見苦しい政治屋連中

 昨年の通常国会郵政民営化法案に反対して自民党を離党することを余儀なくされ、その後2005年9月の総選挙で無所属で当選した議員12人が自民党への復党を願い出、そのうち平沼赳夫氏を除く11人が復党を認められることになったという。実に馬鹿げた騒ぎである。


 この騒ぎについてよくまとめている記事は、東京新聞の次の記事だろう。
<交渉役、信念を守り孤立 復党橋渡し失敗 同志は“土下座”>
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sei/20061128/mng_____sei_____003.shtml
以下、一部を引用すると

 平沼氏が十一人から交渉役に推されたのは、安倍氏自民党総裁選に選出された九月二十日夜の会合だった。安倍新総裁が平沼氏と政治的立場が近く、平沼氏らの復党を望んでいるとみられたからだ。平沼氏が民営化に反対し続けていても造反組には交渉の障害になるとは考えられなかった。
 中川氏が「民営化への賛成」や「反党行為への反省」などの条件を次々と提示する中でも、平沼氏は「首相の考えは、中川氏とは違う」との“確信”を抱き続けていた。
 しかし、今月二十二日に平沼氏と会談した中川氏は、厳しい条件を正式に突き付けて「首相から一任されている」と言い切った。首相との信頼関係で復党への道を切り開けると信じていた平沼氏はこれ以降、交渉役として機能不全に陥る。

この話からはっきりわかることが一つある。既に安倍自民党総裁や中川秀直同党幹事長も言っていることだが、自民党が政策によって党の締め付けを行なうという小泉のやり方は踏襲される、その点での後戻りはもはやない、ということである。その結果、今回復党を認められる情勢にある議員らは「「土下座同然」(造反組の一人)の条件をのまされ」る羽目になったのである。


 そこまでして、くだんの11人はなぜ自民党に戻りたいのだろうか。理由はただ一つ、自民党が政権与党であるということ以外には考えられない。つまり、くだんの11人は、政権与党にすり寄るためには、自分の信念などいくら曲げても構わず、土下座しても構わないというわけである。中には、『自民党は殺された』という本を出版し、今の自民党を批判する人もいる(堀内光雄氏)のにである。こういう政治屋の言うことは、今後信用に値するだろうか。答えはもちろん否。その復党組のうち、さっそく4人が記者会見で弁明を行なっているとのことである。
<復党組4人が会見 「郵政民営化には反対していない」>http://www.asahi.com/politics/update/1128/006.html
もちろん、彼らは醜態を晒してさらにその上塗りをしている、それだけの話である。残りの7人も同じ愚挙を行なうことになるのだろう。


 受け入れる側の自民党は良いと言えようか。無論、そういう話にはならない。上に見たように、政策によって党の締め付けを行なうという小泉のやり方が踏襲され、その場合、自民党が掲げる政策とはアホの安倍の掲げる政策のことになる。その安倍の考えに従って、既に教育基本法改正という愚挙が進みつつある。この後出てくるのは、防衛庁省昇格法案やら共謀罪法案やら、そしてその先には憲法改正が控えているのだろうが、ろくでもないものばかりである。しかも、自分の信念などいくら曲げても構わない連中を受け入れるのは、当然ながら数の力で押し切るためなのだろうから(現に教育基本法の審議でもこの点は実証されている)、多数を頼んだ議会運営が行なわれることが懸念される。


 昨年の選挙の際、自民党は党内民主主義を捨て、民主集中制(言うまでもないだろうが、民主集中制とは、もともと共産主義政党の党運営の原理である)を採用したという論評があったが、それは確かにそのとおりなのであって、そして今回の出来事で、安倍自民党民主集中制の継続を明言したと言ってよい。自民党はもはや昔の自民党ではないのである。このことを、自民党の支持者はよく知らなければならない。


追記(11月30日)
 今回の復党問題について、アホの小泉が復党を容認する発言をしたらしいが、その言い方が振るっているようである。
<小泉前首相、復党容認「白旗上げたのだから認めれば」>http://www.asahi.com/politics/update/1129/011.html
という記事から引用すると、

 小泉前首相は29日夜、郵政民営化をめぐる自民党復党問題について「(復党条件を)のむことは白旗をあげて、土下座して戻ることだ。その場合、認めるべきだ」と述べ、11人の復党を容認する考えを示した。
 党新人衆院議員らで作る「83会」が、東京都内のホテルで開いた会合で語った。安倍首相、中川秀直幹事長、武部勤前幹事長も参加した。
 出席者によると、小泉氏は「歴史の中で離合集散は繰り返されてきた。国民が君たちを使い捨てにするかどうかの勝負だ。復党しようが、自分たちが勝ち抜くことだ」と強調。「支持率が低下するとか、それを踏まえての安倍さんの考え方だから、これは君たちがどうこう言うべきじゃない」と語った。小泉氏は平沼赳夫経産相を念頭に「白旗を揚げていないのに復党願を出すおかしな人もいる」とも述べたという。(以下略)


 堀内光雄にしても野田聖子にしても、皆白旗を揚げて土下座して自民党に戻った−−確かにそのとおりだろう。ただ、そうであっても、小泉からこういうふうに言われると「お前に言われたかねえよ」と思うのが人情ではないだろうか。そもそも彼らを自民党から蹴り出したのは、ほかでもない小泉自身なのだから。小泉というアホはつくづく人間性が壊れていると言える。人でなしである。ああいう輩を5年間も首相の座に据えたことによる人心の荒廃がどれほどのものだったか、日本人(特に自民党を支持してきた人々)はよく反省する必要がある。


追記2(11月30日)
 今回の復党問題について、立花隆氏が次のようなコラムを書いているのを目にした。
平沼赳夫一人を男にした郵政造反議員復党問題http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/061128_fukutou/
 しかし、立花センセには失礼ながら、平沼赳夫が株を上げたなどという甘い評価をしてもらっては困ると言わざるをえない。平沼自身も自民党に戻ろうとしたのである。ただ彼は、上で書いたように、自民党の体質が変化したことに阻まれて復党ができなかった、それだけの話である。今回の件で懲りて、自民党には見切りをつけるが良いと思われるが、しかし平沼はまだ、次の記事からわかるように、自民党に戻ることをあきらめてはいないようである。


<平沼氏「次も無所属で」 次期総選挙に向け表明>http://www.asahi.com/politics/update/1129/012.html

 平沼赳夫経済産業相は29日のテレビ番組で、自民党への復党が認められなかったことに関連し「もう1回、無所属で戦って決着をつけなければいけない。そこまでは腹をくくっている」と述べ、次の総選挙も再び無所属で立候補する意向を示した。

 平沼氏は、将来の復党については「そういう気持ちは持っている」と述べながらも、「いまの自民党は一種の独裁的な政治。直さなくてはいけない」と批判した。(以下略)


 立花氏は誰を評価するべきだったか。むしろ例えば、国民新党亀井静香氏だろう。亀井氏の方が平沼赳夫よりも遥かに理解可能かつ見事な出処進退を行なっている。