日産のPURE DRIVEについて考えてみる(トヨタとホンダもあり)

お久しぶりです。最近暑くてホントに大変です。節電しなきゃいけないのはわかっていますが、扇風機置けないくらいに部屋が散乱していることと、PCの熱が気になってしまうせいでついついエアコンを入れてしまいます。窓開けても風来ないしさ…

 今日は軽く書くつもりで日産の「エンジン進化型エコカー PURE DRIVE」について考えてみます。公式HPはこちらから。

 日産のエコカー戦略は「ZERO EMMISSION」と「PURE DRIVE」の2つのレーベルから成り立っています。
前者は日産がいうところの究極のエコカー、リーフを中心とした電気自動車。後者は「次世代環境技術でクラストップの低燃費を達成した」ガソリンエンジン車が対象です。

 …まあ、名前からして日産らしいというか、世間にはあんまり認知されないような感じがしますよね。ロゴも用意されてるし(ネットで拾ってきた)、今年の年明けはPURE DRIVEでCMしてたし、今も対象車のCMではロゴ出したりして必死に知名度あげようとしてますけど、たぶん無駄な取り組みじゃあないかと。昔の例を持ってきたら、「PLASMAエンジン」とか「NEO Di」とか誰が覚えたんだ、と。「ハイパーCVT」も今じゃ死語か。最近の例だと「SHIFT_」ワードは覚えてもらう気すらなかったとは思うけど、ちゃんと全車種に設定してたのも日産らしいかもしれん。

 で、今回話題にしたいのは後者の「PURE DRIVE」です。ここまでで3回も4回も書いたらさすがに名前を覚えていただけたかな(笑)何が問題かって対象車種が問題。

[PURE DRIVE対象車種]
第1弾 4代目マーチ(アイドリングストップ) 
第2弾 X-TRAIL(クリーンディーゼル)
第3弾 フーガハイブリッド(ハイブリッド)
第4弾 4代目セレナ(アイドリングストップ)
第5弾 モコ(アイドリングストップ)
第6弾 ラフェスタハイウェイスター(アイドリングストップ)

 日産の方針として、アイドリングストップ搭載車は「PURE DRIVE」で売る、というのは間違っちゃいないんですよ。でもさ、OEM受けの車種にまで使うことないじゃん!…と言いたいわけ。
 そりゃあさ、今の日産に「技術の日産」というフレーズはないし、過去の栄光だけで今じゃあちこちでトヨタとホンダに置いてかれてるし(だいぶ挽回したなぁ、とは思うけど)、言うだけ無駄なのは分かってるんだよ。過去との完全決別という前提で今の日産が存在してるわけだしさ。

 でもね、例えば90年代初期の日産が他のメーカーからOEM受けたとしてさ、それを「1/100秒から1/1000秒の技術へ」「あっ、この瞬間が日産車だね。」のシリーズでCM流したか?そもそもその時に他のメーカーからOEM受けるような精神すら存在しなかった、と言われればそれまでだけどさ、絶対にそんなことしなかったと思う。
それを今の日産は平気でやっちゃうから困るんだよな。ラフェスタアイドリングストップなんてマツダの「i-stop」そのものであって日産の技術なんかどこにも入ってないんだよね。その時点ですごく悲しい感じがする俺はもう時代遅れなんだろうけどさ。


 時代遅れという結論がついたので個人的感情で語るのはここまでにしまして、もうちょっと具体的に見ていこうと思います。

 まずアイドリングストップにハイブリッドにクリーンディーゼルといろんな種類があるのが日産の特徴。特にクリーンディーゼル車は日本のメーカーが国内で販売しているのはこれだけじゃなかったか。ハイブリッドに偏り過ぎたトヨタとホンダはディーゼルエンジン開発では1歩も2歩も3歩も遅れている状態なので、ここは評価しても良いポイント。

 ちょっと日産の話から離れてしまいますが、ヨーロッパ、すなわち世界の自動車産業の最先端とも言える地域での現在のトレンドは
・エンジンのダウンサイジング
・クリーンディーゼル
なんです。日本でハイブリッドが好まれるのはトヨタとホンダと電通の広告戦略と政府のわけのわからんエコカー減税制度のおかげだと思ってますが、実際渋滞が頻発してストップ&ゴーの日本ではハイブリッドシステムやアイドリングストップが燃費向上に大きく貢献します。これは間違いない。
 一方、ヨーロッパではそんなに渋滞も起きないし、巡航速度が日本に比べてかなり高い。とすればハイブリッドが威力を発揮する「加速」「減速」がそんなに起こらない。低速〜中速あたりをメインに据えているおかげで、高速域ではハイブリッドシステムがただの重りにしかならないわけ。プリウスなんてのは2.0〜2.5L級のクルマを1.8Lエンジンとモーターで動かしているわけで、モーターがなければ加速がかなり鈍くなる。それに、ヨーロッパでは日本と違ってもともとディーゼルがかなり受け入れられている地域。日本ではトラック&バスから出る黒鉛のイメージ+マスコミの洗脳効果で徹底的に嫌われてますが、ヨーロッパではそんなことはない。低回転域でトルクが出る特性なので静かだし、すごく加速がいいというのがしっかりと評価されてるんですよ。
 
 そのメリット・デメリットを分かっていたから、ヨーロッパのメーカーのほとんどがハイブリッドにはあまり関心を示さなかったんです。その後アメリカでのプリウスブームやら、燃料電池車が予想以上に開発に時間がかかったとか、様々な要因が重なってハイブリッドを慌てて開発してますが、ちゃんと自分達の強みを理解して、ディーゼルエンジンの開発に力を入れてます。結果、今じゃヨーロッパの新車の半数はディーゼルエンジン搭載車。

 にも関わらず、「北米と日本で売れるから」という理由で、トヨタとホンダはハイブリッドに完全に舵を切った。もちろん、自分達の強みはハイブリッドなんだ!とした上で戦略を組むのはいいことなんですよ。ただ、燃料電池車というまだ10年くらいは先の技術を除けば、日本で「エコカー」と呼ばれるクルマに関連する技術で、ホントにハイブリッドしか持っていなかったのが大問題なわけ。
 
 前述のとおり、日本では広告代理店やら政府の援助もあってハイブリッドカーが売れに売れました。エコカー減税需要全盛期は「ハイブリッドだけがエコカーじゃない!」なんてCMで叫ぶしかなかった日産が情けないくらいにハイブリッドが売れた。
 その結果、トヨタでは「マークX・プレミオ・アリオンカローラの敵はプリウス」という状況になってしまった。上級ハイブリッドの「SAI」なんてものを投入したおかげでマークXはより一層喰われてる。今度の「プリウスα」は間違いなくノア・ヴォクシーの客をそれなりに奪うだろうし、「ヴェルファイアアルファードハイブリッド」はエスティマの息の根を止めてくれるはずです。
 もちろん、ヴェルファイアハイブリッドはただでさえ売れてないエルグランドもエスティマと一緒に葬ってくれるでしょうし、プリウスプリウスαトヨタ以外のクルマを多数ぶっ潰していますが、楽をしてても勝手にハイブリッドカーが売れていくおかげで「販売のトヨタ」の若いセールスマンが育っていない、という話をよく聞きます。また、高級車が多く(=利益率も高い)、ちょっと前まではプリウスを独占していたトヨタトヨペット系列は経営的にもダメージを負っていそうです、逆に、今のトヨタの看板車種をほぼすべて抱えることができてしまったネッツ・カローラ系列はすごくウハウハ。「プリウスをよこせ」と言い続けてきた甲斐があった、というところでしょうか。

 もっと酷い状況なのがホンダで、もともとここは1つ人気モデルが出ると他のクルマなんか気にもしないでそればっかり売っちゃう癖がなかなか抜けてくれないところなんですが、案の定「インサイト最大の敵はフィットハイブリッド」になってしまった。本社も販売サイドも何回おんなじミスを繰り返すんでしょうかねぇ。ライフが売れればロゴを放置、CR-Xが売れればHR-Vを放置(しても無問題か)、オデッセイが売れればアコード・トルネオ・インスパイア・シビックフェリオあたりをまとめて放置し、フィットが売れれば「ストップ・ザ・カローラ」しか考えずシビックを潰し、ゼストが出てもライフとフィットに夢中になって、フリードが売れてるのでストリームはテコ入れしなくてもいいやムードが漂い、一応テコ入れしてはみたけどフィットシャトルが出たのでやっぱりいらないです、…だからだめなんだよなぁ、ここの販売は。
 あれだけ大宣伝して一時は月に1万台売ってたインサイトも落ちてくると途端にやる気なくしましたからねぇ…「フィットハイブリッド出るからまあいいや」としか本気で思ってなかったと見えるのが問題。プレミアムインサイトだかインサイトプレミアムみたいなのも投入するらしいんですけど、なんでこう完全にフィットハイブリッドフィットシャトルハイブリッドに喰われてからしか投入できないかなぁ。いつになったらそのへん考えて戦略立てるんだろ。どーせフィットシャトル売れてるからフリードあたりも放置し始めるでしょうし。

 ついでに言えば、ハイブリッドカー(プリウスインサイト)は国内生産してますから、東日本大震災で生産できなかった影響が北米でモロに出ちゃったんですよ。海外生産だったとしても部品足りなくて生産できなかったでしょうが、その間にビッグスリーヒュンダイあたりにゴッソリ持って行かれてしまった。散々文句しか言われてませんけど、マーチをタイで生産していたおかげで日産は立ち直るのがトヨタ・ホンダより早かったんですよね。

 ハイブリッドを持っていなかった日産は一時期だいぶ苦労して「セレナだけ孤軍奮闘」状態だったんですが、ここに来てだいぶ取り戻した感じです。それは前述のとおり「ハイブリッドもガソリンエンジンディーゼルも幅広く、そして最終兵器に電気自動車」という戦略だったからなのは間違いない。ルノー日産としては北米を日産ブランドで抑えないといけない分、目玉不在という印象で苦戦してますが、ヨーロッパではかなり頑張ってます。というかヨーロッパダメだったら未来ないんですけどね。

 こうして幅広く手がけている日産が唯一完全に周回遅れなのがハイブリッドだったのですが、これも昨年のフーガハイブリッドを皮切りに、現在はセレナハイブリッドを開発中と、徐々にこちらもラインナップを拡充していこうとしています。たしかに海外じゃ微妙なハイブリッドですが、国内販売を考えたら最強の技術であることもまた間違いがないわけで、日本専売車であるセレナにはまさに持って来いなわけです。トヨタも「ノア・ヴォクシーハイブリッド」を開発中らしいので、それに対抗するというのもありますが。

 気がつけばここまで国内の話をしてしまって、ヨーロッパの話を忘れていたんですが、今ヨーロッパでは主力級の2.4〜3Lあたりのディーゼルエンジンがないということでかなり苦戦しているのが現状です。トヨタなんてもともと日本や北米での実績と比較したらヨーロッパなんて「その他地域」じゃないか?みたいな感じですが、もっと苦しくなってる。ホンダも基幹車種のアコードが苦しい状況だし。
 
 そして、先ほど挙げたヨーロッパでのトレンドとして、ディーゼルの他に「ダウンサイジングエンジン」を挙げました、。これは簡単な話、エンジンの排気量を下げる代わりにマイルドターボを搭載して、燃費と動力性を両立させようという、ヨーロッパならではの回答なわけです。
 かなりマイルドな特性とはいえターボエンジンですから、スポーツグレードには持ってこい。特にコンパクトカー、Cセグメント以下の分野で盛んに新エンジンが開発されています。

 …これ、間違いなく日本のメーカーでも必要なんですよ。ヴィッツ(欧州ではヤリス)、フィット(ジャズ)、マーチ(マイクラ)は日本とヨーロッパの両地域を主眼に入れて開発されているクルマで、ダウンサイジングエンジンの競争が最も激しいのもここ。VWなどは1.2L+ターボで何歩も先を行っています。
 もちろん、ディーゼルだってあるわけで、例えば98年の日産のアニュアルレポートには「PSAグループからマイクラ用のディーゼルエンジンを調達」なんて書かれてますし、今だってスズキがフィアットの1.6Lディーゼルの供給を受けることが発表されたりなんかしている(今も1.2Lディーゼルライセンス生産してる)わけですが、そこでも遅れてるのにダウンサイジングの流れにも乗らない。ホンダなんかフィットハイブリッド出してる場合じゃないし、トヨタもこのクラスの新型HVなんて開発する前になんとかしろよ、みたいな状況。その前に、ホンダはアイドリングストップ対応のミッション開発しろ、てな状況らしいですが(「ベストカー」に書いてあった)

 その点日産は欧州も見据えてマーチの1.0L(だったかな)スーパーチャージャー搭載車開発してますし(出来ればとっとと市場投入して欲しいんだが)、ジューク&時期ティーダ用に1.6Lターボエンジンも開発してる。まあ、どちらもハイブリッド信仰の日本じゃ売れないんでしょうけど、ヨーロッパも含めて考えるとベストな回答をしてるんじゃないでしょうか。

 …そう考えると「SKYACTIV」でハイブリッドなしに10・15モード燃費30km/Lの大台に乗せてきたマツダなんかはヨーロッパじゃトヨタ・ホンダ以上に評価されてるんじゃないでしょうか。ここも日産と同じくアイドリングストップに力入れてますし。「i-stop」はカタログ数値だけ、なんて話も聞こえてきますけどね…

 
 はい、ここまで完全に他社を叩いて日産を持ち上げてしまったんですが、そんな日産の課題が電気自動車。(触れないって言ったのになぁ…)

 去年リーフを発売したことで、日本以外では日産のイメージが急上昇したんですが(日本はハイブリッド出さないとイメージアップにはならない不思議)、その電気自動車で他メーカーに遅れだしてるのが問題なんですよ。少なくともアイミーブの三菱のほうがよっぽど電気自動車には熱心に見えるくらい。まあ三菱は電気に全てを賭けてるんでそうでもないと逆に終わってるんですが…

 今世界中で、それこそ大手からベンチャーみたいなところまで、様々なところで電気自動車が開発・発表されてるんですが、リーフが航続距離・充電時間で明らかに遅れ始めている。…そりゃあ、量産規模とかを考えればリーフだって頑張ってるんですけど、リーフを超えることが絶対条件っぽくなってきちゃった。今世界で工場建設してリーフ生産していこうとしてるところなんですが、ちょっと不安。ハイブリッドに人員割かれてるのか、進化ペースが遅い気がする。レースカーの開発してみたりもしてるんだけど、レースカーもいいんだけど…という感じかなぁ。インフラ整備とか、やることはもっといっぱいあるのは目に見えてるだろうに。

まあ、他の大手自動車メーカーと比較してみた場合には日産と三菱の電気自動車技術は他より1歩も2歩も進んでるので、油断はできませんが多少は安心できます。逆に電気自動車の技術がほとんどないホンダがヨーロッパじゃ周回遅れ(しかも2周遅れくらい)のイメージみたいですしねぇ。トヨタは慌ててテスラ・モーターズと手を組んで挽回していくみたいで期待。リーフの計画発表で一番焦ったのはトヨタだ、なんて声も聞かれるくらいだし。

…と、結局「PURE DRIVE」の話はどこかへ飛んでいってしまいましたが(ホントに言いたかったことは前半にまとめて言っておいたしまあいいか)、今回はこのへんで。