ル・クレジオ

ひとつ書き忘れていた。昨夜は寝る前、消灯して古今亭志ん朝の「らくだ」をきいたのだった。前回途中で寝落ちしたやつ。達者だ。江戸弁のリズム。関西弁よりずっとキレがいい。 10時前起床。第五食堂の一階でひさびさに炒面を打包。厨房のおばちゃんからずいぶんひさしぶりだなと声をかけられた。 食後、淘宝で真っ黒なセーターをポチった。日本円で6000円以上するやつ。おなじようなデザインのものが2000円以下でゴロゴロあったが、品質の悪すぎるものを買っても結局銭失いにしかならないことを（冬物の場合は特に！）知っている。のちほどマフラーとネックウォーマーも追加でポチったが、こちらは安物買い。 11時30分から15…

11時起床。三年生のC.Kさんからスピーチのグループチャット経由で動画がとどく。きのう偶然有名なスーパースターに出会ったというメッセージ付き。動画内容は、どこかの店でひとり螺蛳粉を食っている四年生のS.Sくんのところに、たぶん別件で出歩いている最中に偶然彼を見つけたということだと思うのだが、C.Kさんが突撃インタビューをかましにいくようすを映したもの。C.Kさん、ほかのだれよりも頻繁にグループチャットでこちらにコンタクトをとろうとする。スピーチメンバーで過ごした日々は彼女にとって本当にすばらしいものだったのだろう。彼女を（ほぼ独断で）代表に指名してよかったと心底思う。 第五食堂の二階でトマトと…

私が不安を感じるのは、普通の民衆だけでなく、一部のインテリも国家と政府の概念を混同していることである。ある学者の友人が、かつて私にこう語った。「我々は国内で国家を批判してもいいが、国外に出たら擁護しなければならない。家の中では両親とケンカしてもいいが、家を出たら他人が両親を罵倒するのを許さないのと同じだ」 私は言った。「我々が批判しているのは政府で、国家じゃないよ」 私は、ツイッターにメッセージを書いた。「国家と政府の区別がつかない人たちがいるようだ。誰かが政府を批判すると、売国奴と決めつける。譬えて言えば、国家は両親であり、政府は執事である。執事を愛することと両親を愛することは違う。両親は交…

これは今日ではなくすでに昨日のできごとだったと思うが、兵庫県の知事選挙があり、いまどきこんなやつマジでおるんけというレベルのパワハラ騒動で百条委員会からの不信任全会一致を受けて失職するにいたった斎藤元彦が再選を果たしたという情報に触れて、どうなっとんねんと愕然とした。詳細は追っていないが、どうもSNSで真偽不明の情報がある時点から流通しており、それが例によって力をもったかたちらしい。トランプ再選とおなじ構造なのか。しかも年代別にみると、10代や20代の若者のほうが支持者が多いらしく、これは石丸伸二のときとたしかおなじであるように思うのだが、その世代ってテレビや新聞というオールドメディアには一切…

6時15分起床。当然寝不足。熱は37度ちょっとだからたいしたことない。喉はけっこう痛い。コーヒーを飲むべきかどうか迷ったが、この程度の体調不良の場合、コーヒーを飲まないことによってひきおこされるカフェインの離脱症状のほうがまずいという懸念があったので、とりあえず飲んでおくことに。 8時から二年生1班の日語基礎写作（一）。おはようございますのあいさつに続けて、今日授業中に死ぬかもしれませんとかます。クソ大学が！ 垃圾学院が！ と吐き捨てるように続けると、学生らは笑った。授業前半で「（…）」の清書、後半で「（…）」読解。このクラスの女子学生はあんまりアニメに興味のなさそうな子が多いので（逆に男子学…

国家の規定もおかしいが、地方政府の一部の規定はもっとおかしい。二〇〇四年、湖南省は公務員採用時の身体検査の合格基準に、女性は両乳房の均整がとれていることという項目を入れた。同年、ハルビン市公安局の機動隊は、ウエストが八十センチを超えた警官をリストラするという命令を出した。二〇〇六年、浙江省交通局は、男性職員のヒゲを禁止した。二〇〇一年、深圳では模範的な病院の看護師の礼儀として、「歯を八本見せる」職業的笑顔を要求した。二〇〇七年、九年制の義務教育を強化し、中学生の高い退学率を引き下げるため、福建省平和県は中学生の退学を厳しく抑制する通知を公布した。その中には、中学を卒業していない者の結婚を認めな…

こんなエピソードがある。二〇〇七年の秋、中国共産党の第十七回大会の期間中に、ある農民が村長に電話をかけた。自分はいま天津にいて、これからすぐ列車に乗り、北京へ陳情に行くという。村長は肝をつぶした。もし、この農民が陳情者として、党大会開催中の天安門広場に現れたら、村長が職を失うだけでなく、その上の町長と県知事にも累が及ぶだろう。村長は電話口で、北京に行かないでくれと農民に懇願した。農民は北京に行くのをやめてもいいと言ったが、交換条件として、いますぐ彼の妻のもとに二万元を届けるように要求した。村長は電話を切ると、二万元の公金を用意して彼の家に届けた。彼の妻がサインして金を受け取ったあと、その農民は…

時にアマゾンで書籍を買うが、AMAZON／USAからも買う。 以前も「ドイツ語の書籍」がフランス経由で届いた。フランス・パリでドイツ語の詩を発信続けた「パウル・ツエランの評伝」、親交のあったフライブルグ大学の教授が書いたもの。日本の古書店でも同じものが売っていたが、こちらは￥8000以上，フランスから購入したら￥4000弱。ただしドイツ語の辞書は持ってはいるが、ドイツ語の読めない私だから、届いた書籍の余りの小ささに驚いた。辞書で調べると、確かに「新書版」と書いてある。が、貴重な書籍だから、文句は言わない。支払はカード決済で、未だトラブルは無い。 今回は「Chilam Balam de Chum…

8/1 夕方、煙草を吸いに外に出たら、雲が夏の雲だった。 ベルンハルトの自伝をすべて買おうか悩み、結局やめた。庵野秀明評を買った。 8/2 「悲しみはくだらない。無を選ぶね。悲しみなんて妥協案を取るよりマシさ。すべてか無か。どちらかだ。今わかった」 ゴダール『勝手にしやがれ』 俺はそうは思わない。 ただ、すべてが「妥協案」でしかないということは忘れたくないと思う。 8/4 すべて「程度の問題」であり白黒付けられないという気持ちの悪い状態が現実で、それを受け入れたい。多様性は、その気持ちの悪さを気持ちの良いものと錯覚させることではなく、そのまま許容することだ。 8/6 歳をとることも、遡ることも…

つかまえた田島征三 作偕成社2020年7月 初版第1刷 『世界をひらく60冊の絵本』（中川素子、平凡社新書）の 「第七章 命に出会い、命を知る」からの紹介本。図書館で借りて読んでみた。 不思議な、強烈な絵。『世界をひらく60冊の絵本』の説明によると、 ”田島は、この絵本には、 光沢ミラーコート紙を使っているとのことだ。おかげで泥絵の具を使っているにもかかわらず、 絵が 重量感に満たされてしまわず、 美しい青色の水の透明感 や流れを作り出している。 水も大胆に描いているようだが 水の細かな 飛沫など 絵の具に混ぜた溶剤などで繊細な表現も表している。”とのこと。 わりと大型の絵本に、強烈な絵の具な…

A 「時間が、このような思いがけぬ仕方で過ぎて行くことを、アダムはたしかに知っていた。それは、ひとが完全に自分の所有とすることができるような種類の時間、自分のなすべき動作の寸法に合せるだけで安らかに享受できるような、引延ばし可能な時間の一つだった。それゆえ、アダムはごく低音で自分を万物の主と名づけた。彼が相前後して占めた浜の二つの場所の間には、根本的になんの違いもなかった。タオルの上に腰を下ろし、中心点の周囲を回る度盛りに従って、視線を際限なくまわりにさまよわせることもできた。一つの小石、さらにはたくさんの小石は、さらには茨、さらには汚物、さらには塩の痕跡は、不動であるどころか、一個の分泌生活…

エッセー芸術の永劫回帰 「文盲」という言葉がある。差別用語と指摘されることが多く、マスコミでは使われていない。僕もそれに倣って「非識字者」という言葉を使おう。最近ではSNSで、文章の読み書きが苦手な人を「文盲」と揶揄する人がいるらしいが、これも差別だ。文章は本来、意味の伝達手段に過ぎず、伝われば役目を果たす。教養の指標にする必要もなく、「文学」なんかも所詮趣味人の愉楽に過ぎない。音楽や美術と同じに、好きなタイプの愉楽にのめり込めばいい。 ユネスコによれば、世界の識字率は、男が90％、女が83％で、残りは非識字者ということになる。しかし非識字者であっても、目や耳の不自由な人ほどには日常生活に支障…