すべての、白いものたちの

単語を一つ書きとめるたび、不思議に胸がさわいだ。この本を必ず完成させたい。これを書く時間の中で、何かを変えることができそうだと思った。傷口に塗る白い軟膏と、そこにかぶせる白いガーゼのようなものが私には必要だったのだと。（ハン・ガン『すべての、白いものたちの』河出文庫、2023） こんばんは。尹錫悦大統領による突然の戒厳令の宣布に、ハン・ガンさんも驚いたのではないでしょうか。今年、アジア人女性として初めてノーベル文学賞を受賞した、韓国人のハン・ガンさんの地元は「光州事件」で知られる光州です。彼女の代表作である『少年が来る』は、その光州事件を題材としたもの。またあのときのように多くの犠牲者が出るの…

冬になりかけの今、空を見上げて白い息を吐いてみる。来年もきっとこうして、この本を思い出すんだろう。 すべての、白いものたちの (河出文庫) 作者:ハン・ガン 河出書房新社 Amazon 2024年ノーベル文学賞を受賞したハン・ガン（韓江）の「すべての、白いものたちの」を読み終えた。「私」と事実で紡いだ物語には、彼女の外側（環境）と内側、真実と虚構が入り混じる独自の世界があった。 事実というのは残酷な側面があって、どんなに頑張っても変えられないで、ただそこにあるものだ。 見ないふりをしたり、無かったような顔をして生きていても、胸の奥にはひっそりと確かに存在しているものだ。 「すべての、白いものた…

自慢ではないが、私はミーハーな人間である。 この時期にハン・ガンさんの作品を読むというのは、当然ながらノーベル賞受賞の報せがあったからであり、まんまとそれに乗せられたのだ。 正直なところ、私はあまり韓国文学というものに明るくない。というよりも、日本を除いたアジア圏の近代文学というものに疎い。まともに読んだことがあるのは、莫言さんの「赤い高粱」くらいのもので、それもノーベル文学賞の受賞が切っ掛けだった。ミーハーとしての面目躍如というか、俗物であることへの一貫性は、最早誇らしいくらいである。そんな訳で、この「すべての、白いものたちの」は、私にとって初めての韓国文学である。 ちなみにであるが、「すべ…

ノーベル文学賞を受賞されたハン・ガンさんの「すべての、白いものたちの」を読んだ。ひとつひとつが短くて小説というかエッセーのような文章で、すらすら読めるんだけど、読むたびにちょっと立ち止まってしまうような詩的な趣があり、読み通すのに意外と時間がかかった。 かずかずの「白いもの」おくるみうぶぎしおゆきこおり… これらはすべて作者の思い出に関連するもので、とりわけ生後2時間で亡くなった作者のお姉さんについてのものである。 全編を通してとっても美しい詩的な文章で、光景がまざまざと思い浮かぶようであり、そこからイメージされる作者の祈り、のようなものが感じられた。 ただこれ誰の視点？というのが分かりにくい…

さいたま市立北浦和図書館所蔵 www.lib.city.saitama.jp 2024/10/23 大宮図書館より借入2024/11/05 読書開始2024/11/05 読了、大宮図書館へ返却 ノーベル文学賞受賞。あわてて取り寄せた。 白いものについて書こうと決めた。春。そのとき私が最初にやったのは、目録を作ることだった。おくるみうぶぎしおゆきこおりつきこめなみはくもくれんしろいとりしろくわらうはくししろいいぬはくはつ壽衣単語を一つ書きとめるたび、不思議に胸がさわいだ。この本を必ず完成させたい。(P.8-9) 著者の姉、産まれてすぐに亡くなった姉。「彼女」「あなた」と「私」の物語。著者のファミ…

ちょっと前回から間が空いてしまった。実は一回書いたんだけど、なぜか途中で全文が消えてしまい、一気にやる気がなくなりましたとさ💦 その時に書こうと思ったことはもう書く気がしない。不思議なもんだわ。 最近はボーっとしていることが多くてなんだか集中できない。更年期かなぁとか言いつつ、もうその言い訳も何年使っていることやら。 ノーベル文学賞を受賞された韓国人作家ハン・ガンさんの「すべての、白いものたちの」を読み始めた。タイトルがいいよね。「すべての、白いものたち」じゃなくて最後に『の』がついてるところが何ともいいな。まぁ、原題は韓国語なわけだから、どういう感じだったのか分からんけど。 文体がとっても好…

成河くんがブログ更新 『ピローマン』残り５日 更新した web-dorama.jugem.jp の写真。化粧前の鏡にマーシーが！PEANUTSのカレンダーが何かなのかな？ 亀ちゃんのお芝居が観たいです。体調が早く良くなりますように。 ピローマン終わったら読もうと思っていた本📕 📖ノーベル文学賞受賞記念！ web.kawade.co.jp 『すべての、白いものたちの』無料公開｜Web河出 ノーベル文学賞受賞記念！ ハン・ガン『すべての、白いものたちの』無料公開｜Web河出 https://t.co/asyKnomqY4 — 河出書房新社 (@Kawade_shobo) 2024年10月21日

せっかく新調したAmazon kindle Paperwhiteを使う暇がない。それほど忙しいわけではないのだが、本をのんびりと読む時間だけが無いのだった。 それでも午後には時間を作って、外でおやつとコーヒーを楽しんできた。 というわけで今日のおやつはイチゴのタルト。小さくても、とびきりおいしい。イチゴは高いので、自分ではあまり買うことがない。タルトだって値上げはしているのだろうが、満足感を考えると割安な気さえしてくる。 もちろんコーヒーもおいしかった。コーヒーなんて自分でもたくさん淹れて飲んでいるが、やはりお店のものがおいしい。 ぜんぶ本の話【毎日文庫】 作者:池澤 夏樹,池澤 春菜 毎日新…

2024年に読んでよかった本たち 2024年は割と本が読めた気がしています。ざっくり記録を見てみると50冊ぐらいです。 普段は小説、エッセイを中心に購入して読んでいます。 仕事に必要な本であったり、ビジネス書は別カウントしているので除外します。 その中でも特によかった10冊を記録もかねてまとめておきます。 2025年もたくさん面白い本に出会えますように！ 女ふたり、暮らしています。 キム・ハナ/ファン・ソヌ著（清水知佐子訳） 韓国でパートナーでもなく女性2人で暮らすハナさんとソヌさんのエッセイ。 このエッセイに家族以外の共同体のあり方が垣間見えて少し安堵した。女友達同士で同居したい！ってよく思…

あけましておめでとうございます。 ブロガーらしく2024年に買ってよかったモノを紹介します。 ぬい デカいポスター BASE FOOD（ベースフード）の定期購入 掃除機 宝くじ テーブルライト 土鍋にクッキングシート 韓国現代詩選 すべての、白いものたちの 九井諒子ラクガキ本 デイドリーム・アワー ぬい 2024年は僕もぬいぐるみを出迎えた年だった。 そもそもオタクって写真を撮るのは好きでも画角に自分自身は入れたくない生き物じゃないですか。 そこでぬいなんです。 自分自身はいらないけど、撮る写真にある程度の個性は欲しい。その願望をちょうどよく叶えてくれる。そりゃ、ぬい活流行るわって感じ。 めい…

今年読んだ本のリスト。リンクは感想に飛びます。 【洋書（英語）】 『Oryx And Crake』（オリクスとクレイク） 『The Year of the Flood』（洪水の年） 『Maddaddam』（マッドアダム） 『Hateship, Friendship, Courtship, Loveship, Marriage』（イラクサ） 『Nineteen Eighty-Four』（1984） 『White Cat, Black Dog』（白猫、黒犬） 『Middlesex』（ミドルセックス） 『Bewilderment』（惑う星） 『Stone Mattress』（老いぼれを燃やせ） 【洋…

2024年の下半期に読んだ本のなかから、良かったものを10冊選びました。全体の読書傾向としてはノンフィクションが多めになってきていて、来年はさらに偏りそうな気配がします。 ノンフィクション 鈴木忠平『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたか』（文春文庫） 前野ウルド浩太郎『バッタを倒すぜアフリカで』（光文社新書） 横田増生『潜入取材、全手法』（角川新書） ヴィートールド・リブチンスキー『オームステッド セントラルパークをつくった男』（訳・平松宏城、学芸出版社） アン・ウォームズリー『プリズン・ブック・クラブ』（訳・向井和美、紀伊國屋書店） フィクション 宮西建礼『銀河風帆走』（東京創元社） …

12月13日(金)【UNI】5時半頃、自然と目が覚めてごろごろころがった。二度寝するには覚醒しすぎていた。ロビーの朝ごはんでラタトゥユまたはカポナータに見えていたものを食べると、味が無い、冷たいなにかだった。半解凍くらいだったのが腹立たしい。朝から4時まで会議。わたしにはあまり羞恥心が備わっていないので、ちょっと的外れかもしれないということでもがんがん手をあげて喋ってしまう。小学生の頃からそんな感じで、そうやって発言して間違えていたとしても顔が赤くなったりしないし、ああ間違えたなとかどうやら空気を読み違えたらしいとかそこまではわかるんだけど、おそらくここからは一般的には恥ずかしく思うレベルなん…

本日は今年二度目の１３日金曜日となりです。それで大安で、当方は 朝から人間ドックを受けることにです。そろそろ人間ドックという年齢でも ないだろうとは思うのでありますが、幸いにして今のところ健康でありま すので、年に一度は検診で身体の状態を確認することにです。 検診は受付をしてから終わるまでに二時間半くらいかかり、検査の 待ち時間も発生しますので、その時のために読みやすい文庫本を持参 です。今読んでいるのは「戦争と平和」でありますが、これは昭和５０年の 文庫本で、活字は小さく、紙は茶色になっていますので、ちょっと待ち時間 に開くには不適でして、もっと軽いものを選ぶことに。 最近に入手したものから…

12月8日(日)【かとう】ゆっくり起きて、やっと外出予定のない休日。ミーコ先輩は急拵えの段ボールハウスでずっと眠っている。すごく気に入ってくれている。よかった。リネン周りの大洗濯を済ませ、ドラッグストア。キャットフードと切らしていた日用品。家に帰ってるるるるんの発送作業、昼ごはんにサッポロ一番味噌ラーメンを作って、また作業。ところでサッポロ一番の味噌味を初めて食べたけど、味噌感が薄い。軽くバターで炒めたもやしとコーンを載せた。今のところの注文はすべて発送し終わり、次はるるるるんの事務作業。今の時点ではやることがたくさんある。私にできることがとても少ないので、やれることはやらないといけない。夕方…

「別れを告げない」が素晴らしい作品だったので、ハン・ガンの作品を続けて読んでみた。「すべての、白いものたちの」は小説ではなく散文詩と呼ぶべき体裁を取り、白をキーワードとした心象風景の数々を取り上げる。ここでもまた、生と死のあいまいな境界を行き来するような表現にあふれ、時空を忘れて自己と向き合える貴重な時間を作ってもらえたような気がした。 この作品の後に収録されている「作者の言葉」に、次の一文がある。 >> 私の母国語で白い色を表す言葉に、「ハヤン（まっしろな」」と「ヒン（しろい）」がある。綿あめのようにひたすら清潔な白「ハヤン」とは違い、「ヒン」は、生と死の寂しさをこもごもたたえた色である。私…