近所の喫茶店が閉店するといい、2階にあるガラクタの中から茶碗と古い文机と手文庫をタダで貰った。その茶碗があまりに高い金額で売れて 良心の呵責に耐えかねてその金額を喫茶店に渡そうかと悩む志乃子。 だまし取ったわけじゃなく、ガラクタなので処分すると言って貰い受けたのだから、責められることではないのに、そこが志乃子の人間性のいいところだ。 そして、手文庫の中には敗戦後に命懸けで38度線を終えて帰国した、ある家族の手記と手縫いのリュックサックが入っていた。下巻ではそれを家族に届けることになるのだが、その手記を残したのは横尾文之助といい、実は横田久治さんという実在した方のお話でした。リュックと手記は引き…