彼女ならば、と店主の確証は割合でいえば、五割以下だろう。見守る、成長を促す、チャンスを与える、どれも店主の考えには当てはまらない。すべてはお客に還る。それこそが店の存在理由、と店主は考える。彼女たちが僕の仕事の意味を理解し、体現、料理を作り、提供し、お客に与え、お客は次に足を運ぶ流れを生むことが店の理想だ。 小川が店をばたばた出入り、蒸し器に次の一団を送り込むと、出来上がった料理を持って店外に運ぶ。レジは外に作っていた。肌寒さを出来上がりの湯気でお客の待機時間を紛らわす作戦を取ったのだ。到着時刻どおりに姿を見せるバスよりも、次の駅を出た地下鉄のアナウンスの方が苛立ちと焦りを取り去ってくれる。 …