【文徒】2018年(平成30)9月3日(第6巻165号・通巻1339号)

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1)【記事】「はてなダイアリー」が来春でサービス終了
2)【本日の一行情報】

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1)【記事】「はてなダイアリー」が来春でサービス終了(岩本太郎)

ブログサービスの「はてなダイアリー」が2019年春でサービスを終えることになった。運営元「はてな」サービス・システム開発本部長の大西康裕が、8月30日付の自身の日記で現行の「はてなダイアリー」「はてなブログ」という2つのブログサービスを後者に統合することを発表した(今やユーザー数は後者が圧倒的な状況らしい)。
はてなダイアリーは、15年前の2003年1月16日よりベータ版の提供を開始し、同年3月13日に正式版を公開しました。「はてなキーワード」を介して日記と日記が繋がるという新しい体験を提供し、日本のブログサービスの黎明期を牽引してきたと自負しています》
《5年前に「はてなエンジニアブロガー祭り」というイベントに登壇し、「はてなダイアリーはやめません」と発言したこともありました。前言を翻してしまうことになり、申し訳ありません。(略)しかし、はてなダイアリーを支えるシステムがレガシー化し、今後の継続的な運用がより困難になってきているという状況があります。また、2つのブログサービスを継続してメンテナンスするよりも、より新しいはてなブログに開発リソースを集中していく方が、ユーザーの皆さまの期待に沿えるのではないかとも考えました》
http://d.hatena.ne.jp/hatenadiary/20180830/blog_unify
ネット上ではさっそく「え、引っ越さないと!」という声があちこちから上がる一方、「いつかはこの日が来ると思っていた」といった冷めた書き込みも目立っていた。あるTwitterユーザーが自身の投稿履歴からこんなふうに振り返っていた。
はてなダイアリーサービス終了ということで運用してたのを見てたら、2010年7月以前と以降で見事に記事のアップペースが激変(後になってほとんどアップしていない)していて、「あぁこの辺でTwitterを活発にやり始めたのか」というのがわかりやすい》
https://twitter.com/kobako/status/1036068757393702912
楠正憲はブログ「雑種路線でいこう」でも「はてなダイアリー」についてこんなことを書いていた。
《振り返ると、できたばかりの「はてなダイアリー」は濃い場所だった。高木浩光も、東浩紀も、みんな往時は「はてな」で日記を書いていた。中央公論に「情報自由論」が連載されていた頃、それはサイファーパンクな近未来に対するかなり現実的な預言だったし、いま振り返っても、だいぶ当たっていた気がする。それから十数年、世の中はだいぶフラット化しつつあるし、仮想通貨やダークウェブの隆盛にしても、Winnyをネタに騒いでいた時代が牧歌的だったと思えるくらい技術は世の中を現に動かしてしまっている》
《ほどなくしてソーシャルメディアが出てきて、もっと気軽に短文を交換できるようになってからは、パッと考えを共有したい、共感を得たい、「いいね!」されたいという欲求は、ブログよりもTwitterFacebookInstagramなんかに取って代わられた。長文を書くよりも、美味しそうな食べ物を上げた方がいっぱい「いいね!」がつくし、ややこしい問題にも発展しない訳だ》
https://masanork.hateblo.jp/entry/2018/07/15/164300
はてなダイアリー」終了に際しては混乱も予想されるため、大西も上記でユーザーに対して「はてなブログ」や他社ブログへの移行を「エクスポート」の方法についての説明も交えながら呼びかけている。
ただ、やはりアクセスが集中したようで大西も後日「サーバー増強などの改善を進めている」旨を上に追記していた。また、翌日になってTwitterへの連携による投稿機能やツイートまとめ機能を廃止する旨を告知した際には慌てたユーザーもいた模様。
http://d.hatena.ne.jp/hatenadiary/20180831/1535679043
長年の愛用者だったらしい「どききゅあダイアリー」のブログ主もこんなふうに漏らしていた。
《早い!早すぎます!(略)だんだん機能が減っていくということです。
こんな寂しいことがありますか!
店を閉じる前のコンビニみたいになるんですか。
とにかく当面は、様子を見つつ、はてなダイアリーに書き続けるつもりです》
http://d.hatena.ne.jp/kono1/20180902/p1
ブロガー「yomoyomo」もTwitterで《今じゃネットの限界集落ですよ! ……って楠正憲さんまで移転してしもうた》と嘆きつつも《ワタシは運営元から強制移住させられるなり、ダムの底に沈められるまで、はてなダイアリーを使い続ける、と宣言させてもらおう》と宣言。そのうえで《折角なので、これを機会に未だに(はてなブログには移転せず)はてなダイアリーを使い続けている著名なユーザをまとめてみようと思った》ところ、この半年で少なくとも一度は更新がある人物に限っても80名近くに上ったと報告している。大月隆寛荻上チキ、小谷野敦笑福亭鶴光、ちきりん、町山智浩宮台真司といった名前も見られ、yomoyomoも《株式会社はてなには、これだけのユーザベースが残るサービスを軽んじないでいただきたいと切に願う》と結んでいる。
https://twitter.com/yomoyomo/status/1018401554443919361?s=12
http://d.hatena.ne.jp/yomoyomo/20180212/hatenadiarypeople

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎日本独立作家同盟による恒例イベント「NovelJam」は今年も11月に開催の予定。それに先立ち9月20日、プレ企画として「出版変革期の『編集』を考える NovelJamとnoteが示す新しい編集者像」と題したトークイベントが渋谷のグラスシティで行われることになった。「NovelJam」のスポンサーを務めることになったピースオブケイク代表の加藤貞顕、2013年に電子書籍の版元として発足した後に紙の書籍にも進出した出版社「プチ・レトル」の編集者・谷口恵子、日本独立作家同盟理事で「NovelJam」プロデューサーのまつもとあつしが登壇の予定だ。
http://www.noveljam.org/2018/08/4247/

◎「マンガ図書館Z」で絶版漫画無料配信の実証実験を展開中の赤松健産経新聞のインタビューに登場。海賊版サイトをめぐる「20年のイタチごっこに決着をつけたい」との抱負を語りつつ、長期的には「すべての書籍を画像データで収蔵したうえで、作品内のセリフなどを検索できるアーカイブ」を作りたいとの目標を語っていた。
https://www.sankei.com/premium/news/180829/prm1808290005-n1.html
確かに現状ではマンガ作品に関連してウェブ上で情報を検索しても出てくるものの多くは海賊版。言い換えれば漫画アーカイブとしての機能は海賊版が担っていると言っても過言ではない。

日経新聞は9月1日付で「小説『美しい顔』類似論争 『事実と創作』議論欠如 作家のモラルの問題/参照記載ルールなく」「単行本化へ協議『妥協点見えず』」を掲載した。日経によれば「当事者間の協議は継続中だが、研究者からはこの機に文芸に関わるあらゆる人々がジャンルを超えて議論すべきだとの声が上がっている」そうだ。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO34828930R30C18A8BC8000/
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO34828900R30C18A8BC8000/

講談社は「2019年度秋採用」ホームページを8月30日に開設。公式Twitterでも同日に告知した。デジタル系の人材を中心にした採用で、上記ホームページには『現代ビジネス』チームの阪上大葉、『mi-mollet』チームの大森葉子、デジタル第一営業部の山端剛という3人の現役社員にそれぞれ「独占インタビュー」を行っている。
https://kodansha.saiyo.jp/2019/
https://twitter.com/kodansha_saiyou/status/1035098061947658240

築地市場水産業者などが参加するNPO築地魚市場銀鱗会」が水産や市場関連の書籍を所蔵する図書室「銀鱗文庫」の運営資金を募集中。会員数の減少に加え、豊洲市場への移転費など資金面での課題が浮上してきたらしい。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO34702360Y8A820C1L71000/

◎東京・神田神保町の老舗CDレンタル店「ジャニス」が11月限りで閉店することを公式サイトで30日に発表。場所柄メディア関係者も大勢来店していた店らしく、発表以来取材の申し込みが殺到しているらしい。
http://www.janis-cd.com/news/campaign/
https://twitter.com/janis_cd/status/1035364095711535104
https://rocketnews24.com/2018/08/31/1110150/

那覇市の老舗古書店「安里古本センター 国書房」店主の仲本和雄が高齢(75歳)を理由に後継者や古本の買い取り手を探しているそうだ。『古琉球紅型」(1974年)、『沖縄文化の遺宝』(1982年)といった沖縄関連の稀少な本も多数揃えた書店のようだ。
https://kunisyobou.ti-da.net/
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/304579

◎大阪・心斎橋筋の”街の書店”として人気のあった心斎橋アセンスが9月末で閉店。2015年にビルの建て替えに伴い一時閉店となったが、翌2016年10月にリニューアルオープン。しかし僅か2年で心斎橋本店と針中野店の全2店舗どちらも閉店に追い込まれた。
http://www.athens.co.jp/?mode=f4

◎今年4月に福島県南相馬市小高でオープンし、まもなく改装工事のため休業に入る書店「フルハウス」の現状について店主の柳美里がツイート。ここまでイベント開催などで賑わう日もあったものの、さる8月末には《開店から初めて、1冊も本が売れなかった》日があったらしい。
https://twitter.com/yu_miri_0622/status/1035034401531461632

◎天狼院書店店主の三浦崇典は『日経ビジネスONLINE』のインタビューで
「書店は、余裕で生き残れる」。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/082900607/?n_cid=nbpnbo_twbn

日経新聞は30日付で「駅ナカ 雑誌消滅の瀬戸際」。10月に鉄道弘済会キヨスクなどへの雑誌卸売から撤退(トーハンが継承)する一方、日販による東武ブックス買収の件も挙げながら、背景にある雑誌市場の衰退に言及している。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO34758530Z20C18A8TJ3000/

◎大手広告会社を辞めて独立した若手広告マンらによるトークライブ「ヤメコー〜大手広告代理店を辞めた若者たちはどこへ行くのか」が9月26日に講談社で行われる。インターネットメディア『SPORTSBULL』を運営する黒飛功二朗(電通出身)、マーケティングプラットフォームを提供する「シナラシステムズジャパン」の松塚展国(博報堂Google出身)、クリエイティブ・エージェンシー「僕とYOU」の瀧澤慎一(博報堂出身)、「The Breakthrough Company GO」の三浦崇宏(博報堂、TBWA\HAKUHODO出身)の4名が登壇する。
https://peatix.com/event/424541
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57179

◎今年初めに日本支社を開設した米国ユナイテッド エンターテイメント グループ(UEG)のマネージングディレクター・文原徹(博報堂スポーツ事業局などを経てマーケティングコンサルティング会社「エフ」代表)が『campaign』のインタビューに登場。2020年の東京五輪を見据えてUEGが日本に拠点を置いた背景、電通が圧倒的シェアを占める中での事業戦略について語っている。
https://www.campaignjapan.com/article/%e5%a4%a7%e6%89%8b%e4%bb%a3%e7%90%86%e5%ba%97%e3%82%88%e3%82%8a%e3%82%82%e3%82%af%e3%83%bc%e3%83%ab%e3%81%ab-ueg%e3%81%ae%e3%82%a2%e3%83%97%e3%83%ad%e3%83%bc%e3%83%81/446788

◎特集「福岡の正解」を掲載した『BRUTUS』7月15日号はご当地の福岡を中心に大ヒット。同県内の書店では品薄状態が続き、福岡市では再入荷しても即日完売するほどの売れ行きだと、地元の西日本新聞が報じている。
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/446047/

さくらももこ作品も27日に訃報が伝えられるや売り切れ店続出の状況になっているらしい。朝日新聞の報道によれば集英社は『ちびまる子ちゃん』などの漫画単行本を計45万部、『もものかんづめ』『たいのおかしら』などのエッセー本とコミック文庫で計40万部を増刷することを決めたという。
https://www.asahi.com/articles/ASL8Z4RNJL8ZUCVL014.html

KADOKAWAの『ブラタモリ』番組書籍シリーズはは9月から発行の第3期(13〜18巻)で100万部超えを達成するそうだ。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000004847.000007006.html

放送大学は関東地方で行っている地上波テレビとFMラジオ放送を9月30日で終え、BSに完全移行する。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1808/28/news040.html#utm_term=share_pc

◎昨日9月2日は北海タイムスが最終号を発行・休刊してからちょうど20年だった。元同紙記者で、休刊後は北海道新聞を経て朝日新聞に転じ、「プロメテウスの罠」など震災・原発事故報道にも関わった青木美希が最終号1面に掲載された社告のコピーを添えながらつぶやいていた。
《「思いを胸に、ペンを置き、カメラをしまい、そして最後の新聞を印刷し終えた輪転機を止めます」
私が最初に勤めた北海タイムスは基本月給12万8千円。ボーナスは1年間ゼロ、給料が2回止まりました。
最後の紙面が発行されてから、今日で20年。
先輩たちの思いを胸に。
http://moiwa27.web.fc2.com/times.pdf
https://twitter.com/aokiaoki1111/status/1036113238407008256
北海タイムスは経営難がつづき、末期には「京都科学技術学園」を中心とする専門学校グループを全国展開していた山崎種三が社長に就任する。だが山崎の経営方針をめぐって旧経営陣との対立、労使対立も起こるなど状況は泥沼化。最後は山崎が1998年6月に「廃刊」を宣言し、後にオーナーと決別した経営側が刊行続行を表明するも資金繰りに行き詰まり、結局自己破産を申請、社員は全員解雇された。
http://www.kajika.net/okada/980910.htm
休刊当日の模様は《この会社に勤めて、10年でした》という当時の社員によるブログ「倒産日記」に実体験として描かれている。
http://www.pluto.dti.ne.jp/~rika/past/framet.html
「元大手新聞社勤務」の今トオルが自身のブログに書いた連載「北海タイムスの幻影」にも同紙の創刊から休刊へと至る歴史が詳細に書かれている。
http://cba002827.blog.fc2.com/blog-entry-25.html
山崎が率いていた京都科学技術学園は2006年に倒産している。
http://www.tsr-net.co.jp/news/detail/monthly/1200407_1604.html
この90年代あたりから、他にもフクニチ新聞(1992年)、栃木新聞(1994年)、新いばらき(2003年)、鹿児島新報(2004年)、岡山日日新聞(2011年)、常陽新聞(2013年)など、いわゆる「第二県紙」の休刊が各地で続くようになった。常陽新聞は休刊・復刊を繰り返し昨年秋にはNPOによるネット新聞「NEWSつくば」として元役員らが後継媒体を立ち上げたことは昨年10月の『文徒』『メディアクリティーク』でも紹介した。
http://d.hatena.ne.jp/teru0702/20171105/1509863875
北海タイムスについても同社の元役員らが1999年に「札幌タイムス」(当初の紙名は「フロンティアタイムス」を立ち上げたが、こちらは2009年には休刊に追い込まれている。
http://hoppojournal.sapolog.com/e245054.html
http://hokutonomado.com/?p=609
木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」(新潮社)で知られる増田俊也の『北海タイムス物語』(新潮社)は、1989年に入社した北海タイムスがキャリアのスタート地点となった著者による自伝的小説である(後に中日新聞記者に転職)。増田が北海タイムスを離れたのは、休刊に至る混乱が激化する5〜6年前の1992年のことだ。
http://www.shinchosha.co.jp/book/330073/
https://dot.asahi.com/aera/2017061500050.html?page=1
再び青木美希のツイートから。
北海タイムスの専務から電話がありました。「今月、東京に行くから焼き鳥を食べに行こう」(略)私が初めて勤めた新聞社。最後は給料も支払われなくなり携帯代(自腹)が払えずに止められ、辛い思いもしましたが、みんな優しかった。》
https://twitter.com/aokiaoki1111/status/1036217539586449408