象で不都合が生じ得るとしても、そのことが直ちに牽連犯の成立を否定する理由にはならないというべきである。前記③について、住居侵入罪と強制わいせつ罪を牽連犯と判示した最高裁判例がないことは所論が指摘するとおりであるが、他方で、下級審の裁判例は多数に上り、また、最高裁判所が罪数処理の誤りを理由に破棄した例は見当たらないから、原判決が判例やその趣旨に違反するということはできない。前記④について、理由齟齬及び理由不備の項で説示したとおり、罪数に関する判断は「罪となるべき事実」の記載ではなく「法令の適用」の中で示すものであるし、罪となるべき事実の記載として、「正当な理由がないのに」以上に具体的な目的を示すことが常に必要とされるわけでもない。また、「けんれん正当な理由がない」という中には、「わいせつ行為をする目的」も含まれると解することも可能である。そして、原判決は、第3事件の法令の適用中で両罪が牽連犯になることを明らかにしている上、実態としても、被告人がわいせつ目的で住居へ侵入した旨を自認し、現に原判示のとおり、侵入した住居内で強制わいせつ行為に及んだことからすると、牽連性を認めたことに誤りはない。前記⑤について、被害者の同一性が牽連犯の成立要件となるわけではないから、所論の根拠にならない。
    以上のとおり、前記各所論はいずれも理由がない。
  (2) 住居侵入と児童ポルノ製造の関係について
    所論は、①特に児童ポルノ法7条4項(特定の姿態をとらせての製造)の罪については客観的に住居侵入罪との牽連性が認められない、②本件における侵入行為は、児童ポルノ製造行為を目的としていない、③判例上、児童ポルノに関する罪は、他の罪とは牽連犯にならないとされている、④住居侵入罪と児童ポルノ製造罪を牽連犯と認めた判例がないのに対し、これを否定した裁判例が複数ある、⑤牽連犯の成立を認めると、一事不再理効の範囲が広がりすぎる、などというものである。
    そこで検討するに、児童の現在する住居等に侵入した上で、同所において、児童に性欲を興奮させる等の姿態をとらせて撮影等をするという犯罪類型は現実に存在しており、その場合、罪質上、住居侵入が児童ポルノ製造の手段として不可欠な関係が認められる。そして、被告人は、第4事件については元々幼児の裸体を撮影する目的で住居に侵入した旨自認するほか、第3事件も概ね共通する態様で敢行しており、特異な事情が事後的に生じるなどして撮影に至ったわけではないから、いずれの事件についても住居侵入を手段として児童ポルノ製造の犯行を行ったものということができる。そうすると、本件各事件の事実関係の下では、これらの事件について住居侵入罪と児童ポルノ製造罪の間に牽連性があるとした原判決の判断に誤りはない。
    以上によれば、弁護人の前記①及び②の主張は採用できない。前記③について、所論指摘の事例は、児童ポルノ製造罪につき住居侵入以外の罪との関係で個別に牽連犯の成否を検討したもので、児童ポルノ製造罪がどのような罪とも一律に牽連犯にならない旨を判示したものでないことは明白である。前記④について、住居侵入罪と児童ポルノ製造罪の罪数について明示的な判断をした最高裁判例がないことは前記(1)と同様である。また、下級審では、結論として両罪を牽連犯としなかった事例があることは認められるが、牽連犯の成否は前述のとおり個別の事情をも勘案して決すべきところ、前記各事例における詳細な事実関係は明らかでないから、両者の関係を併合罪とした前記下級審の罪数処理が本件の場合に必ずしも妥当するということはできないし、もとよりそれらの判断が何らかの拘束力を有するものでもない。
    以上のとおり、前記各所論はいずれも理由がない。
  (3) いわゆるかすがい現象について
    前記(1)でみたとおり、第2(1)及び(2)事件の住居侵入罪と準強制わいせつ罪及び強制わいせつ未遂罪をそれぞれ牽連犯とした原判決の判断に誤りはない。そして、第2(1)及び(2)事件の準強制わいせつ罪及び強制わいせつ未遂罪が併合罪の関係であるとしても、同一の住居侵入罪を介して全体が科刑上一罪となるとした原判決の判断にも誤りは認められない。
    また、前記(2)で説示したとおり、第3、第4事件において住居侵入罪と児童ポルノ製造罪を牽連犯とした原判決の判断にも誤りはなく、強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪が併合罪の関係にあるとしても、同一の住居侵入罪を介して各々の強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪を含む全体を科刑上一罪とした原判決の判断に誤りはない。
    所論は、①かすがい現象を認めると、新たな犯罪が加わるのに全体が科刑上一罪となる結果として処断刑が引き下げられるという不合理な事態が生じる、②児童ポルノ法7条4項の罪は、撮影者による事後の複製行為まで処罰範囲とするため、例えば、住居侵入をした上で強制わいせつと児童ポルノの製造(撮影行為)に及び、後に当該児童ポルノを複製して、このうちの複製行為のみで処罰された場合、かすがい現象により一罪となる強制わいせつが後から発覚しても起訴できないことになるなど、一事不再理効が予想外に広がり得る、などというものである。
    しかし、前記①については、原審における求刑や宣告刑等をみても、第2ないし第4事件が全体として科刑上一罪とされたことにより、かすがい現象を認めなかった場合に比べてそれぞれの処断刑の上限が下がったとはいえるが、そのことによる支障が生じたことは全くうかがわれない。また、かすがい現象で所論指摘の不均衡が生じる面がある点は否定できないにせよ、これを採用しない場合は、同一の行為について法的評価を異にしたり(併合罪の関係にある複数の行為のうち、一つについてのみ住居侵入罪との牽連関係を認める場合)、一つの住居侵入行為を複数回評価したり(併合罪の関係にある複数の行為について、いずれも一つの住居侵入罪と牽連関係を認める場合)といった別の問題に直面するから、かすがい現象がおよそ不合理で、採用の限りではないとまではいえない。
    次に、前記②については、やはり本件において所論のいうような問題が顕在化しているわけではない上に、強制わいせつ時点の撮影行為と、その後に時間を隔てて行われる複製行為とが必ずしも包括一罪と評価されるとは限らないから、所論の指摘する不合理性は、ただちにかすがい現象を否定すべき理由とはならない。
    所論はいずれも理由がない。
  (4) 小括
    以上によれば、原判決の罪数処理が格別不合理であるとは認められず、法令適用の誤りの論旨は理由がない。
      東京高等裁判所第2刑事部

          裁判長裁判官 大善文男
             裁判官 大野 洋
             裁判官 岡田龍太郎

「性的行為をしたことは間違いないが、相手は18歳と話して、現金を渡す約束もしていない」という弁解

 児童買春罪は、故意犯なので、「18歳未満と知りながら」が要件。対償供与約束+児童と知らなかったで犯罪不成立。
 「対償供与約束がなかった」と言ってしまうと青少年条例違反になって、過失でも処罰される

新潟県青少年健全育成条例
(みだらな性行為及びわいせつな行為の禁止)
第20条 何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年にわいせつな行為をさせてはならない。
3 何人も、青少年に第1項の行為を教え、又は見せてはならない。

第29条
5 第20条第1項、第2項又は第3項の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第1項又は第2項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。

[解説]
第6項の規定は、青少年の健全な育成を阻害するおそれが強く、当然社会的にも非難されるべき行為について、青少年の年齢を知らなかったとしても、そのことを理由に処罰を免れることができない旨を規定しているもので、青少年保護の実効性を確保しようとするものであるo
「ただし、過失がないときむとは、社会通念に照らし、通常可能な確認が適切に行れているか否かによって判断される。
具体的には、単に青少年の年齢、生年月日を尋ねただけ、あるいは身体を外観等からの判断だけでは足りず、自動車運転免許証、住民票等の公信力のある書面で確認するか、又は、保護者に問い合わせるなど客観的に通常可能とされるあらゆる方法を用いて確認している場合をいう

子ども家庭庁によれば、3号ポルノは「こどもの性的な部位(※)を含む画像等」のようです。

 子ども家庭庁によれば、3号ポルノは「こどもの性的な部位(※)を含む画像等」のようです。

3号ポルノの定義は、「こどもの性的な部位(※)を含む画像等」ではなく、「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの」であって下着姿も含みます。どうして「こどもの性的な部位(※)を含む画像等」に限定するのでしょうか。
 胸部に聴診器を当てているのは、2号ポルノの疑いがあります。
 公然と陳列した場合は、目的を問わず、公然陳列罪(~懲役5年)です。
 範囲を狭めても、2項提供罪と3項所持罪になります。

https://mainichi.jp/articles/20240507/k00/00m/040/262000c
保育園などがウェブサイトに園児が裸で写る画像を掲載し、第三者に悪用されるケースが相次いでいる問題で、こども家庭庁と文部科学省は7日、全国の保育園や幼稚園などに対し、こうした画像を掲載しないよう注意喚起する通知を出した。既に掲載している場合は至急、削除するよう求めた。

 この問題を巡っては、保育園や幼稚園など少なくとも135園が、ブログなどに園児が裸で写る画像を掲載していたことが毎日新聞の調査で判明している。撮影時の状況はプールでの水遊びや乾布摩擦、内科検診など。胸や性器など性的部位が露出している上、園児の顔が判別できる画像が大半だった。

第七条(児童ポルノ所持、提供等)
2児童ポルノを提供した者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
3前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
6児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
7前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。

https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/44fc1495/20240508_policies_hoiku_110.pdf

保育所等のホームページにおけるこどもの性的な部位を含む画像等の掲載等について
(注意喚起)
今般、保育所や幼稚園などのホームページにおいて掲載されていたこどもの性的な部位を含む画像が、第三者により性的な目的で使用される事例があるとの報道がなされています。
こどもの人格を尊重し、生涯にわたる人格形成の基礎を培う場である保育所、地域型保育事業所、認可外保育施設、認定こども園及び幼稚園(以下「保育所等」という。)において、施設のホームページにこどもの画像等を掲載するにあたっては、こどもの権利を守る観点から、十分な配慮が必要であり、性的な部位を含む画像等が掲載されるようなことは、あってはならないことです。
今般の事案も踏まえ、保育所等におけるこどもの性的な部位を含む画像等の掲載等について、下記のとおり注意喚起しますので、各都道府県等におかれては、内容について十分に御了知のうえ、域内の市町村への周知を行うとともに、域内の保育所等に対して、適切に注意喚起されるようお願いします。

保育所等において、こどもの性的な部位(※)を含む画像等を、ホームページ等に掲載するなどして不特定・多数の者が閲覧可能な状態にすることは、こどもの権利を守る観点から問題であるため、各保育所等において改めてホームページ等を確認し、そうした画像等が残っている場合には、至急削除をされたい。
(※) 性器・肛門・これらの周辺部、臀部又は胸部
〇 なお、「刑法の改正等に伴う保育士の欠格事由の追加等について」(令和5年7月13日こ成基第65号こども家庭庁成育局長通知)において、「正当な理由があって撮影されたものであっても、撮影者や掲載者の意図にかかわらず、わいせつな目的で利用される場合があることに十分に配慮し、その態様や閲覧可能な者の範囲等が適切なものとなるよう特に慎重に検討する必要がある」こと等を示しているところであり、不特定・多数の者が閲覧可能な状態にしないことはもとより、その保育所等のこどもの保護者に閲覧できる者が限定される場合等を含め、不適切な使用がなされないようにすること。
(別添)「刑法の改正等に伴う保育士の欠格事由の追加等について」(令和5年7月 13日成基第65号こども家庭庁成育局長通知)

わいせつ電磁的記録記録媒体陳列被告事件、性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律違反被告事件東京地裁令和5年9月14日

わいせつ電磁的記録記録媒体陳列被告事件、性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律違反被告事件東京地裁令和5年9月14日
「AV出演被害防止・救済法」「本法」とされています。

判例番号】 L07831161
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載
       主   文
 被告人Y1を懲役2年及び罰金150万円に、被告人合同会社Y2を罰金30万円に処する。
 被告人Y1においてその罰金を完納することができないときは、金1万円を1日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。
 被告人Y1に対し、この裁判が確定した日から3年間その懲役刑の執行を猶予する。
 被告人Y1から金876万3449円を追徴する。

       理   由

(罪となるべき事実)
第1 被告人Y1(以下「被告人Y1」という。)は、インターネット上の動画販売サイトを利用して、不特定多数のインターネット利用者にわいせつな電磁的記録である動画ファイルを公然と陳列しようと考え、別表記載のとおり、平成28年9月30日頃から令和4年9月19日頃までの間、29回にわたり、東京都品川区(以下略)の当時の被告人方において、男女の性交場面等を露骨に撮影したわいせつな電磁的記録である動画ファイル29点を、インターネットに接続したパーソナルコンピューターを用いて、「D」が管理するサーバーコンピューターにそれぞれ記録、保存させた上、令和4年10月20日までの間、不特定多数のインターネット利用者が、被告人が設定した代金を支払うことにより前記各動画の閲覧が可能な状態を設定し、もってわいせつな電磁的記録に係る記録媒体を公然と陳列した。
第2 被告人合同会社Y2(以下「被告会社」という。)は、千葉県市川市(以下略)に本店を置き、性行為映像制作物等の映像制作等を業とするもの、被告人Y1は、被告会社の代表社員として被告会社の業務全般を統括するものであるが、被告人Y1は、被告会社の業務に関し、
 1 令和4年9月1日、横浜市保土ケ谷区(以下略)「E」512号室において、
 (1)別紙秘匿目録記載のA(以下「A」という。)との間で性行為映像制作物への出演契約を締結しようとするに際し、あらかじめ、同人に対し、法令で定める事項を記載し又は記録した説明書面等を交付し又は提供しなかった
 (2)Aとの間で性行為映像制作物への出演契約を締結した際、速やかに、同人に対し、出演契約事項が記載され又は記録された出演契約書等を交付し又は提供しなかった
 2 令和4年9月19日、川崎市宮前区(以下略)「F」211号室において、
 (1)別紙秘匿目録記載のB(以下「B」という。)との間で、性行為映像制作物への出演契約を締結しようとするに際し、あらかじめ、同人に対し、法令で定める事項を記載し又は記録した説明書面等を交付し又は提供しなかった
 (2)Bとの間で性行為映像制作物への出演契約を締結した際、速やかに、同人に対し、出演契約事項が記載され又は記録された出演契約書等を交付し又は提供しなかった
 3 令和4年9月23日、東京都品川区(以下略)において、
 (1)別紙秘匿目録記載のC(以下「C」という。)との間で性行為映像制作物への出枝契約を締結しようとするに際し、あらかじめ、同人に対し、法令で定める事項を記載し又は記録した説明書面等を交付し又は提供しなかった
 (2)Cとの間で性行為映像制作物への出演契約を締結した際、速やかに、同人に対し、出演契約事項が記載され又は記録された出演契約書等を交付し又は提供しなかった。
(証拠の標目)
(法令の適用)
被告人Y1について
 罰条
  判示第1の行為
   包括して刑法175条1項前段
  判示第2の1(1)、第2の2(1)及び第2の3(1)の各行為
   いずれもAV出演被害防止・救済法22条1項2号、21条1号、5条1項
  判示第2の1(2)、第2の2(2)及び第2の3(2)の各行為
   いずれもAV出演被害防止・救済法22条1項2号、21条2号、6条
 刑種の選択
  判示第1の罪について
   懲役刑及び罰金刑を選択
  判示第2の1(1)ないし第2の3(2)の各罪について
   いずれも懲役刑及び罰金刑を選択
 併合罪の処理
  懲役刑について
   刑法45条前段、47条本文、10条(最も重い判示第1の罪の刑に法定の加重)
  罰金刑について
   刑法45条前段、48条2項(各罪所定の罰金の多額を合計)
 労役場留置
  刑法18条(金1万円を1日に換算)
 刑の全部執行猶予
  懲役刑について
   刑法25条1項
 追徴
  組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律16条1項本文、13条1項1号(判示第1の罪に係る犯罪収益のうち、主文掲記の追徴額は没収することができない。)
被告会社について
 罰条
  判示第2の1(1)、第2の2(1)及び第2の3(1)の各行為
   いずれもAV出演被害防止・救済法22条1項2号、21条1号、5条1項
 判示第2の1(2)、第2の2(2)及び第2の3(2)の各行為
   いずれもAV出演被害防止・救済法22条1項2号、21条2号、6条
 併合罪の処理
  刑法45条前段、48条2項(各罪所定の罰金の多額を合計)
(法令の適用に関する補足説明)
第1 争点等
 弁護人は、判示第2の各事実(以下「本件各事実」という。)に関し、AV出演被害防止・救済法(以下「本法」という。なお、本法の規定を引用する場合には、「法」と略称する。)5条1項、6条、21条、1号、同条2号、22条1項2号の各規定(以下、法5条1項を「本件説明義務規定」、法6条を「本件契約書等交付義務規定」といい、両者及びそれらの違反に対する罰則規定である法21条1号、同条2号及び22条1項2号を併せて「本件各規定」という。)は、憲法22条1項に違反して違憲無効ないし本件各事実に適用する限りで違憲無効であるため、本件各事実について被告人Y1及び被告会社は無罪である旨主張する。
 当裁判所は、本件各規定は、憲法22条1項に違反するものではなく、本件各事実への適用においても違憲とはいえず、本件各事実について被告人Y1及び被告会社はいずれも有罪であると判断したので、以下その理由を補足して説明する。
第2 本法の規定等
 1 本法は、性行為映像制作物の制作公表により出演者の心身及び私生活に将来にわたって取り返しの付かない重大な被害が生ずるおそれがあり、また、現に生じていることに鑑み、性行為映像制作物への出演契約に関し、その締結の前後を通じて出演者の性に関する自己決定権を保障し、併せてその心身の健康及び私生活の平穏その他の利益を保護するため、制作公表者が、出演契約を締結し、性行為映像制作物の制作公表を行うにあたって守るべき各種の規律を定めている。
 2 すなわち、制作公表者が出演者との間で出演契約を締結しようとするときは、出演契約書等の案を示して出演契約事項を説明し、また、法5条1項各号所定の事由について、説明書面等を交付等して説明しなければならず(法5条1項)、出演契約を締結した場合には、速やかに、当該出演者に対し、出演契約事項が記載等された出演契約書等を交付等しなければならない(法6条)。また、性行為映像制作物の撮影は、出演契約書等の交付等又は説明書面等の交付等のいずれか遅い日から一月を経過した後でなければ、行ってはならず(法7条1項)、性行為映像制作物の公表までの間には、出演者に対し、当該出演者の出演に係る映像であって公表を行うものを確認する機会を与えなければならない(法8条)。さらに、性行為映像制作物の公表は、その撮影が終了した日から四月を経過した後でなければ行ってはならない(法9条)。そして、制作公表者が法5条1項、6条の規定に違反したときは、出演者は出演契約を取り消すことができ(法11条)、法7条1項、8条、9条の規定の違反があった場合には、出演契約を無催告で解除することができる(法12条)上、性行為映像制作物の公表が行われてから一年を経過するまでは、出演者は、出演契約の任意解除等ができるものとされている(法13条1項)。
 その上で、制作公表者が、法5条1項に違反し、説明書面等を交付等しなかった場合には、六月以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科するとされ(法21条1号)、法6条に違反して、出演契約書等を交付等しなかった場合にも、同様に処罰される(法21条2号)。なお、上記各罰則についての両罰規定として法22条1項2号が定められている。
第3 本件各規定の合憲性
 1 憲法、22条1項は、狭義1における職業選択の自由のみならず、職業活動の自由も保障しているところ、職業の自由に対する規制措置は事情に応じて各種各様の形をとるため、その同項適合性を一律に論じることはできず、その適合性は、具体的な規制措置について、規制の目的、必要性、内容、これによって制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度を検討し、これらを比較考量した上で慎重に決定されなければならない。この場合、上記のような検討と考量をするのは、第一次的には立法府の権限と責務であり、裁判所としては、規制の目的が公共の福祉に合致するものと認められる以上、そのための規制措置の具体的内容及び必要性と合理性については、立法府の判断がその合理的裁量の範囲にとどまる限り、立法政策上の問題としてこれを尊重すべきものであるところ、その合理的裁量の範囲については、事の性質上おのずから広狭があり得る(最高裁昭和43年(行ツ)第120号同50年4月30日大法廷判決・民集29巻4号572頁参照)。
 2 本件説明義務規定は、制作公表者に対し、出演契約の締結に当たって、あらかじめ、出演者に対し、出演契約事項だけでなく、本法による出演契約の規制内容等(法5条1項1号)、撮影された映像により出演者が特定される可能性があること(同項3号)、出演契約に関する相談機関の名称及び連絡先(同項4号)等を記載等した書面等を交付等して説明することを義務付けている。これは、性行為映像制作物への出演が、出演者の心身及び私生活に将来にわたって取り返しの付かない重大な被害を生ぜしめるおそれがあることから、出演者が契約の内容や効果を十分に理解した上で契約締結の判断をできるようにし、また、説明書面等を交付等することで、契約締結後も、前記相談機関を含む第三者への相談等も含め、性行為映像制作物への出演について熟慮する機会を与えることで、出演者の性に関する自己決定権を保障する趣旨と解される。
 本件契約書等交付義務規定についても、前記性行為映像制作物への出演に伴うリスクの内容及び性質に鑑み、出演契約締結後に、出演者が契約の内容を確認できるようにするとともに、出演契約書等を見せながら前記相談機関を含む第三者に相談すること等も含め、性行為映像制作物への出演について熟慮する機会を与えることによって、出演者の性に関する自己決定権を保障する趣旨と解される。
 以上によれば、本件説明義務規定及び本件契約書等交付義務規定の上記各目的が、公共の福祉に合致することは明らかである。
 3(1)そこでまず、本件説明義務規定についてみると、その説明の対象となる事項(以下「説明事項」という。)は、出演契約事項のほか、出演契約締結を判断するに際し重要な事項であると認められ、出演契約の性質及び内容等に照らせば、前記目的のために、所定の事項を記載等した書面等を交付等して説明させることに合理性があることは明らかであり、説明事項の内容に照らせば、書面等を準備することも含め、説明それ自体の負担は限定的なものである。また、本件説明義務規定に違反して出演契約が締結された場合には、性行為映像制作物への出演が出演者の意に沿わないものとなりかねず、出演者に重大な被害を与える危険性があること等に照らせば、本法所定の罰則をもってその実効性を担保していることにも相応の必要性、合理性が認められる。
 (2)次に、本件契約書等交付義務規定についてみると、前記目的に照らし、所定の事項を記載した契約書等を交付させることに合理性があることは明らかであり、その負担も、本件のような規定がない場合であっても、契約の締結に伴って通常生じ得るものにすぎない。また、契約書等の交付がなかった場合には、契約の内容を十分確認することができず、性行為映像制作物への出演が出演者の意に沿わないものとなるおそれがあり、出演者に前記のとおり重大な被害を生ぜしめるおそれがあること等に照らせば、本法所定の罰則をもってその実効性を担保していることにも相応の必要性、合理性が認められる。
 4(1)ア 以上の各点に関し、弁護人は、法7条1項、9条及び13条の各規定に沿って性行為映像制作物の制作公表を行った場合に生じる制作公表者や出演者等に対する影響の大きさや、法7条1項及び9条によれば、本法施行日から5か月間は、性行為映像制作物の公表ができなくなり、その間、実質的に収入を得る機会がなくなること、同施行に伴い、従前、性行為映像制作物の制作公表やそれへの出演によって稼得していた人々の中に収入の減少等により経済的な不利益を被った者がいること等を指摘し、法7条1項、9条及び13条が、許可制と同様に職業の選択の自由そのものに対する強力な制限である旨主張し、職業の自由に対するより緩やかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によってはその目的を十分に達成することができないと認められるか否かを審査すべきであると主張しているものと解される。
 イ しかしながら、まず、本件でその憲法適合性が問題となっているのは本件各規定であって、弁護人が指摘する法7条1項、9条及び13条が直接問題となる訳ではない。
 その上で、弁護人の前記主張にも鑑み、本件説明義務規定及び本件契約書等交付義務規定において、説明事項とされ、また、出演契約の内容を規律するものとされている法7条1項、9条及び13条の各規定の内容も踏まえて検討すると、まず、法7条1項、9条及び13条の各規定により、性行為映像制作物を制作公表するにあたって事前の届出や許可等が課されていたり、制作公表を行う主体が法的に制限されたりしているものではない。さらに、前記各規定の内容を具体的に検討すると、法7条1項及び9条に関していえば、性行為映像制作物の内容やそれによる事業活動それ自体を全面的に規制するものではなく、本件各規定と同様、出演者の性に関する自己決定権を保障するという観点から、性行為映像制作物の制作公表のプロセスに対して一定の規制を課したものにとどまるところ、撮影や公表までに経過が必要とされる期間も、前述した性行為映像制作物の出演に伴うリスクの内容及び性質並びに制作公表に要する期間等に照らして合理的な限度といい得る。また、法7条1項及び9条の各規定によって、本法施行後、最低5か月間は、同施行後に締結した出演契約に基づく性行為映像制作物が公表できないとしても、それは、上記のようなプロセスに対する規制を定めたことに伴うもので、その間職業の自由に対する制限の程度が強くなるというものではなく、また、その間においても、性行為映像制作物の制作公表に向けた新たな出演契約の締結や、法施行前に締結された出演契約に係る性行為映像制作物の制作公表の事業活動が制限されるものではなかったこと(法附則2条)等からすると、前記各規定によって、出演者を含め、収入を得る機会が実質的に奪われていたともいい難い。さらに、法13条に関しても、出演者の性に関する自己決定権を保障し、出演者の心身の健康及び私生活の平穏その他の利益を保護するために、前述した性行為映像制作物への出演に係るリスクの内容及び性質等を考慮して定められた一定の期間に限って出演者に任意解除権を認めたものにとどまる。そして、法7条1項、9条及び13条のいずれの規定についても、それに違反して性行為映像制作物の制作公表を行うことが罰則の適用対象になっている訳でもない。
 このように、法7条1項、9条及び13条の各規定による制約の内容を具体的にみても、制作公表者はもとより、出演者その他の性行為映像制作物の制作公表に関係する主体も含め、職業選択の自由そのものに対する強力な制限になっているということはできず、したがって、これら各規定に関連し、説明義務や契約書等の交付義務を課すにすぎない本件説明義務規定及び本件契約書等交付義務規定についても、職業選択の自由そのものに対する制限を加えるものとはいえない。
 以上によれば、本件説明義務規定及び本件契約書等交付義務規定は、職業活動の内容及び態様に対する制限にとどまるもので、その制限の程度も大きいということもできず、弁護人の前記アの主張はいずれも採用できない。
 (2)なお、弁護人は、本法による規制が定められたことにより、公布から5か月間は職業選択の自由が失われていたといえ、同施行後5か月以内に起訴された本件各事実に適用する限りで違憲である旨を主張するが、前記4(1)イのとおり、同施行後5か月以内であっても被告人の職業選択の自由が実質的にも失われていたとはいえないから、弁護人の主張は、採用することができない。
 5 以上によれば、本件説明義務規定及び本件契約書等交付義務規定を定め、それに違反した者を処罰するとの規制に必要性、合理性があるとした立法府の判断が、その合理的裁量の範囲を超えるものであるということはできず、本件各規定はいずれも憲法22条1項に違反するものということはできず、本件各事実への適用において違憲となるものではない。
(量刑の理由)
  令和5年9月19日
    東京地方裁判所刑事第16部
        裁判長裁判官  安永健次
           裁判官  花田隆光
           裁判官  足立洋平

児童買春・児童ポルノ被害児童の 保護施策に関する検証・評価専門委員会の動き。

 児童ポルノ・児童買春独自の害悪というのがあるということで児童ポルノ・児童買春法ができて、その害悪を後から調査する条項ができたんですが、調査研究してみても、児童ポルノ・児童買春独自の害悪というのはよくわからなくて、「性犯罪被害」に含めて検討するようです。

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho_456129.html
社会保障審議会(児童買春・児童ポルノ被害児童の保護施策に関する検証・評価専門委員会)
第4回 2021年3月18日
(令和3年3月18日)
https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000754764.pdf
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に 関する法律に基づく、児童買春・児童ポルノ事犯における被害児童の 保護施策の実施状況に係る検証・評価について(案)
令和3 年● 月● 日
社会保障審議会児童部会児童買春・児童ポルノ被害児童の 保護施策に関する検証・評価専門委員会決定
社会保障審議会児童部会児童買春・児童ポルノ被害児童の保護施策に関する検証・評価専門委員会においては、平成28 年から令和2年の間に講じられた、児童買春・児童ポルノ事犯における被害児童の保護施策を下記4項目に分類した上(別添参照)で、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第16条の2第1項に基づき、下記のとおり被害児童保護施策の実施状況について検証・評価を行った。

1 被害児童に対する保護活動
子どもの性暴力事案については、家庭内での性暴力被害事案について策定された「児童相談所における性的虐待対応ガイドライン2011年度版」に従い、広く様々な子どもの性暴力被害・性的搾取被害事案においても、その発見と安全確保、正確な事実把握、再発の防止
と必要なケアを行うこととされている。多くの児童相談所が既に専門面接や診察の必要性を認識しているものの、専門面接の実施、面接者の配置について、十分な体制とはなっていない。これについては、児童虐待相談対応件数の増加による児童福祉司等の児童相談所の業務負担が増大していること、常時、人事異動が繰り返され人材の蓄積にバラつきがあること、最近の職員増による新人層の増加等も関連する要因と考えられる。
このため、平成30年12月策定された児童虐待防止対策総合強化プラン(平成30年12月18日)に基づく児童相談所の体制強化を着実に行う必要がある。

児童買春・児童ポルノ被害児童の保護施策に関する検証・評価専門委員会
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号)第16条の2の規定に基づき児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する施策の実施状況等について、専門的な知識経験を有する者の知見を活用し、定期的な検証及び評価を行うため、こども家庭審議会社会的養育・家庭支援部会の下に「児童買春・児童ポルノ被害児童の保護施策に関する検証・評価専門委員会」が設置されています。

【開催状況】

児童買春・児童ポルノ被害児童の保護施策に関する検証・評価専門委員会(第1回)(令和6年3月18日開催)
https://www.cfa.go.jp/councils/shingikai/shakai_katei/jidobaishunhogo/d2017c33


検討事項の1つ目の児童への具体的な支援のあり方について、でございますが、この専門委員会自体の射程というのは、この法律に基づいて、法律16条2の規定、つまり、その児童買春の相手方となった、児童ポルノに描写された等によって、心身に有害な影響を受けた児童、そういったこどもたちがその対象となるわけでございますけれども、実際にこの福祉の支援の現場というのは、児童福祉施設児童相談所こういったところが支援の現場になると思いますけれども、児童福祉施設児童相談所での支援と考えた時には、法律に書いてある例えば、児童買春とか児童ポルノとか、そういったダメージを受けたその経緯とかに必ずしも限定をして支援を行っているわけではないというふうに、事務局として考えております。
・・・
そういう意味では、ここは児童買春の相手方とか、児童ポルノに描写されたというふうに狭めることなく、むしろ性的な被害を受けて、心身に有害な影響を受けたこどもへの支援として、いろいろ先生方のご意見を伺いたいという風に考えてるわけでございます。


・・・・・・・・・
ただいま事務局の小松課長様の方から、この委員会の対象となる検証の対象となる児童の範囲であるとか、検討事項について具体的にお話をいただいたわけですけれども、ちょっと今までも混乱があったところかもしれませんけれども、児童買春の相手方となったとか、児童ポルノに描写されたことによる心身に有害な影響というふうな限定的な支援という観点からは、非常に識別することとか、そこだけ抽出することが難しいだろうということで、こども家庭庁としては、性的被害を受けて心身に有害な影響を受けた児童が対象になるということをご説明いただきました。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)
第一四条(教育、啓発及び調査研究)
 国及び地方公共団体は、児童買春、児童ポルノの所持、提供等の行為が児童の心身の成長に重大な影響を与えるものであることに鑑み、これらの行為を未然に防止することができるよう、児童の権利に関する国民の理解を深めるための教育及び啓発に努めるものとする。
2国及び地方公共団体は、児童買春、児童ポルノの所持、提供等の行為の防止に資する調査研究の推進に努めるものとする。


第三章 心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置

第一五条(心身に有害な影響を受けた児童の保護)
 こども家庭庁、法務省都道府県警察、児童相談所、福祉事務所その他の国、都道府県又は市町村の関係行政機関は、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童に対し、相互に連携を図りつつ、その心身の状況、その置かれている環境等に応じ、当該児童がその受けた影響から身体的及び心理的に回復し、個人の尊厳を保って成長することができるよう、相談、指導、一時保護、施設への入所その他の必要な保護のための措置を適切に講ずるものとする。
2前項の関係行政機関は、同項の措置を講ずる場合において、同項の児童の保護のため必要があると認めるときは、その保護者に対し、相談、指導その他の措置を講ずるものとする。


第一六条(心身に有害な影響を受けた児童の保護のための体制の整備)
 国及び地方公共団体は、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童について専門的知識に基づく保護を適切に行うことができるよう、これらの児童の保護に関する調査研究の推進、これらの児童の保護を行う者の資質の向上、これらの児童が緊急に保護を必要とする場合における関係機関の連携協力体制の強化、これらの児童の保護を行う民間の団体との連携協力体制の整備等必要な体制の整備に努めるものとする。


第一六条の二(心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する施策の検証等)
 こども家庭審議会及び犯罪被害者等施策推進会議は、相互に連携して、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する施策の実施状況等について、当該児童の保護に関する専門的な知識経験を有する者の知見を活用しつつ、定期的に検証及び評価を行うものとする。
2こども家庭審議会又は犯罪被害者等施策推進会議は、前項の検証及び評価の結果を勘案し、必要があると認めるときは、当該児童の保護に関する施策の在り方について、それぞれ内閣総理大臣又は関係行政機関に意見を述べるものとする。
3内閣総理大臣又は関係行政機関は、前項の意見があった場合において必要があると認めるときは、当該児童の保護を図るために必要な施策を講ずるものとする。

被害者をして裸体を撮影させる行為は「わいせつ行為」にあたらない。という主張

 古い未公開判例をチェックしていたら強要被告事件の高裁判例に、「(撮影させ・送信させる行為について)このような行為がその性質上当然に強制わいせつ罪に当たる行為とみることはできず,」というのがあったので、判例違反も主張してみる。多分「事案を異にする」という判示になる。

阪高裁r2.10.2
すなわち,原判決が認定した原判示第1及び第3の各事実の要旨は,被告人が各被害者に対し,それぞれ脅迫文言を記載したメッセージを送信するなどして脅迫し,これによって被害者らを畏怖させ,被害者らに裸の姿態をとらせて自らこれを撮影させた上,その画像ないし動画データを被告人の携帯電話機に送信させ,又は送信させようとしたが未遂にとどまったというものであるところ,なるほどこれらの事実中には,各被害者を脅迫し畏怖させた上,同人らに裸の姿態をとらせて自ら撮影させ,又はさせようとしたという点では,性的な意味合いを持つ行為が含まれている。
しかし,このような行為がその性質上当然に強制わいせつ罪に当たる行為とみることはできず,その該当性を判断するに当たっては,当該事案における具体的状況等に則して強制わいせつ罪に係る構成要件を充足するに足る事実があるか否かを総合的に考慮する必要があることに加え,

~被害者をして裸体を撮影させる行為は「わいせつ行為」にあたらない。 5
1 はじめに 5
1審判決 5
原判決 7
2 わいせつの定義がないので議論しづらいが、馬渡(向井)解説*3・薄井論文*4の「手法」に沿って検討してみる 9
(1)撮影させる行為の「性的な意味」とは 9
(2)撮影させる行為の「性的意味合い」の程度 10
馬渡(向井)解説 11
大塚仁ほか編・大コンメンタール刑法〔第3版〕(9)[亀山継夫=河村博]67頁 12
薄井論文 14
(3)学説 15
佐藤陽子 自己のわいせつな画像を撮影( ・送信)させる行為の「わいせつな行為」性について 山口厚ら「実務と理論の架橋」 15
②木村光江「強制わいせつ罪における『性的意図』」判例時報 736号18頁。*5 17
③橋爪隆・研修860号3頁 17
(4)高裁判例・裁判例 18
①名古屋地岡崎支部h30.4.19*6 18
②大阪高裁H22.6.18*7(神戸地裁H21.12.10*8) 19
③大阪高裁r02.10.2*9(奈良地裁葛城支部R02.3.30*10) 19
④大阪高裁R2.10.27*11(奈良地裁葛城支部R2.2.27*12) 20
⑤大津地裁R5.3.1 23
長崎地裁佐世保支部r6.2.21*13(強要) 25
⑦札幌高裁r5.1.19*14(札幌地裁R04.9.14*15 ) 26
(5)社会通念上の「撮影させる行為」の扱い=強要罪の裁判例 26
3 起訴検察官は高検判決速報のアドバイスに従っていないこと 30
4 1審判決の説明(送信させる行為はわいせつ行為にあたらない) 33
5 原判決 35
原判決 35
名古屋地裁金沢支部の検察官答弁書h27.7.23 36
東京高裁h27.12.22の検察官答弁書 37
6 判例違反(大阪高裁R2.10.2 大阪高裁r2.10.27) 37
③大阪高裁r2.10.2*50(奈良地裁葛城支部R02.3.30*51) 37
④大阪高裁R2.10.27*52(奈良地裁葛城支部R2.2.27*53) 38
7 まとめ 39

テレビ会議ソフトのビデオ通話機能により被告人が視聴できる状態で、性器を露出させる姿態をとらせた行為は「わいせつ」行為に当たらないという主張

 これは4つ強要被告事件の高裁判例を4つ並べておけば十分。
 地裁レベルでも、自慰行為させ+送信させでないとわいせつ行為と評価されていない。
①広島高裁岡山支部H22.12.15*72 69
②東京高裁H27.12.22 69
③大阪高裁r2.10.2*73(奈良地裁葛城支部R02.3.30*74) 71
④大阪高裁R2.10.27*75(奈良地裁葛城支部R2.2.27) 71

テレビ会議ソフトのビデオ通話機能により被告人が視聴できる状態で、性器を露出させる姿態をとらせた行為は「わいせつ」行為に当たらない 40
1 はじめに 40
2 「被告人の使用するパーソナルコンピュータのアプリケーションソフト「」のビデオ通話機能により被告人が視聴できる状態で、」行われた点について 41
(1)ビデオ通話機能により被告人が視聴できる状態」でというのは、被告人が被害者をして画像を撮影送信させたものであること 41
(2) 馬渡解説・薄井論文によってもを用いて送信させる行為はわいせつ行為ではない。 47
(3) 高検速報のアドバイスでも、せいぜい「撮影させ」がわいせつとされていて「送信させ」ることはわいせつ行為とはされていないのに、原審の検察官は高検速報のアドバイスに従っていないこと 49
(4)1審判決 52
(5)高裁判例 52
広島高裁岡山支部H22.12.15*55(岡山地裁H22.8.13*56) 52
東京高裁H27.12.22*57(新潟地裁高田支部H27.8.25*58) 52
3 「(オンラインで)性器を露出させる姿態をとらせ」行われた点について 54
(1)学説 54
大竹依里子 研修の現場から オンラインで,児童を裸にさせ,動画撮影させた行為について,強制わいせつ罪で処理した事例 54
橋爪隆 非接触型のわいせつ行為について 54
(2)裁判例では、送信させた場合は、自慰行為・性器接触させている場合をわいせつとしている 54
長崎地裁R1.9.17*59 54
岡山地裁H29.7.25*60 54
大分地裁h23.5.11*61 55
横浜地裁h28.11.10*62 55
高松地裁H28.6.2*63 55
松山地裁西条支部H29.1.16*64 55
高松地裁丸亀支部r2.9.18*65 55
熊本地裁r3.1.13*66 55
札幌地裁小樽支部R4.3.2*67 55
東京地裁R4.3.10*68 55
東京地裁r4.8.19*69 55
津地裁r5.3.1*70 55
松山地裁西条支部R5.8.31*71 55
(3)検察官の論稿 55
熊本地裁r3.1.13 56
4 小括~ビデオ通話機能により被告人が視聴できる状態で、性器を露出させる姿態をとらせた点について(総合的評価) 58
5 学説・裁判例 59
佐藤陽子 自己のわいせつな画像を撮影(・送信)させる行為の「わいせつな行為」性について 山口厚ら「実務と理論の架橋」 59
津地裁R5.3.1 61
6 原判決の問題点 64
1審判決 64
原判決 65
※裸体を送信させる行為はわいせつ行為ではないという高裁判例。 68
①広島高裁岡山支部H22.12.15*72 69
②東京高裁H27.12.22 69
③大阪高裁r2.10.2*73(奈良地裁葛城支部R02.3.30*74) 71
④大阪高裁R2.10.27*75(奈良地裁葛城支部R2.2.27) 71
※ 高裁レベルでは、送信させた行為をわいせつと評価した判決はないこと 72
①大阪高裁r03.7.14*76(京都地裁R3.2.3*77) 72
②大阪高裁r04.1.20*78 (京都地裁r03.7.28*79) 73
③札幌高裁r5.1.19*80(札幌地裁R04.9.14*81 ) 73
広島高裁岡山支部H22.12.15*82(岡山地裁H22.8.13) 73
東京高裁H27.12.22*83(新潟地裁高田支部H27.8.25) 73

実子に対する強制わいせつ罪(176条後段)と児童ポルノ製造(那覇地裁R06.2.2)

実子に対する強制わいせつ罪(176条後段)と児童ポルノ製造(那覇地裁R06.2.2)
 よくわからないけど、数回の製造罪は併合罪かなあ

【文献番号】25597989

強制わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
那覇地方裁判所令和5年(わ)第285号、令和6年(わ)第1号
令和6年2月2日刑事第1部判決

       調書判決
宣告日 令和6年2月2日
裁判所 那覇地方裁判所刑事第1部
罪名 A  強制わいせつ
   AB 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反
被告人


       判決主文

被告人aを懲役3年に、被告人bを懲役2年に処する。
この裁判確定の日から、被告人aに対し4年間、被告人bに対し3年間、それぞれその刑の執行を猶予する。

罪となるべき事実の要旨
 起訴状及び令和6年1月9日付け追起訴状記載の公訴事実と同一であるから、これらを引用する。
適用した罰条
1 被告人aについて
(1)令和5年法律第66号附則2条1項により同法による改正前の刑法176条後段
(2)刑法60条、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項3号
(3)刑法45条前段、47条本文、10条
(4)刑法25条1項
(5)刑訴法181条1項ただし書
2 被告人bについて
(1)刑法60条、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項3号
(2)刑法45条前段、47条本文、10条
(3)刑法25条1項
(4)刑訴法181条1項ただし書

       理由の要旨

 別紙記載のとおり
(求刑 被告人aにつき懲役3年、被告人bにつき懲役2年)
令和6年2月19日
那覇地方裁判所刑事第1部
裁判所書記官 ○○○○
裁判官 小野裕信

(別紙)理由の要旨
 被告人Aは、令和5年3月から9月にかけて、定期的に性的関係を持っていた被告人Bがラブホテルに連れてきた被告人Bの実子(被害者・当時11歳ないし12歳)に対し、乳房や陰部を直接弄ぶわいせつ行為に及ぶとともに、被告人Bと共謀し、その際を含めて5回にわたり、被害者の胸部等を動画撮影して児童ポルノを製造した。
 強制わいせつの態様は直接性器に触れるなど、侵害の度合いが大きなものであるし、児童ポルノ製造のデータはひとたび流出すれば将来にわたって残り続けるおそれがあるのであって、いずれも被害者の性的自由や自尊心を深く傷つける犯行である。性的満足を得ようとした被告人Aも、対価欲しさに撮影に協力した被告人Bも、厳しく非難されるべきである。
 以上の犯情評価や量刑傾向を前提に、被告人両名ともさしたる犯罪歴が見当たらないことや、公訴事実を認めて反省の弁を述べていること、データ流出はうかがわれないことなども考慮し、主文のとおり判決する。
以上
令和5年検第11659、11660、11784号
起訴状
令和5年11月17日
那覇地方裁判所殿
那覇地方検察庁
検察官 検事 山田与志人
下記被告事件につき公訴を提起する。

       記
公訴事実
第1 被告人aは、被告人bの実子である■(当時11歳)が13歳未満であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、令和5年3月8日午後9時7分頃から同日午後9時52分頃までの間に、沖縄県浦添市字α××××番地cホテル▽▽▽号室において、入浴後で全裸の状態であった同人の乳房を直接手で触った上、さらに同人をベッドの上に仰向けにして、陰部を直接手指で弄び、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をし
第2 被告人両名は、共謀の上、前記■(当時12歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、同年9月5日午後6時24分頃から同日午後7時25分頃までの間に、前記cホテル□□□号室において、同児童の胸部等が露出した姿態を動画撮影機能付き携帯電話機で動画撮影し、その動画データ1点を同携帯電話機の内蔵記録装置に記録させて保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し
たものである。
罪名及び罰条
第1 強制わいせつ 令和5年法律第66号による改正前の刑法第176条後段
第2 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反 同法第7条第4項、第2条第3項第3号、刑法第60条
令和5年検第12025、12026号
追起訴状
令和6年1月9日
那覇地方裁判所殿
那覇地方検察庁
検察官 検事 山田与志人
下記被告事件につき公訴を提起する。 

       記

公訴事実
 被告人両名は、共謀の上、被告人bの実子である■(当時11歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、別表記載のとおり、令和5年3月8日頃から同年7月5日頃までの間に、4回にわたり、沖縄県浦添市字α××××番地cホテルの各客室内において、同児童の胸部等が露出した姿態を動画撮影機能付き携帯電話機で動画撮影し、その動画データ6点を同携帯電話機の内蔵記録装置に記録させて保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造したものである。
罪名及び罰条
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反 同法第7条第4項、第2条第3項第3号、刑法第60条
別表
番号 日時(令和5年)                      客室    動画データ
1  3月8日午後9時7分頃から同日午後9時52分頃までの間に  ▽▽▽号室 1点
2  4月5日午後6時52分頃から同日午後7時38分頃までの間に ◇◇◇号室 2点
3  5月5日午後7時54分頃から同日午後8時48分頃までの間に ◎◎◎号室 1点
4  7月5日午後6時27分頃から同日午後7時26分頃までの間に ▲▲▲号室 2点

愛知県条例では「 公共の場所又は公共の乗物(第三項に定めるものを除く。)において、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、人に対し、卑わいな言動をすること。」が処罰されるので、「匂いを嗅ぐ」でも「卑わいな言動」とされてしまいそうです。

愛知県条例では「 公共の場所又は公共の乗物(第三項に定めるものを除く。)において、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、人に対し、卑わいな言動をすること。」が処罰されるので、「匂いを嗅ぐ」でも「卑わいな言動」とされてしまいそうです。

https://news.yahoo.co.jp/articles/00edc54e78f49f0484a36fa390794e5065e61003?source=fb&fbclid=IwZXh0bgNhZW0CMTEAAR2CpeDHb70KjkolQtwItYS24Wx_Kw4FRk9H2beuCRdeQOlBwmTOO6anKE8_aem_AS5kql8h7j_BY3xqbQGkkPWleb7xAbDvMIwKbDR6weZhImXWvTd_sXWiIcTWcLS3AMASQbEeCU0MRnNnHD0XimUP
“匂いを嗅ぐ”は法律等で規制しきれず…急増する新たな手口『触らない痴漢』苦心する鉄道警察隊の捜査
そして追及する捜査員に、男が動機を口にしました。
男:
「においとか」
男性捜査員:
「においが好きなの?」
男:
「うん」
「女性の匂いを嗅ぎたかった」。法律では規制しきれない、“触らない痴漢”といわれる行為です。

“触らない痴漢”とは「わざと至近距離に近づいてにおいをかぐ」「首筋や耳などに息を吹きかける」「見知らぬ相手に、スマホのデータ共有機能でわいせつ画像を送り付ける」といった行為で、近年急増している、新たな痴漢の手口です。
痴漢行為を規制する、愛知県の迷惑行為防止条例では、「卑猥な行為」として「体への接触」は明記されているものの、匂いを嗅ぐなどの「触らない痴漢」には明確な記述がありません。

男性捜査員:
「それがエスカレートしていって、手を触っただとかそういう話になってくると、もちろん捜査員が見ていたら、現行犯逮捕します」

愛知県迷惑行為防止条例
(卑わいな行為の禁止)
第二条の二 何人も、公共の場所又は公共の乗物(第三項に定めるものを除く。)において、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。
一 人の身体に、直接又は衣服その他の身に付ける物(以下「衣服等」という。)の上から触れること。
二 衣服等で覆われている人の身体又は下着をのぞき見し、又は撮影すること。
三 前号に掲げる行為をする目的で、写真機、ビデオカメラその他の機器(以下「写真機等」という。)を設置し、又は衣服等で覆われている人の身体若しくは下着に向けること。
四 前三号に掲げるもののほか、人に対し、卑わいな言動をすること。
・・・
愛知県警の解説
11 「ような」とは、実際に相手方が不安を覚えたかどうかは問わず、具体的な言動の内容等を客観的に判断して、通常不安を覚えるであろうと考えられる言動を含み、不安を覚えさせたよりも広い概念である。
12 「言動」とは、言語・動作をいう。
13 「人」とは、男性、女性、成年又は未成年を問わないが、ここでいう人は卑わいな行為の相手方であるから、その行為を卑わいなものとして感じうる能力を有する者であることを要する, しかし、他人に対するものであれば足り、その直接たると間接たるとを問わないから、行為者が他人の認識しうるものであることを知ってなす場合には、本項に触れるものと解すべきである。
14 「人に対し」とは、他人を相手方としてという意味である。
15 「故なく」とは、正当な理由がなくの意である「人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法」による行為にかかる。これは、医療行為等の正当な理由によって、人の身体に接触するようなことがあり得るので、そのような行為は、違反態様から除外するために「故なく」と規定するものである。
16 「しゅう恥」とは、性的しゅう恥心を意味する。このしゅう恥心、すなわち、性的恥じらいは、幅の広い概念であるので「著しく」(社会的に認容し得ない程度に甚だしいものをいう。) という限定を付したものである。

20 「卑わいな言動」とは、「人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法」によるもので、第1号及び第2号に規定する行為以外のものを指し、通常人がしゅう恥又は不安を覚えるであろうと考えられる程度の野卑で、みだらな言語又は動作をいう。
刑法第174条(公然わいせつ罪) より広い概念であり、わいせつに至らないもので性的道義観念に反し、人に性的しゅう恥や嫌悪の念又は不安を覚えさせるものをいう。わいせつな言語は、刑法第174条にいう、わいせつ行為に含まれないとするのが通説であるので、卑わいな言語のみによるときは、本条第2項第3号のみが成立すると解すべきであろう。

強制わいせつ罪における「性的意図」薄井真由子判事
植村立郎「刑事事実認定重要判決50選 上 《第3版》」2020立花書房
 これに対し、客観的にみて性的意味が認められない行為については,行為者が性的意図をもって行っていたとしても,行為者の主観的事情だけで性的意味を肯定することはできないというべきである。この点に関し,行為者の主観的事情との関係で取り上げられることの多い治療行為と行為者の特殊な性的嗜好フェティシズム)に基づく行為について検討しておく。
(ア)治療行為
(イ)行為者の特殊な性的嗜好フェティシズム)に基づく行為
 行為者の特殊な性的嗜好フェティシズム)に基づく行為についても,性的意味の有無の判断と行為者の主観的事情の関係が問題となる。こうした行為は,一見性的意味を持つようには思われない行為であっても,行為者は性的意図を有して行っているからである。この点、あまりに特殊な性的嗜好であり,社会通念上は性的性質が認められない行為については,やはり,行為者の性的意図だけを理由に性的意味を肯定することはできないというべきである。例えば,女性が汗を流す姿を見ることに性的興奮を覚える者が,その姿を見たいがために無理やり運動場を走らせたとしても,社会通念上当該行為に性的意味は認められないから,行為者の主観的事情だけで性的意味があることにはならない。もっとも,社会通念上もフェティシズムに基づく行為として認知されているような行為であれば,そのことから性的意味を肯定できることもあるだろう。

「欲望を抑えられず行為に及んだが、付き合っているつもりだった」という児童淫行被疑者の弁解

https://www.sankei.com/article/20240422-E5HHCJY3T5MZHLWXF5ISVG5D6A/
自身がプロデュースするアイドルグループの少女(17)にみだらな行為をしたとして、警視庁少年育成課は児童福祉法違反の疑いで、東京都世田谷区世田谷、タレントマネジメント容疑者を逮捕した。「欲望を抑えられず行為に及んだが、付き合っているつもりだった」などと容疑を否認している。
逮捕容疑は2~3月、3回にわたって自宅や都内のホテルなどで、少女が18歳未満であることを知りながら、みだらな行為をしたとしている。
同課によると、容疑者は「奥さんと別れるから待ってて」「アイドル卒業したら結婚しよう」などと言い、少女に恋愛感情を抱かせて自宅やホテルに呼び出していたとみられる。少女の父親が警視庁に相談し発覚した。


 児童淫行罪の成立要件につき「同号にいう「させる行為」とは,直接たると間接たるとを問わず児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をいうが(最高裁昭和39年(あ)第2816号同40年4月30日第二小法廷決定・裁判集刑事155号595頁参照),そのような行為に当たるか否かは,行為者と児童の関係,助長・促進行為の内容及び児童の意思決定に対する影響の程度,淫行の内容及び淫行に至る動機・経緯,児童の年齢,その他当該児童の置かれていた具体的状況を総合考慮して判断するのが相当である。」と判示していますが
  行為者と児童の関係
  助長・促進行為の内容及び児童の意思決定に対する影響の程度,
  淫行の内容及び淫行に至る動機・経緯,
  児童の年齢,
  その他当該児童の置かれていた具体的状況
は、量刑の要素でもあるので、弁護人はこれらの項目について程度を争って情状立証を行えば、その分軽くなります。可罰性を下回れば無罪になるという連続的な関係です。
 児童淫行罪の保護対象は18歳未満ですが、刑法改正で16~17歳が保護対象から外れている点も検討する必要があります。

判例番号】 L07110035
       児童福祉法違反被告事件
【事件番号】 最高裁判所第1小法廷決定/平成26年(あ)第1546号
【判決日付】 平成28年6月21日
【判示事項】 1 児童福祉法34条1項6号にいう「淫行」の意義
       2 児童福祉法34条1項6号にいう「させる行為」に当たるか否かの判断方法
【判決要旨】 1 児童福祉法34条1項6号にいう「淫行」とは,児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあると認められる性交又はこれに準ずる性交類似行為をいい,児童を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交又はこれに準ずる性交類似行為は,これに含まれる。
       2 児童福祉法34条1項6号にいう「させる行為」に当たるか否かは,行為者と児童の関係,助長・促進行為の内容及び児童の意思決定に対する影響の程度,淫行の内容及び淫行に至る動機・経緯,児童の年齢,その他当該児童の置かれていた具体的状況を総合考慮して判断すべきである。
【参照条文】 児童福祉法34-1
       児童福祉法60-1
       児童福祉法
【掲載誌】  最高裁判所刑事判例集70巻5号369頁
       裁判所時報1654号174頁
       判例タイムズ1452号72頁
       判例時報2384号126頁
       LLI/DB 判例秘書登載
【評釈論文】 警察学論集69巻10号162頁
       警察公論71巻10号87頁
       研修820号15頁
       論究ジュリスト22号229頁
       ジュリスト1505号182頁
       ジュリスト1521号112頁
       法学新報124巻11~12号179頁
       法学セミナー61巻10号115頁
       法曹時報70巻8号217頁
       刑事法ジャーナル51号125頁

       主   文

 本件上告を棄却する。

       理   由

 弁護人竹永光太郎の上告趣意のうち,憲法31条違反をいう点は,児童福祉法34条1項6号の構成要件が所論のように不明確であるということはできないから,前提を欠き,その余は,単なる法令違反,事実誤認の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 所論に鑑み,職権で判断する。
 児童福祉法34条1項6号にいう「淫行」とは,同法の趣旨(同法1条)に照らし,児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあると認められる性交又はこれに準ずる性交類似行為をいうと解するのが相当であり,児童を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交又はこれに準ずる性交類似行為は,同号にいう「淫行」に含まれる。
 そして,同号にいう「させる行為」とは,直接たると間接たるとを問わず児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をいうが(最高裁昭和39年(あ)第2816号同40年4月30日第二小法廷決定・裁判集刑事155号595頁参照),そのような行為に当たるか否かは,行為者と児童の関係,助長・促進行為の内容及び児童の意思決定に対する影響の程度,淫行の内容及び淫行に至る動機・経緯,児童の年齢,その他当該児童の置かれていた具体的状況を総合考慮して判断するのが相当である。
 これを本件についてみると,原判決が是認する第1審判決が認定した事実によれば,同判示第1及び第2の各性交は,被害児童(当時16歳)を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交であり,同児童が通う高等学校の常勤講師である被告人は,校内の場所を利用するなどして同児童との性的接触を開始し,ほどなく同児童と共にホテルに入室して性交に及んでいることが認められる。このような事実関係の下では,被告人は,単に同児童の淫行の相手方となったにとどまらず,同児童に対して事実上の影響力を及ぼして同児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をしたと認められる。したがって,被告人の行為は,同号にいう「児童に淫行をさせる行為」に当たり,同号違反の罪の成立を認めた原判断は,結論において正当である。
 よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 小池 裕 裁判官 櫻井龍子 裁判官 山浦善樹 裁判官 池上政幸 裁判官 大谷直人)

判例番号】 L07110035
       児童福祉法違反被告事件
【事件番号】 最高裁判所第1小法廷決定/平成26年(あ)第1546号
【判決日付】 平成28年6月21日
【出  典】 判例タイムズ1452号72頁

 1 本件は,高校の常勤講師の被告人(当時28歳)が,同校生徒の被害児童(当時16歳)に対し,2度にわたり自己を相手に性交(以下「本件各性交」という。)させたという児童福祉法違反の事案である。被告人は,被害児童と本件各性交をしたことは認めていたが,弁護人は,被告人が同児童と交際していたから,本件各性交は児童福祉法34条1項6号(以下「本号」ともいう。)にいう「淫行」に当たらない,被告人が同児童に事実上の影響力を及ぼして働きかけていないから,同号にいう「淫行をさせる行為」はしていないなどと主張して同号該当性を争うと共に,第1審当時から,同号の構成要件が不明確であるから,同号は憲法31条に違反するとの規定違憲を主張していた。本決定は,規定違憲をいう点を前提を欠いた不適法な主張として排斥した上で,職権により,「淫行」の意義と「させる行為」の判断方法について判示し,被告人に同号違反の成立を認めた原判決の判断を結論において是認して上告を棄却した。
 2 本号にいう「淫行」の意義を示した最高裁判例はこれまでなかったが,学説上は,同号の「淫行」の意義として,「性道徳上非難に値する性交又はこれに準ずべき性交類似行為」とする解釈が一般的なものとされ(小泉祐康「児童福祉法」『注解特別刑法(7)風俗・軽犯罪編〔第2版〕』36頁等),本件原判決が是認した第1審判決も同様の解釈を明示していた。
 しかし,「性道徳」として想起されるところには,かなりの広がりがある上,その判断は,それぞれの人が抱く価値観によって差が生じかねない。そこで,児童福祉法の理念,趣旨に立ち返ってみると,本号の定める「淫行」に当たるかどうかは,児童福祉法の趣旨に照らし,端的に,「児童の心身の健全な育成を阻害するおそれ」があるかどうかによって,決せられるべき事柄といえ,また,児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあるかどうかは,一般人であれば共通のイメージを抱くことができ,明確な解釈基準になり得るものと思われる。このようなことから,本決定は,「児童福祉法34条1項6号にいう『淫行』とは,同法の趣旨(同法1条)に照らし,児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあると認められる性交又はこれに準ずる性交類似行為をいうと解するのが相当」としたものと思われる。
 3 「させる行為」の解釈
 (1) 本号の解釈に係るこれまでの動きをみてみると,淫行が児童に及ぼす有害性の高さや児童保護の観点から,淫行を「させる行為」に当たると解される範囲が徐々に広がっていき(最三小判昭和30年12月26日・刑集9巻14号3018頁,判タ57号41頁等参照),最二小決昭和40年4月30日・裁判集刑事155号595頁において,「淫行をさせる行為のうちには,直接たると間接たるとを問わず児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をも包含する」との解釈が示され,その後,緩やかな助長・促進行為であっても,「させる行為」に該当するとされる事例が増えていった。ただし,昭和40年判例当時には,自己を淫行の相手とする場合は,淫行を「させる行為」に当たらないとの解釈が通説的見解であり(伊藤榮樹ほか編『注釈特別刑法(8)医事・薬事法,風俗関係法編』〔澤新・長島裕執筆部分〕790頁等),昭和40年判例も,同見解を前提としていたものと思われる。一方,児童保護の観点から,自己を淫行の相手とする淫行をさせる場合も本罪に含まれるとの解釈がかなり早い段階から学説上示され,有力となっていたところ(小泉祐康「児童福祉法」研修252号105頁等),やがて,下級審判例において,これを肯定する事例が急速に増え,最三小決平成10年11月2日・刑集52巻8号505頁もこれを肯定する趣旨の判示をした。このように自己を淫行の相手とする場合も淫行を「させる行為」に当たり得るとしつつ,その行為としては緩やかな助長・促進行為があれば足りると解されるとすると,処罰範囲が広くなりすぎるのではないか,各都道府県における青少年保護育成条例における淫行処罰との違いが不分明になるのではないか,といった問題が指摘されており(例えば,佐々木史朗・若尾岳志「児童福祉法34条1項6号の『児童に淫行をさせる行為』にあたる行為」判タ1053号67頁等),児童買春を処罰する法律との関係も問題とされるなど,本号の処罰範囲をどのように解すべきなのかについて,改めて検討すべき必要性が高まっていたものと思われる。
 (2) 最近の学説上,「淫行をさせる行為」について,自己を相手とする淫行をさせる類型(二者関係型)と自己以外の者を相手とする淫行をさせる類型(三者関係型)の二類型に分けて検討するアプローチが有力になっている(芥川正洋「児童福祉法34条1項6号にいう『児童に淫行をさせる行為』の意義」法律時報84巻4号116頁,本決定後のものとして,深町晋也「児童に対する性犯罪について」山口厚ほか編『西田典之先生献呈論文集』327頁,樋口亮介「性犯罪の主要事実確定基準としての刑法解釈」法律時報88巻11号91頁等)。また,「させる行為」の内容を考える視点の一つとして,自律的判断が困難な状況下で性行動が行われることにより児童の健全育成が阻害されるとして,本罪と児童の自律的判断との関係を指摘する見解(前掲芥川)や,「させた」といえるには児童の意思決定に対する影響力,心理的負担があったことを必要とする指摘する見解もかなり早くから示されていた(横田信之「児童福祉法34条1項6号の『児童に淫行をさせる行為』の意義」家裁月報39巻4号108頁)。
 そもそも,本罪は,双方の同意に基づくものである限り本来的には可罰性のない性行動につき,軽はずみな性行動が児童の心身に重大な害悪を及ぼし得ることや,未熟な児童には性行動に係る適切な判断力が備わっていないことから,児童の心身の健全育成を保護するため,児童の同意や自発的意思の有無を問うことなく,「淫行をさせる行為」をした者を重く処罰しようとするものであると解される。そうであるとすると,当該児童において自己の性行動に関する適切な判断力が十分にあり,かつ,心身の健全育成の観点からみてもその判断を尊重するのが相当といえる状況下で,当該児童による自律的な自己決定として性行動に及んだ場合には,仮に淫行の相手方から児童に対して何らかの助長・促進行為があったとしても,児童の意思決定に影響力を及ぼしたとはいえず,当該児童に淫行を「させた」と解すべきではないように思われる。この点,昭和40年判例においても,「淫行をさせる行為」について,「直接たると間接たるとを問わず児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為」と判示されており,助長・促進行為のみならず,児童の意思決定に対する影響力についても検討することが求められていたと解される(なお,児童福祉法の理念として,児童の自立,児童の年齢及び発達の程度に応じて,その意見が尊重され,その最善の利益が優先して考慮されるべきことについて,児童福祉法2条1項参照。)。他方で,本罪は,児童の判断力が未熟であることを前提に児童の心身の健全育成を図るものであるから,児童に自発的意思があるようにみえたからといって,ただちに児童に影響力が及んでいないとみるべきでないことも当然である(昭和30年判例参照)。
 このような観点から考えてみると,三者関係型では,本来は二者間の交渉においてなされるべき性行動に係る判断過程に,第三者が関わってくるということ自体が,児童の性行動に係る判断の自律性を一般的に歪める行為であるから,緩やかな助長・促進行為しかなく,児童の自発的意思があったとしても,児童の意思決定に「事実上の影響力」を及ぼしたものとして「させる行為」に当たると認められやすいということができ,二者関係型では,「させる行為」に該当するかどうかを判断するためには,その二者の関係性や,助長・促進行為がどのようなものであったかを具体的に検討して,児童の意思決定に及ぼされた事実上の影響力がどのようなものであったかを個別に検討する必要性が高くなるという違いがあるように思われる。したがって,二者関係型と三者関係型とでは,児童の意思決定に対する影響において,類型的に異なる性質があり,これらを分けて検討することは有益と考えられ,二者関係型では,「させる行為」に該当するというためには,三者関係型に比べて+αの要素が必要になってくるものと思われる。そして,そのような+αの要素となり得るものとして,①行為者による優越的地位の利用や困窮状態の利用といった何らかの支配関係の成立(西田典之「児童に淫行をさせる罪について」『宮澤浩一先生古稀祝賀論文集(3)』305頁,鎮目征樹「児童福祉法34条1項6号にいう『児童に淫行をさせる行為』に当たるとされた事例」ジュリスト1210号219頁等。)や,②保護責任者的地位の利用(前掲深町328頁)などを典型的なものとして捉えることができるように思われる。
 他方で,児童の心身の健全育成という児童福祉法の趣旨に照らしてみれば,二者関係型において,支配関係の成立や保護責任者的地位利用が認められなくても,本罪による処罰にふさわしい「させる行為」といえるだけの実質を備えた行為があり得るようにも思われ,二者関係型類型において本罪が成立するのは,支配関係の成立や保護責任者的地位利用がある場合に限定されるとまで言い切ることには疑問が残る。また,行為者と被害児童との間に何らかの支配関係あるいは保護責任者的地位がありさえすれば,助長・促進行為が微弱であっても常に「させる行為」に当たるとまではいえないであろうから,支配関係や保護責任者的地位を要求するだけでは,なお処罰範囲の外延が明らかになっているともいい難いであろう。
 (3) 「させる行為」について本決定が示した判断方法
 以上のとおり,「させる行為」の解釈が次第に変遷していく中で,「させる行為」の本質部分をどのように捉えるべきかや,その類型化をめぐる議論は,未だ十分に熟しているとはいい難い状況にあるように思われる。
 そのような中,本決定は,「同号にいう『させる行為』とは,直接たると間接たるとを問わず児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をいう」と判示し,昭和40年判例で示されていたとおり,「させる行為」該当性について,①「事実上の影響力」を児童に及ぼしているか,②児童が淫行をすることを助長し促進する行為であるか,の二つの観点から判断する解釈を踏襲する判示をし,その上で,「させる行為」に該当するかどうかについては,「行為者と児童の関係,助長・促進行為の内容及び児童の意思決定に対する影響の程度,淫行の内容及び淫行に至る動機・経緯,児童の年齢,その他当該児童の置かれていた具体的状況を総合考慮して判断するのが相当である」と判示して,その判断方法を明らかにした。本決定は,「淫行をさせる行為」が,立法当初の解釈に比べて相当に広範囲なものを含む解釈が定着している中で,本号による重い処罰にふさわしい行為に限定されていなければならないとの要請も満たしつつ,児童保護の観点からも適切な処罰範囲を画するため,本罪に該当するとされた裁判例の集積を踏まえ,「させる行為」を判断する際の具体的考慮要素を明示して判断方法を明らかにすることにより,処罰範囲の明確化を図ろうとしたものと思われる。
 本決定によれば,「させる行為」に当たるかどうかを評価するに際しては,当該児童に及んでいる「事実上の影響力」の程度を踏まえた上で,「させる行為」と評価できるような「助長・促進行為」があるかどうかを,当該児童が淫行に及んだ具体的状況に照らして個別に検討していくことになろう。
 4 本決定は,①本件各性交が,被害児童を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交であること,②被告人と同児童との関係について,被告人が同児童(当時16歳)の通う高等学校の常勤講師であったこと,③被告人の具体的行為として,校内の場所を利用するなどして同児童との性的接触を開始し,ほどなく同児童と共にホテルに入室して性交に及んだことを簡潔に指摘しており,本件においては,強力といえるような助長・促進行為はないものの,高校講師である被告人が被害児童に及ぼした「事実上の影響力」を踏まえれば,本件各性交をした行為が,「児童に淫行をさせる行為」に当たると判断されたものと考えられる。ただし,この判断は,第1審判決が詳細に認定した具体的事実関係が前提とされている点にも留意すべきであろう。
5  本決定は,児童に対する性犯罪を規制する重要な法令の一つである児童福祉法に定められた本罪の構成要件である「淫行」の意義を明らかにするとともに,「させる行為」の判断方法を示した最高裁判例として,実務上重要な意義を有するといえる。なお,本決定は,二者関係型と三者関係型との区別を含む類型別の検討の重要性を否定するものではないし,また,本罪の処罰対象となり得る典型類型をどのようなものとみるべきかや,そのような典型類型以外にどのような類型があり得るのかなどについては,今後の裁判例や議論の積み重ねに委ねられたものといえよう。

同性愛という志向自体が被告人の非難可能性を高めるとは言えず、性的マイノリティであることを刑を重くする事情として取り扱うことは許されない(松江簡裁r05.12.12)

「同性愛」を被告人・被疑者に不利益な事情として挙げることはときどきある。
 例えば、同性の青少年条例の淫行を

「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきでなく、
①青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、
②青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。(最大判S60.10.23)

という判例で検討する場合など、法律婚が認めらていないので、マイナス要素として考慮しているような気がする。こういうのもupdateして書き直してもらわないと。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20231212-OYT1T50295/
判決によると、男は男性の尿の臭いをかぐことで性的欲求を満たしており、9月4日、松江市内のスーパーにある男子トイレで、気に入った顔立ちの見知らぬ男性の尿臭をかぐため、小便器用目皿(時価1000円相当)1個を盗んだ。
 今井裁判官は「計画性のある大胆で手慣れた犯行。常習性も認められる」とし、「性的快楽を得るためという動機には同情の余地が乏しい」と指摘。一方で被害弁償を行っていることなどから執行猶予判決とした。

 また、同性愛を背景にした犯行である点に触れ、「性的マイノリティーであることを、刑を重くする事情として取り扱うことは許されない。ダイバーシティー&インクルージョン(多様性と包摂性)が求められる現代社会においては、なおさらだ」と述べた。

松江簡裁r05.12.12
量刑理由
性的欲求を背景として商店トイレの小便器からその部品を盗んだ窃盗1件の事案である
計画性のある大胆で手慣れた犯行態様で同種行為を繰り返す一環として犯行に及んだ被告人には常習性も認められる。
確かに恋愛感情や性愛についても多用な価値観が受容されるべきで同性愛という志向自体が被告人の非難可能性を高めるとは言えず、性的マイノリティであることを刑を重くする事情として取り扱うことは許されない
ダイバーシティインクルージョン(多様性と包摂性)が求められる現代社会においてはなおさらである
しかしながら~~

児童ポルノ単純所持罪(7条1項)の無罪判決(大阪地裁r06.4.16)

児童ポルノ単純所持罪(7条1項)の無罪判決(大阪地裁r06.4.16)
 東京地裁H28、東京高裁H29の流れです。
 無罪事件で用いられる文献・判例を紹介しておきます

東京地裁のCG事件(東京地裁H28.3.15)
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail3?id=87027
では、34画像中31画像が無罪になっています。

控訴審(東京高裁h29.1.24)で追認

d1law
被告人が、不特定多数の者に提供する目的で、衣服をつけない実在する自動の姿態が撮影された画像データを素材として編集した画像データである児童ポルノを製造し、同一のファイルを訴外会社に送信して記憶・蔵置させるとともに、その販売を同社に委託し、不特定の者に販売することで児童ポルノを提供したという件で起訴された件につき、被告人が控訴した控訴審において、原判決が破棄され、被告人が罰金30万円に処せられた事例。
東京高裁h29.1.24
判    決
 上記の者に対する児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件について,平成28年3月15日東京地方裁判所が言い渡した判決に対し,被告人から控訴の申立てがあったので,当裁判所は,検察官和久本圭介並びに弁護人山口貴士(主任),同壇俊光,同奥村徹,同野田隼人,同北周士,同北村岳士,同歌門彩及び同吉峯耕平(いずれも私選)各出席の上審理し,次のとおり判決する。
主    文
 原判決を破棄する。
 被告人を罰金30万円に処する。
 その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間,被告人を労役場に留置する。
 原審における訴訟費用のうち,2分の1を被告人の負担とする。
 本件公訴事実第2(平成25年9月3日付け訴因変更請求書による訴因変更後のもの)のうち,児童ポルノである画像データを含むコンピュータグラフィックス集「聖少女伝説」を提供したとする点について,被告人は無罪。
イ 児童性の認定について
(ア)所論は,原判決が児童性に関する唯一の証拠としたy医師の鑑定及びその原審証言は,同医師が依拠する理論自体,刑事事件で児童性の認定に利用できるほど理論的,合理的なものとはいえず,タナー法については,提唱者であるタナー氏自身が,同法で年齢を推定することはできないとして,これを年齢の推定に利用することを批判していることなどに照らすと,y医師の原審証言は信用できず,また,判断対象は本件CGの児童ポルノ性であるのに,本件CGを見て判断しておらず,その基となった素材画像の写真のみを見て判断している点でも信用できないと主張する。また,原判決が,タナー法で乳房2度以下であれば18歳であるといえると判断した点についても,18歳以上の女性の中に,実際に乳房についてタナー2度の女性がどの程度存在するかに関するデータはない上,実際,y医師は,原審公判において,明らかに18歳以上であるAV女優の乳房の写真を弁護人から示されて,タナー2度であると誤った証言をしていることなどに照らすと,同医師の証言は信用できない,結局,原判決の判断は,裁判所が写真を見て幼く感じたから18歳未満であるというにすぎず,このような原判決の判断には事実の誤認がある,などと主張する。
(イ)そこで検討すると,胸部及び陰毛のみを判断資料とするタナー法に基づいて年齢を判定することには限界ないし危うさがあること,タナー法に依拠して,本件において素材画像の写真の児童性を判定したy医師の原審証言を全面的に信用して年齢を判断することが相当でないことは,原判決が適切に説示するとおりである。もっとも,原判決が乳房についてタナー法で2度以下と判定された事例について,児童性を認定した点については,確かに,18歳以上の女性の中に乳房がタナー2度以下の者がどの程度の確率で存在するかを実際に調査したデータはないものの,y医師は,原審において,タナー2度以下で18歳以上である可能性として,体質性思春期遅発症による可能性と性腺機能低下症による可能性が考えられるところ,前者については,性発達の年齢の分布が正規分布となることが分かっていることから,乳房についてタナー2度に達する日本人女性の平均年齢と標準偏差を元に計算すると,100万人に3人(1万人に0.03人)未満の確率となり,後者の可能性についても,1万人に1人未満であるから,前者と後者の可能性を併せても,18歳以上の者の中で乳房タナー2度以下が存在する可能性は,理論上,1万人に1人未満という極めて低い確率である,18歳未満か否かの判断については,乳房タナー2度を基準とすればまず間違いがない旨証言している。
 加えて,y医師が引用する田中敏章氏らの研究(y原審証言調書別紙6。当審弁3。)によれば,1983年ないし1986年生まれの日本人女児226人について,乳房タナー度数別の累積頻度を実態調査したところ,12歳になるまでに,全ての者がタナー2度に達し,95%の者がタナー3度に達したことが認められ,更に18歳になるまでにはタナー3度に達する者の割合が高くなることが推認される。
 y医師の上記の原審証言は,小児科学,小児内分泌学等を専門とする同医師の専門的知見に基づき,上記の実態調査等のこれまでの医学的,科学的な研究等の成果に基づくものであって,その内容には合理性があり,十分信用することができるというべきである。そうすると,少なくとも,y医師が述べるように,18歳以上の者の中に乳房についてタナー2度以下の者が存在する可能性が極めて低いことについては,十分科学的な裏付けがあるといえるから,原判決が採ったように,少なくとも,乳房がタナー2度以下と判断された者については,18歳未満であると推認することができ,さらに,顔立ち,乳房や肩幅,腰付近の骨格等の身体全体の発達の程度をも加味して検討すれば,18歳以上の女性で乳房がタナー2度以下と判定される例外的な事例は,排除できるというべきである。したがって,y医師が乳房についてタナー2度と判定した被写体について,上記の諸点も考慮した上,児童性を認めた原判決の判断に,事実の誤認はなく,単に裁判所が写真を見て幼く感じたから児童性を認定したとする所論の論難は当たらない。その他,所論が指摘する点を踏まえても,上記の判断は揺るがない。


タナー法を批判する論文として
 浅田和茂先生古稀祝賀論文集(平成28〔2016〕年10月l日刊)
 児童ポルノ事件における児童性の認定方法に関する考察
 -タナー法を用いた年齢推定法の利用について- 吉井匡
 https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22K01206/

  The difficult issue of age assessment on pedo-pornographic material
  Inaccuracy of age assessment from images of postpubescent
  Misuse of Tanner Puberty Stages to Estimate Chronologic Age

吉井論文を批判してタナー法も絞ればまだ使えるという論稿
 性犯罪捜査全書 理論と実務の詳解
 タナー法による性(犯罪)被害児童の年齢推定
 城祐一郎 元検事

無罪判決
 佐賀地裁r02.2.12 D1-Law.com判例体系
 大阪地裁r06.4.16

朝日新聞デジタル記事
児童ポルノ所持に無罪 大阪地裁「写真では18歳未満か疑い残る」
2024年4月17日 12時27分
 児童の性的動画を持っていたなどとして児童買春・児童ポルノ禁止法違反の罪などに問われた男(53)の判決で、大阪地裁の松本英男裁判官は「被写体が18歳未満か合理的な疑いが残る」として、同罪を無罪とした。動画や画像から「18歳未満」と判断する際に使われる医学的手法の適用時には、「慎重な判断が必要」と述べた。

 判決は16日。6歳の児童の下着を撮った大阪府迷惑防止条例違反の罪は認め、懲役6カ月執行猶予3年(求刑・懲役8カ月)とした。

 男は2022年3月、スマートフォン児童ポルノの動画を保存していたなどとして起訴された。被写体が誰なのかは特定されておらず、「動画に映っている女性が18歳未満か」が争点だった。

 捜査現場では児童ポルノかどうかを判断する場合、体の発育状況などから性的な成熟の度合いを評価する「タナー法」が広く用いられている。

裁判官「タナー法での判定時、慎重な判断必要」
 検察側は、動画の写真資料をタナー法を用いて鑑定した小児科医の意見をもとに、被写体は「小学校高学年から中学生の女児と考えられる」と主張。弁護側は「間違いなく18歳未満とは言えない」と反論した。
 松本裁判官はまず、性的な成熟には個人差があることや判定には主観が入ること、画像の解像度の問題を踏まえて、「タナー法で年齢を判定する際は慎重な判断が必要だ」と述べた。
その上で、今回の写真資料は不鮮明で映った人物の人種や国籍も断定できないことから、「日本人女性の性成熟度の研究をそのまま援用できるのかは疑問がある」と指摘。体つきからの年齢判断に統計学的な合理性があるとしても、「具体的な例外を許さないものとは考えられない」として、「18歳未満」とする検察側の主張には合理的な疑いが残ると結論づけた。
 弁護人の川崎拓也弁護士は「主張が一部認められなかったのは遺憾だが、画像からの年齢の判定には慎重さが必要だという判断は妥当だ。近年は写真の加工も当たり前になっており、捜査にも慎重さが求められる」と話した。(山本逸生)

青少年条例が、法律の範囲を超えて、16歳から17 歳までの者の性的行為の自由及びそれらの者との性的行為の自由を不当に制限するとして規定違憲をいう点は、同条例が、青少年をその健全な成長を阻害する行為から保護し、青少年の健全な育成を図ることを目的とするものであるから、前提を欠く(最決R6.4.8)

青少年条例が、法律の範囲を超えて、16歳から17 歳までの者の性的行為の自由及びそれらの者との性的行為の自由を不当に制限するとして規定違憲をいう点は、同条例が、青少年をその健全な成長を阻害する行為から保護し、青少年の健全な育成を図ることを目的とするものであるから、前提を欠く(最決R6.4.8)

 原判決はR5.12で、確定をR6.4以降に延ばすというミッションは達成。ほとんどは4ヶ月以内に棄却されるし、事実誤認だけだと上告趣意書差出最終日から2週間くらいで棄却されることもある。
 そういうときは、控訴理由の段階で、最高裁の判断がない論点を挙げる。
 よくわからないので、文献を羅列するだけの主張になっている。上告趣意書起案段階で憲法学者のコメントをもらって構成を修正している。
 なお、同じ控訴理由について、別件の東京高裁R6.4.10でさらに詳しい判断が出ている。

上告理由第1 法令違反~17歳との性行為は、国法上許容されるに至っているから、憲法94条違反で無効となり、刑の廃止による免訴(刑訴法337条2号)にすべきであった。 4
1 青少年条例は刑法の性犯罪規定とは補充関係にある 4
2 青少年の性的行為の実情 9
3 最近の未成年者法の動き 11
4 福岡県青少年保護育成条例違反被告事件大法廷判決(最大判S60.10.23)の合憲理由の大半が失われたこと。 13
5 憲法94条違反 17
木村光江「性的自由に対する罪」再考法曹時報第76巻01号p19 17
6 本件被害青少年の成熟度 28
7 刑の廃止 30
8 17歳後半の青少年との性行為を懲役刑を以て規制する青少年条例は「法律の範囲内」(憲法94条)に収まらないから無効である。 33
9 原判決とその問題点 37
上告理由第2 憲法違反~国法上許容されることになった17歳との性行為を条例で懲役刑を以て規制することは、青少年の性的行為の自由+その相手方の性的行為の自由を不当に制限するものあって、条例の当該部分は憲法13条・24条に違反して無効である。 41
1 原判決は根拠規定も合憲性判定基準も示さずに合憲とした 41
憲法と青少年―未成年者の人権をめぐって2021 42
2 青少年側の性的権利について 43
(1)未成年者の人権享有主体性 43
佐藤幸司 日本国憲法論 第2版P155 44
米沢「未成年者の自由」憲法の争点[旧]〔新版〕71頁) 47
(2)青少年側の性的権利について~最高裁の判断はまだ無い 49
憲法と青少年―未成年者の人権をめぐって2021 50
村西良太「刑罰法規の不明確性と広範性―福岡県青少年保護育成条例事件―」『憲法判例百選Ⅱ 第7 版』(別冊Jurist No.246)有斐閣, 2019, pp.240-241 51
(3) 現行刑法は、青少年側の決定権を重視して、13~15歳に対する性的行為を明文で許容したこと(5歳差ルール) 52
【逐条説明】刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案 54
梶検事の説明 55
城祐一郎元検事も「対等性」を理由とする。 56
米沢「未成年者の自由」憲法の争点[旧]〔新版〕71頁) 58
3 根拠規定 60
(1)原判決は根拠規定を示さない。 60
(2) 幸福追求権(13条)侵害 61
①文献 61
ア 最高裁判例解説s60 61
イ 安部哲夫「青少年の性的保護と刑事規制の限界「青少年保護育成条例」を中心に 63
ウ 米沢広一 子ども,親,政府--アメリカの憲法理論を素材として神戸学院法学15巻3号 65
オ 横田耕一:九州大学教授 ジュリスト853号 44頁 1986年2月1日発行 特集・青少年保護育成条例大法廷判決 青少年に対する淫行の条例による規制と憲法 68
カ 福岡 久美子「青少年保護条例による性的自由の制限」 70
キ 羽渕雅裕「親密な人間関係と憲法」 71
ク 竹中勲:京都産業大学教授法学教室176号 49頁 1995年5月1日発行 重点講座【現代人権展望】〔2〕親密な人的結合の自由(Ⅰ 自由と自己決定) 72
②裁判例では青少年側の性的行為の自由への言及はない 74
名古屋高裁s53.10.25*4 74
福岡高裁s55.10.30*5 74
(3) 家族生活における個人の尊厳と両性の平等(24条)侵害 74
松井茂記日本国憲法 第3 版』有斐閣, 2007, pp.549-550 75
(4)青少年のリプロダクティブ・ヘルス / ライツ(子どもの権利条約34条) 77
4 青少年の性的自己決定権の限界・合憲性判定基準 78
辻村みよ子 憲法第7版p107 79
佐藤幸治 人権の観念と主体 79
岩村正彦 岩波講座 現代の法14 自己決定権と法 P165 81
5 青少年の相手方(被告人)の性的権利について~最高裁の判示がないこと 84
(1) 幸福追求権(13条)侵害 84
①文献 84
ア 最高裁判例解説s60 84
②裁判例 86
名古屋高裁s53.10.25*6 86
福岡高裁s55.10.30*7 86
(2)本件について 86
上告理由第3 青少年のリプロダクティブ・ヘルス / ライツ(子どもの権利条約34条)違反 87

最決r6.4.8
主文
本件上告を棄却する。
当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
弁護人○○の上告趣意は、憲法違反、判例違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であり、弁護人奥村徹の上告趣意のうち、青少年条例○条、○条が、法律の範囲を超えて、16歳から17 歳までの者の性的行為の自由及びそれらの者との性的行為の自由を不当に制限するとして規定違憲をいう点は、同条例が、青少年をその健全な成長を阻害する行為から保護し、青少年の健全な育成を図ることを目的とするものであるから、前提を欠き、その余は、憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、量刑不当の主張であって、いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。
よって、同法41 4条、38 6条1項3号、18 1条1項本文により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
令和6年4月8日
最高裁判所第三小法廷

東京高裁令和6年4月10日
上記(2)の主張は、控訴趣意書差出最終日経過後の新たなものであるから、不適法と解されるが、 上記(1)の主張の前提となることにも鑑みて、職権で検討する。
所論は、本件各罰則規定は、いずれも憲法13条が保障する青少年の性的自由を一律かつ広汎に制約し、 しかも青少年の性的行為を相手方の処罰により禁止するものであり、このような強度の規制に正当性はなく、規定自体が憲法13条、 24条に違反し文面上無効である、そうでなくとも、当時○○歳で性的行為に対する十分な判断能力がある被害者に保護の必要はないから、本件各罰則規定を適用して被告人を処罰することは、被害者の性的自由に対する過度の介入であり、憲法13条に違反する、 というのである。
検討するに、両条例における本件各罰則規定は、いずれも、 18歳未満の青少年は、その心身の未成熟などから、 性的行為について有効に自由な意思決定をする前提となる能力が十分に備わっているといえないことなどを踏まえて、青少年の育成を阻害するおそれのある行為を禁止すべく、 「みだらな性行為」(A県条例) ないし 「みだらな性交」 (B県条例)を処罰の対象としたものと解され、結婚その他正当な理由がないのに、単に自己の性的欲望を満たす目的でする性行為ないし性交は、この要件を満たすものである。
所論がいうように、かかる罰則規定の適用により、青少年の性的行動に事実上の制約を及ぼす面があるとしても、本件各罰則規定は、いずれも青少年の育成を阻害するおそれのある行為を禁止する目的に基づきこれを達するに必要な罰則を定めたものといえ憲法13条、24条に違反するものでないことはもとより、本件各行為に適用することが憲法13条に違反するともいえない。
所論は、令和5年改正に係る刑法176条3項、 177条3項においては、行為者と相手方の年齢差が5歳以上でない限り13歳以上16歳未満の者とのわいせつな行為、性交等が許容され、 青少年の性的自由が認められているというが、上記の刑法改正においても16歳未満の者には性的行為について有効に自由な意思決定をする前提となる能力が十分に備わっているといえないことが前提になっているものであり、 上記の刑法改正によっても、本件各罰則規定の文面及び適用に係る憲法適合性の判断が左右されるものではない。
本件の被害者に性的行為に関し十分な判断能力がある旨をいう所論についても、 原審記録を調査しても、本件の被害者が本件各罰則規定における青少年から除外されるべき事情は認められない。