康頼の真心が通じたのか、神明のご加護があったのか、 その内の一本が安芸《あき》の厳島《いつくしま》に 流れついたのであった。 康頼の知り合いのある僧が、 便船でもあったら鬼界ヶ島にでも渡り、 康頼の消息を訪ねてみたいと思い立ち、 西国修行に出かけて厳島に参詣した。 厳島大明神は、元々海に縁故のある神で、 娑竭羅《しゃかつら》竜王の第三の姫宮といわれ、 今日まで、いろいろ不思議な霊顕のあったことを聞かされて、 僧は暫く止まって参籠することにした。 厳島大明神は、八つの神殿から成り、海の際に臨んでいた。 夜になると月が昇り、その澄んだ影は、 水にも、砂浜にも、美しい光を投げていた。 満潮になると、…