芥川龍之介は「銀の翼」を登場させた『歯車』と同じ年に書いた『或阿呆の一生』(1927)の最終章51で自分の生涯を「敗北」とみなした。また,共産党の指導者にもなった宮本顕治は芥川の文学を「敗北の文学」とした(石井,2024a)。一方,賢治は「業の花びら」の登場する詩「三一四〔夜の湿気と風がさびしくいりまじり〕」(1924.10.5)の3ヶ月後に恋歌である詩「暁穹への嫉妬」(1925.1.6)を書いているが,これを基にしてのちに文語詩「敗れし少年の歌へる」という題の詩を書いた。賢治は,死の直前に教え子である柳原昌悦へ手紙(1933.9.11)で,「私のかういふ惨めな失敗はたゞもう今日の時代一般の巨…