功名が辻第二十一話

NHK大河ドラマ功名が辻」。司馬遼太郎原作。大石静脚本。仲間由紀恵上川隆也主演。第二十一話「開運の馬」。
千代(仲間由紀恵)が山内一豊上川隆也)に嫁ぐとき、養父母の不破市之丞(津川雅彦)&きぬ(多岐川裕美)から婿殿の一大事に使え!と云われて譲り受けていた黄金十両を、「龍の如き名馬」を買い求めてもらうため夫に差し出す話。山内家の千代の賢妻だったことを象徴する美談中の美談。それを描いた今宵の第二十一話では同時に織田信長舘ひろし)の狂気について彼自身の説明があった。それによると、彼は今まで狂うことで前進してきたのである以上、狂うことで神になることにも何ら不都合はないではないか!ということらしい。だが、神仏をも恐れない狂気と自ら神になりたい狂気との間に違いがないと云うのだろうか。信長における合理主義の狂気から非合理主義の狂気への変容の間には、やはり天皇の宗教的・伝統的な権威に対する完全な敗北、劣等感があったに相違ない。でも、このドラマではその辺のドラマが全く描かれてこなかったので誤魔化されてしまっている。

アニメ主題歌大全集における格付

大河ドラマを見たあとNHK衛星第二放送「BS永遠の音楽・アニメ主題歌大全集」を途中から見たのだが、番組の最後を飾った「珠玉の名曲集」に関しては選曲に大の問題があると思われた。なるほど「みゆき」主題歌「想い出がいっぱい」や「タッチ」主題歌、「あしたのジョー」主題歌は確かに名曲群に違いない。しかし「トトロ」や「アンパンマン」の主題歌をそれらと並べるのが果たして妥当だろうか。「宇宙戦艦ヤマト」や映画版「銀河鉄道999」、「ヤッターマン」、「キャシャーン」、「キャンディキャンディ」等の主題歌よりも「珠玉」の作として高く評価され得るとは到底肯定しかねる。鑑定の根拠を知りたい。

仮面ライダーカブト第十八話

テレビ朝日系“スーパーヒーロータイム”ドラマ「仮面ライダーカブト」。水嶋ヒロ佐藤祐基主演。第十八話。
ZECT本部によって幽閉された少女ゴン(神崎愛瑠)との束の間の面会を許された風間大介加藤和樹)。「お前は俺にとって一つの…、一つの…」と何時ものように言葉が出てこなくて迷っていた風間に、ゴンは「相棒?」と応え、風間は「そう、そう!それ、それ!」と喜んだ。馴染みの遣り取り。しかし風間=仮面ライダードレイクの救出によって最後にゴンが記憶を取り戻してジャーナリスト順子(中村綾)の一人娘「百合子」に戻ったとき、同時に風間とともに過ごした日々の記憶を全て失い、後日、街で両名が偶々再会したときには、もはや彼の迷いに百合子が応じることはなかった。「何でもありません。失礼しました」と云って立ち去る彼の姿は寂しげだったが、直後、百合子=ゴンが何かを感じ、微かに思い出そうとしたのか、暫く後ろを振り返り彼の姿を確かめようとしていたのは話をさらに味わい深くした。
幸福な母子の歩き去る姿を見詰め、「さよならだ、ゴン」と呟いて文字通り「風のように」去った風間大介。清々しい英雄だった。
ZECT田所軍団は今回また見所が多彩。部下の岬祐月(永田杏奈)と加賀美新佐藤祐基)に責められて弱り果てた挙句、職責を守りながらもギリギリのところで内面の正義感にも従おうとする偉大な「中間管理職」田所修一(山口祥行)。他方、上司を苛めて重要な情報を得た岬と加賀美の両名は、天道総司水嶋ヒロ)を指揮者に仰ぎ、日下部ひより里中唯)をも加え、もちろん風間大介を伴ってゴン救出に走った。幽閉先の、大海に面した白亜の城塞。そこに彼らは料理人に扮して潜入し、兵士たちに美味な料理を食わせて油断させ、解放に成功した。料理に睡眠薬を混入して眠らせるのではなく、むしろ最高の美食に酔わせたのだ。いかにも仮面ライダーカブトに相応しい堂々の戦い方だった。
それに比して余りに見苦しく惨めでもあった影山瞬内山眞人)。権謀術数のみに生きる野心的な青年エリート武官の堕落と没落。その見苦しさは彼の陰謀で失脚させられた矢車想徳山秀典)の物悲しさを遥かに上回る。