春の光を浴びながら、阪神電車が静かに走る。湾岸の風を連れて淀川を渡り、武庫川を越えると、車内にアナウンスが響く。 「次は甲子園、甲子園。球場前です。甲子園の次は西宮に停まります」 夢の球場は始発でも終着でもない。通過点。 2024年、甲子園球場は開場100年を迎え、歴史は静かに101年目へと足を踏み出す。新たなページをめくるのは、選抜高校野球。センバツという名の春の風物詩。 時代が変わり、技術が磨かれ、野球も、球場も、進化を続けている。それでも、土と汗と声が交差するあの場所に立つとき、球児たちは今も変わらず、自分のすべてをかけている。 砂を握りしめ、声を張り上げる若者たち。その一球、一打が、次…