西の対に帰った源氏は すぐにも寝室へはいらずに物思わしいふうで庭をながめながら、 端の座敷にからだを横たえていた。 燈籠《とうろう》を少し遠くへ掛けさせ、 女房たちをそばに置いて話をさせなどしているのであった。 思ってはならぬ人が恋しくなって、 悲しみに胸のふさがるような癖が まだ自分には残っているのでないかと、 源氏は自身のことながらも思われた。 これはまったく似合わしからぬ恋である、 おそろしい罪であることは これ以上であるかもしれぬが若き日の過失は、 思慮の足らないためと神仏もお許しになったのであろう、 今もまたその罪を犯してはならないと、 源氏はみずから思われてきたことによって、 年が…