【ふたたび大伴坂上郎女と大嬢】 「・・・長歌は、注記がなく制作年代が不明なのですが、・・・天平十一(七三九)年の歌と見る人もいます。坂上郎女は、跡見(とみ)の庄から、娘・大嬢にこんな歌を贈りました。 (相聞 巻四の七二三)(同 同七二四)(歌は省略) 「・・・あの世に、私が行ってしまうわけでもないのに、宅の門口でもの悲しそうにしていた、我が娘である刀自(とじ)(大嬢)を……とは、誰あろう庄へ旅立つ郎女を見送る娘の姿なのです。 そして、郎女は次に自身の今を歌います。・・・わが娘である刀自を、夜昼といわず、思い出していると、我が身は痩せてくる、嘆いていると、袖さえも濡れてくる、と郎女は歌います。つ…