「完本福島第一原発メルトダウンまでの五十年」(烏賀陽弘道著、悠人書院)は2つの意味を持つ本でした。一つは事故調査委員会でも注目されていないECCS(非常用炉心歴薬装置)の重要性を指摘している点です。もう一つは、著者の能力と内面に問題がありすぎるため、専門家に見事に論破され、本質を見誤っている点です。 まずは、この本の最高の美点であるECCSは、一号機のIC(非常用復水器)や二、三号機のRCIC(原子炉隔離時冷却系)より遥かに冷却性能が勝ります。たとえば、RCICの注水能力は1秒当たり0.038立法メートルですが、ECCSは0.315と約8倍です。ICに至っては、冷却機能はあるものの、水位を維持…