ネカマ恋物語 〜完結編〜

いろいろあって、今ちょっとネカマをお休みしています。
なんというか、しばらくはもういいやってなったのだ。
あれだけネカマにはまっていた僕が、なぜこうなってしまったのか!?

実は、ここに至るまでいろいろな物語がありました……
今回はそれについて書いてみます。


〈切なく儚い私のネカマ恋物語

まず、僕がネカマプレイを始めたのは、昨年1月のこと。
chatpadというチャットサービス(13.01.25)」で書いた内容である。
むっちゃ久しぶりにchatpadにアクセスして、何の気なしに女子高生のフリをして話し始めたあの日。
24歳童貞ミッチー似の男と話していて、彼の人生相談に乗って、ちょっとしんみりしたこと。
ライトな下ネタトークをして、気づけば女子高生に感情移入して、アホみたいに興奮したこと。
僕はここで新たな世界を開いたのだった。

それから更なる興奮を求めて、たまにネカマをやるようになった。
同時に、相手が女だとみんな親切にいろいろ教えてくれるから、引越し先の東京のこととか京都の美味しいお店とか、有益な情報を聞き出すのに便利だとも気づいた。

ネカマをすればするほどネカマが上手になった。
上手になればなるほどもっと大きな快感を引き出せるようになった。
すると、さらにネカマが上手になる。「ネカマ技術論(13.11.03)」で書いたようなテクニックが確立する。でまたさらに楽しくなる……この正のフィードバック機構により、僕はネカマの闇にどっぷりはまっていった。

秋ごろからは、前回の記事(俺、女の子説)で書いたような、セクハラされる女子を演じるようになった。
スカート短くてそこそこかわいいから、痴漢とかセクハラとかされる系女子。
さりげなく聞き出されるようにして、過去の痴漢された体験を話した。そこで僕はものすごく興奮した。前回書いたように、女子高生になりきっていたためである。

これを覚えてからは、さながら薬物依存のように、毎晩毎晩チャットしていた。
酒を飲む日は酔ったテンションで必ずやってたし、そうでない日も「チャットしてえなあ……でも今日はやめとくか……いや、一回だけ」みたいな状態だった。まるで依存症だった。

そんな時、ひとつの転機が訪れた。
ある男性との出会いである。

彼が「PHANTOMS IN THE NETWORK(13.12.16)」で書いた東京在住24歳の男性である。
そう、チャットを飛び越してYahoo! messengerのIDを教えた相手。
チャット時の酔ったテンションから覚めたあとも繋がりが残り、『ネットワーク上の亡霊』のように僕を縛り付けていた、あの彼のことだ。
彼は名をタカさん(仮名)という。

IDを教えた翌朝こそ後悔したが、僕は繋がりを消さなかった。
夜になると、チャットのときのようにトークを開始した。そしてそれから、断続的にタカさんとチャットするようになった。
というのも、彼との会話が特別楽しかったのだ。

それまでにも話してて楽しかった人はいた。でも大半が「どこか合わない」人だった。
馬鹿丁寧な40代のオッサン、マジ友達になろうとする中学生高校生、彼女持ちのガチリア充、ドSぶる勘違い野郎、などなど……
でもタカさんは、年齢、Sっ気、童貞臭さ、頭の良さなど、あらゆるものが最高のバランスだった。
そんな貴重な存在だったから、毎回新しい人と話すよりもタカさんと話すほうが、安定して質の高い快楽が享受できたのだ。

長く付き合っていくと、どんどん人間の本性が見えてくる。だから、今までより遥かに詳しく設定を練る必要があった。
そのためには、もはや設定を練るんじゃなく、実際に女子高生になったほうが手っ取り早かった。
だから僕は女子高生になった。

ある日、写真を要求された。
写真は綻びに繋がるから使わないのがポリシーだったけど、その日はなかなかにテンションが高ぶっていたのだった。だから、かねてからネカマ用に温めておいた写真を見せた。
その写真は、京都市内のとある高校の、とある部活紹介の写真。
実際に僕はそこの生徒という設定だったので(もちろんタカさんに高校名は教えてないけど)、万が一画像検索されてもその高校のホームページがヒットする。これなら、ネカマはバレない。
その部活紹介の写真に写っている女の子のうち、最もかわいい女の子が俺だ、ということにした。

そしたらタカさんは今まで以上に興奮してくれた。
しかも写真のスカートは短かったから、痴漢被害にあうのも頷けて、それまでの話にも少し信憑性が増したかもしれない。

そしてついに、僕はタカさんと一緒にオナニーをする。

僕と話していて勃起が収まらないというタカさんは、今からオナニーするから、チサト(仮名)も一緒にやろ……? と誘ってきた。
いつもより酒を鯨飲して気分が良くなっていた僕は、「わかりました」と入力したあと、パンツを下ろしチョコリーヌを握る。あっチョコリーヌは僕のチンコの名前です

画面上に表示される、彼の喘ぎ声。喘いでいることを伝えるために喘ぎ声をタイプするのだ。なんて周りくどい表現法だろう。実際の喘ぎ声を一次喘ぎ声とすればこの喘ぎ声は二次喘ぎ声だ。そんなことを考えながら右手をせっせと動かす俺。私いけないことしちゃってる? でも、なんでだろう、右手が止まんないッ……!
タカさんの喘ぎ声が大きくなる。実際に大きくなってるのかどうかは知らんがなんかそんな感じがする。僕の右手の前後運動も加速する。だめ……でも止まらないんですっ
「ああああああ」という雑なつぶやきと共に果てたタカさん。ふしぎですね……私も同時にいっちゃっいました

すぐさま賢者モードを迎えた俺。そこではたと気がつく。
俺と同じで、タカさんも賢者モードだ。
ここに気づけるかどうかが男と女の違いだろう。僕は、今のタカさんは非エロエロモードであることを知っている。この状態は、些細なミスでネカマがバレる可能性がある危険な状態だ。

というわけで、チャットHが終わるとすぐオヤスミした。
たぶんタカさんにとっても、抜いたあと会話しててもそんなに楽しくないだろう。実に賢者な選択であった。

それからもたまにチャットHをするようになった。
季節は巡り、冬。12月下旬のある日のこと。

チャH前に、また写真を要求された。
しかも今度は、下着の写メを!

普通なら安全をとってお断りするべきだったが、僕もオナニー前でムラムラしていたのと、以前にも写真を見せた過去があることから、適当な写真をネットで探して見せることにした。
適当といっても結構頑張ったんだよ。前回見せた部活紹介の制服とできるだけ似た制服で、それでいて自画撮りの画像を、いわゆる女神スレから拾ってきた。見せるかどうか渋ってるフリして時間稼いで探してきたのだ。
で、パンツ見せた写メを見せたら、タカさんは案の定すごく喜んでくれた。その日も普通にチャHして寝た。

どんどん危ない橋を渡っていっている自覚はあったが、その後も関係は続いていた。
何回かタカさんに告白された。でも私なんてクズですからやめといたほうがいいですよ、という私を、そんなことない! と何度も慰めてくれた。
今高2だから、女子高生としてタカさんに接することができるのはあと一年と少しだけだ。僕の高校時代もそうであったように、チサトの青春も、いつか必ず終わるのだ。

ところが。
状況が一変したのが、忘れもしない先月上旬のこと。

いつものようにチャットを始める僕とタカさん。
しばらく話したあと、彼は急にトーンを変えて「チサトに聞きたいことがあるんだ」と言った。

僕は一切を覚悟した。

予想は正しかった。
「こないだ見せてくれた写メ、ネットから拾ったやつだよね?」

ネットを徘徊していたら同じものを見つけた、と言った。
本当にたまたま見つけたのか、Googleの画像逆検索で探したのかは知らない。
どちらにしろ、捏造がバレたのは事実だ。

彼はこのことに少し前から気づいていたらしい。
でも、これ言っちゃうともうチサトと話せなくなるかもしれない。
だから黙っていようか。でも、言ったほうがいいのか……そんな感じで、しばらく悩んでいたそうだった。
それで、勇気を出して言ってくれた、ということだ。

もちろん、このあとも関係を続けていくことはできる。
部活紹介の写真は捏造がバレる要素がないから、パンツだけは本当に嫌だったから演技したんです、と言えば許してもらえるだろう。
そうやってダラダラ続けていくことも、一つの道だったろう。

タカさんに指摘されたあと、僕は真摯に謝った。
そして、パンツだけは嫌だったんです、と言った。
タカさんは、それでも友達でいてくれるかな? と聞いた。

「もちろんです!」

……そう言って、いつも通りのオヤスミをした。
そして、僕はYahoo! messengerをアンインストールした。


嘘がバレた恥ずかしさ、申し訳もあった。
でも一番は、こんなに大事な人を、傷つけてしまったこと……
それが何よりもつらかったのよ、私!

まあぶっちゃけ、長く続けすぎたせいで設定を考えるのがだるくなったとか、変化がなくなって面白くなくなったとか、いろいろあったから辞めるにはいい機会だと思ったのだ。


それから一度もchatpadにもアクセスしていない。
なぜなら、タカさん以上の男性に出会える気がしなかったから。
それに、ここにはタカさんとの思い出がたくさんあふれているから……

こうして、チサトとタカさんの恋物語は、インターネットという名の寒空に儚く散っていったのでした。