「道頓堀川」(宮本輝 著)を読みました。 先日読んだ「蛍川・泥の河」に続いて、川三部作の3作目になります。 若いときはこの作品、三部作の中ではあまり好きではありませんでした。頽廃的でぎらぎらしていて、よくわからない世界だと思っていたのです。今回読んで、外国人観光客であふれる今の道頓堀とも、若い頃感じていた派手なネオンに輝く道頓堀とも違う、よどんだ流れの中で必死に生きる泥臭い人間の営みをまるごと呑み込む深い海のような道頓堀を感じました。 作品の舞台は、昭和44年の大阪・道頓堀。 主人公と言える人物は二人。 両親を亡くした大学生の安岡邦彦と、彼のアルバイト先の喫茶店のマスター武内鉄男。この二人の日…